059.溢れすぎた想い~かわりばんこ?~

まえがき


いつもありがとうございます。

えちえち回。閲覧場所にはご注意ください。


――――――――――――――――――――――――――――――――




 ――どうして、こうなったんだっけ……?


「ぁっ……んぅっ……! ユ、ユエさんっ……そこぉっ……ぁっ、ぁあんっ……!」


 ベッドの上。僕の腕の中で、僕の胸に背を預けたアイネさんが乱れている。


「ひゃんっ……はぁ……んっ、くぅっ……ユエさぁん……わたしっ……」


 真っ赤に上気したうなじにキスを振らせながら、左手で大きく柔らかいもののてっぺんにある固くなった部分を転がし、湿り気を感じる右手の指先を動かせば、その度にアイネさんの身体はピクピクと反応し、背筋を上っていく快感に悶えるかのように口からは熱く色っぽい声が上がった。


「ぁっ、ぁんっ……ユエさんっ……んちゅっ、んんっ……ちゅっ……」


 思わずといったように首だけで振り返り僕の頭を抱き寄せたアイネさんは、情熱的に舌を絡ませてきた。


 僕はそんなアイネさんの可愛すぎる反応と、彼女の鼻先にあたって跳ね返ってくる荒くなった自身の吐息を感じながら、愛しさと興奮でボーッとする頭で、つい先程までのことを思い出していた。



*****



 デートから学院へ帰ってきた僕とアイネさんは、王城から帰ってきた日のように名残惜しさを感じていた。


 流石に人目があるので……ということで、腕を組んだ状態から手だけを繋ぐ形に変わり、ゆっくりとした歩みで日が沈みゆく学院の庭園をぬけ、寮に入り、また2階の分かれ道というところで……。


「ルナさん、その……まだ、もう少し一緒にいたいのだけれど……だめ……?」


 そんなことを、頬を染めて上目遣いで言ってきた。

 もちろんそんな可愛いお願いを断る理由もなく、僕が頷くとアイネさんはサッと周囲を見てから僕の手を引いて自室に招き入れた。


「ふふっ、よかった……まだ今日は終わってないんだもの。もう少しこうしていたいわ」


「え、えぇ……」


 部屋に入り扉を閉めると、アイネさんはデート中にそうしていたように僕の腕を抱いてくっついてきた。


 そのこと自体は僕も嬉しいのだけれど、つい先程、帰りがけに『あんな話』をした後だ。

 僕の真剣すぎるお願いは聞いてもらえたと思うけれど、お付き合いの経験がない僕はもしかするとアイネさんが言っていた『キスとかのふれあい』……またはそれ以上のことを求められているのだろうか……と、悶々と悩んでしまう。


 アイネさんが『立ったままでは悪いから』と腕を組んだまま僕を導いてベッドの縁に並んで座ったことで、その悩みはピークに達していた。


 しばらくそうしてくっついていた後、お茶を用意すると言ってアイネさんはベッドを離れた。

 僕はその背後で、ベッドの上からわざわざ座る場所を変えるのは不自然だと、いつもアイネさんが寝ているであろうそこに座り続けている。


 これはもう、そういう合図なのだろうか……?


