第14話愛努流

「皆さんお待たせしてしまってすみません。

では、精神統一するところからお願いします」


と監督が謝罪してくるので


「気にするな。問題ない。アイリス殿よろしく頼む。」


「はい。よろしくお願いします」


「それでは、みなさん撮影を再開します。

本番まで10秒前・・・・・・・3…2…1」


「それでは、魔王様には初めに私独自の流派である「愛努流(あいどるまたはあいどりゅう)から体験していただきます」 


「あいど?だったか?

その流派はどんなものなのだ?」


「はい。愛努流とは己という自分でも認識しきれない世界をどこまでも深く理解して個性を表現していこうというのがモットーの武術です。自己理解を可能にするのが流派にある瞑想という技術によるものです。愛努流において瞑想は全ての基本になりますので魔王様にも1番初めに体験してもらいます。」


「瞑想とは初めて聞いたな。

早速やってみても良いか?」


「いつでも良いですよ

では、瞑想のやり方について説明していきます。

各々がリラックスできる体勢になります。

例えば床に座ってもいいですし立った状態でも大丈夫です。」


アイリスの説明を受け、わしは最もリラックスしやすい仰向けに床に横になる。


「アイリス殿。わしはこの体制が1番リラックスできるのだがこれでも良いか?」


「はい。ご自身のやりやすい状態で構いません。

次にリラックスしやすい姿勢になったら深呼吸を

三回してから普段の呼吸に戻します

その間に頭の中で何を考えても構いません

お腹空いてきたから何か食べたいな等、自分の思考がその時何を考えているのか感じてください」


アイリスの指示通りにまずは仰向け状態で

ゆっくりと深呼吸を3回繰り返してから

普段の呼吸に戻す

それから少ししてわしが考え始めたのはイザベラのことだ。

イザベラは何故あんなにも毎日わしをドキドキさせるのか?

今朝のいってらっしゃいのキスを思い出し