 いやでも僕は今は女の子の身体だ。

 本当の意味で最後までそういうコトはできないというのはアイネさんもわかっているはず。


 いやいや、でも……と悩みながら、考えれば考えるほど心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。

 落ち着かなくて無意識で背筋が伸びてしまっていた。


「ユエさん? どうしたの?」


「へっ? あ、いえっ……なんでもありません」


 二人分のお茶が入ったカップを手にしながらベッドのほうに戻ってきたアイネさんに声をかけられて、自分のつま先を見ていた僕は思わず挙動不審な声を上げてしまった。


 ……これ、普通は男女逆だよね……。

 いや、いまは2人とも女の子……まてまて、僕の中身は男だからやっぱり逆で合っているんだ。


「そう? 隣、失礼するわね」


 カップを受け取る時にチラッと盗み見たアイネさんは、特に変わった様子がなく楽しそうに微笑んで僕の隣に腰掛けた。


 ベッドの縁が二人分の重みで軽く沈み、隣り合った僕らの肩を触れ合わせた。


「あ、あはは……ここはアイネさんの部屋なのですから、遠慮なんていりませんよ。僕の隣はアイネさんのもので、アイネさんの隣は僕のものなのですから」


「くすっ。なかなか芝居がかった言い回しね。でも、そんな言葉でもユエさんが言ってくれると嬉しいけれど……ふふっ」


 アイネさんはドキドキして変なことを言ってしまった僕に微笑むと、カップをベッドサイドに置いてまた腕に抱きついてきた。


「おっと……」


 お茶を飲んで恥ずかしい気分を誤魔化していた僕は、その軽い衝撃を受け止めるとアイネさんと同じようにカップを置いた。


「ふふっ……こうして気兼ねなく好きな人と一緒にいられるだけで、幸せを感じてしまうものなのね」


「そ、そうですね」


 これは、一緒にいられる『だけで』と言っているけれど、暗に『だけじゃないでしょ?』と言われているのだろうか? それとも……?


 僕はこれでも男だ……正直、立場も何もなく身体の問題がなければ『だけじゃないこと』を、したい。

 今日一日ずっとくっついていて、愛しさは増すばかりだから余計にそう思う。


 でも……僕の腕をギュッと抱いて頬を擦り寄せるアイネさんは……嬉しそうに満面の笑みを浮かべていて、単に今の時間を楽しんでいるだけにも見える。


「ねぇっユエさん、今日買ったカップはいつ届くかしら? あ、そいれと次はいつデートはいつにする? 行くとしたらどこに――」


 そう今日のことや今後のことを楽しそうに話し始めたアイネさんを見て、どうやら僕は気が逸って空回りしていたようだと思った。


 アイネさんは言葉の通り、デートの延長線上で僕と一緒にいられる時間が増えて喜んでくれているだけで、ヘンな意味はなかったんだ。


 アイネさんはどれだけ今日という日が楽しかったのか、新しい発見があったのか、幸せだったのかを語ってくれている。

 僕はそれに表面上は当たり障りなく答えながらも、その笑顔を見ているとより高まってしまう胸の鼓動……愛しさとも欲求ともいえるそれを抑えるのに必死だった。


 でもその鼓動は一向に治まる気配がないどころか、増す一方で……。


「ア、アイネさん」


「――それで……? どうしたの、ユエさん……?」


 これ以上は、まずい。

 そう思った僕はアイネさんの話を遮る形になってしまい、アイネさんは不思議そうな……純粋な瞳で僕を見上げてきた。


 心の中に邪な欲求を感じてしまっている僕は、その瞳を見返すことができずに目をそらしてしまう。


「その……そろそろ、お暇しようかと思いまして……」


「ぇっ……どうして……? まだ夕食まで時間もあるわよ……?」


「そ、それはですね……」


 僕がその理由を言おうか悩んでいると、アイネさんの身体が不安や悲しさを表すかのように小さく震えた。


「どうして、目を合わせてくれないの……? 私、何か変なことを言ってしまった……私だけ一方的に話しすぎてしまったかしら……ユエさんを失望させちゃったの……? 私といても、楽しくなかったのかしら……?」


「ちっ、違いますっ! ……違うんです……」


 アイネさんの今にも泣きそうな声を聞いて、僕は思わずその場で彼女に向き直り、シュンとしてしまっているアイネさんを安心させられるように抱きしめた。


「で、でもっ……ユエさん、さっきから様子がおかしくて……ぐすっ……もしかして、楽しくなかったのかと思ったら、ついお話しすぎてしまって……」


「違います……僕もアイネさんといられて楽しいですし、幸せです。誤解させてしまいごめんなさい……」


「じゃあ……なんで……?」


 腕の中から、涙目になってしまったアイネさんが見上げてくる。


 僕はこれ以上勘違いをさせてしまって悲しませないためにも、正直に胸の内を打ち明けることにした。


「理由は……我慢、できなくなりそうだからです……。アイネさんのことが、好きすぎて愛しすぎて……」


「っ……ぁぅ……」


「さっき、僕の方から待ってくれなんてお願いをしたばかりなのに……それでも、この気持ちが溢れて止まりそうになくて……自分だけ舞い上がってしまって、抑え切れなくなって、その……アイネさんを傷つけてしまう前に、部屋に戻ったほうがいいかと思ったんです……これ以上は、理性が保ちません」


 理性が保たないと、そうハッキリと口にすると、アイネさんは腕の中でピクリと身体を震わせた。

 僕はそれを彼女が身をこわばらせてしまった……やっぱり僕の欲求で怖がらせてしまったんだと思い、そっとアイネさんの肩を押して身体を離した。


 しかし、改めてまっすぐ見たアイネさんの顔には怖がっているとか引かれているという色はなく……頬を染めて口元を手で隠し、恥ずかしそうに視線を逸していた。


「……うれしい……」


「えっ……?」


 僕は予想外のアイネさんの反応に、驚いた声を出してしまった。

 それを聞いたアイネさんは、おずおずと僕と視線を合わせると、ポツポツとその心の中を打ち明けて始めた。


「嬉しいと、言ったのよ……。その、私も同じ……だったから。変なことを言ってしまったとか、そんなのは本当は嘘で……ユエさんはちゃんと真剣に私とのことを考えてお願いまでしてくれたのに、私が我慢できなくてユエさんと……そういうことをしたいって思っているのがバレてしまって、えっちな娘だと思われて、それで失望させてしまったのかと思って……それで……」


 アイネさんの瞳が、潤んでいく。


「でも、それはユエさんも同じ……なのよね? 私、こんなに自分がえっちな考えになってしまうなんてどうしようって必死で……でも、同じことを考えてくれていたのよね……?」


 アイネさんが嫌だったら。怖がらせてしまったら。


 そんな僕をためらわせる言い訳が、交わされる視線に混じる熱で溶かされていく。


「はい……。僕は、アイネさんがどんなにえっちでも、そんなこと関係ないくらい好きで、愛しいと思います……全て受け入れますし、愛せます……」


「ユエさん……い、今ならユエさんも……だから、できちゃう心配はないでしょう……? 私も、どうしようもなくユエさんを好きな気持ちが抑えきれないの……」


 自然とお互い顔を近づけ合い……そして、決定的な一言が放たれる。


「だからユエさん――――私を、愛して……?」


「っ――――アイネさんっ……!」


「んんっ!? んっ、ちゅ、ちゅっ……ちゅるっ、んむぅっ……!」


 想いを爆発させタガが外れた僕たちの距離がゼロになり、そう時間を置かずに水気混じりの音が響いた。


 お互いが夢中で求め合い、荒い息を隠すことなく強く抱きしめ合い、繋がりを深く複雑にしていく。


 熱を差し込まれた頭は『もっともっと』『先へ、次へ』と忙しなく催促してきて、舌を絡ませ合いながら僕らはお互いを隔てる邪魔な服を脱がせ合う。


「ちゅっ……んんっ……? ハァッ……んむぅっっ!? ぷはっ……あっ……ユエさんっ……」


 しかし、今日の僕の服装よりも、アイネさんのワンピースのほうが脱がせやすく、僕はアイネさんが僕を脱がせるよりも先にアイネさんを下着姿にしてしまった。

 そのまま彼女の軽い身体をくるっと反転させると背中から抱きかかえ、前がはだけただけの僕とアイネさんの滑らかな背中が密着する形になり、僕はアイネさんに精一杯気持ちよくなってもらおうとして――――冒頭に戻る。



*****



「んっ……はぁんっ、ぁっ、んんっ……! ちゅくっ、ぁぁんっ……! ユエさんっ、ユエさんっっ……! んんっ……!」


 切なげに悶えるアイネさんが、漏れ出てしまう声を抑えようと自身の細い指を咥えた。


 手を動かすたびに可愛らしくいやらしい反応を返してくれるアイネさんのそんな声をもっと聞きたくて、僕は夢中になりながらも優しさだけは忘れずに手を動かしていく。

 左手で感じるアイネさんの肌は極上の触り心地で、右手で感じるアイネさんの大事なところの湿り気は僕に未知の高まりをもたらしてくれていた。


 アイネさんの白くて可愛いブラは差し込んだ僕の手のせいでとっくにズレていて、ショーツももはやビショビショで張り付いているだけで、どちらも下着としての役割を成していない。

 むしろ、肩越しに覗き込んだ僕の目に入りより煽情的な光景として焼き付いていた。


「アイネさん……とても、可愛いですよ……」


「やぁっ……そんなこと、んんっ……いっちゃ……! あっ、あぁっ……んん、んぅっ……!? ゆっ、ユエさんっ……なにかっ……ダ、ダメっ……私なにかっ……ぁんっ!」


 しばらく僕のなすがままに快感に翻弄されていたアイネさんだったが、とうとうその時を迎えようとしているのか、戸惑いの声を上げながら上り詰めていく。


「……いいですよ。そのまま、身を委ねてください……んっ……」


 僕のその言葉を聞いたアイネさんは、すぐそこに迫ったモノを誤魔化すかのように僕の頭を強く抱くと、再び強く唇を押し付けてきた。

 それでも、僕は彼女がしっかりとその瞬間を迎えられるように……僕の手でその瞬間を迎えてもらえるように、手の動きを早くした。


「んんんぅっ!? んっ、んむっ……ぁっ……んんぅ――――――――ッ!!!!」


 そして、そのままくぐもった長い息を僕の口の中に吐き出しながら、アイネさんは大きく何度も身体を震わせて……くたっと力が入らない様子で僕の胸に全てを預けてきた。


「アイネさん……」


「ハァッ……ハァッ……ぁっ、んっ……はぁ…………」


 僕が好きな女の子をこの手で達せさせることができた、なんとも言えない達成感を味わっていると、荒い息を吐いていたアイネさんが徐々に落ち着いてきたのか、身体を起こした。


「はぁ……なにか、よくわからないけど……すごかったわ……」


「……気持ちよかったですか?」


「ぅぅっ…………………………………………はい……」


 アイネさんが感じた謎を僕が言葉にして尋ねると、アイネさんは顔を真っ赤にしながらポフッと僕の胸に顔を埋め、小さく肯いた。


「あれが……気持ちいいってことなのね……」


 ……自分でしたことがないんですか? とは聞けなかった。


 初めての感覚が僕の腕の中でなら僕としても嬉しいし、すごく興奮したはずなのに不思議と『溜まる』こともなかったので、僕の中では大満足なふれあいだった。


「……なにを、これで終わりみたいな顔してるのかしら……?」


「えっ?」


「え、じゃなくて、その……私はシてもらったけど、ユエさんはまだでしょ……?」


「いやその、僕はアイネさんに気持ちよくなってもらえたらそれでホントに満足で、それにこの身体では――――んっ!?」


「ちゅっ……ふふっ、今度は私が……はぁっ……ユエさんを気持ちよくする番よ……んんっ……」


「ちょ、ちょっと、まっ……んんっ!?」


 僕の反論を唇で塞いだアイネさんは、今度こそちゃんと僕の服を脱がせると、身体を……胸や背中、女の子としては大事なトコロを優しく丁寧に撫で始めた。


 …………。


 ……………………。


 ………………………………数分後。


「ちゅっ……ぷはっ……うぅ……ごめんなさい……。こういうことはよくわからないけれど……私、もしかして下手なのかしら……」


 愛おしそうに僕の全身を手で口で愛撫しまくってくれたアイネさんだったが、僕の反応がイマイチなことに気づき、それでも一生懸命に僕を気持ちよくしようとしてくれた。


 それでも僕が『自分と同じように』ならなかったからか、僕の唇を解放したアイネさんはぺたんとベッドに座り、非常に申し訳無さそうにしていた。


「いえ、アイネさんの愛情はたっぷり伝わってきて、その点は僕も気持ちよかったのですが……この身体だと、その……そういうことをされても性的に感じてしまうということがなくて……アイネさんのせいではありません……ごめんなさい」


 むしろ僕のほうが応えられなくて申し訳なくなり、この身体の秘密の1つを正直に白状した……。


「そ、そうだったのね……。その……謝らないで……? ユエさんの話を聞かなかった私が悪いのよ……でも、私の気持ちが肌からも伝わってくれたなら……良かったのかしら……?」


「えぇ、とっても」


 それはもう、愛おしそうに触れてくるアイネさんを前にして、注がれた愛情が溢れてこちらから触れたくなる気持ちを我慢するのが大変だったほどだ。


「ふふっ、それなら私も満足――――ぁんっ♡ ちょ、ちょっとユエさん……?」


「……僕も、また『お返し』しますね」


 しかし、目の前に愛しい人がいるこの場においては我慢することはない。

 僕が感じている愛しさを、存分に知ってもらおう。


「ちょっ、ぁんっ……んっ……ユエさ――――――んぅーーっ!?」


 僕は生まれたままの姿になっているアイネさんをベッドに押し倒すと、先程のお返しとして何か言いたそうな口を塞ぎ、存分にその肌に愛を刷り込んでいくのだった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

お読みいただき、ありがとうございます。

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次回、「朝日の中で~これがいわゆる朝チュン~」

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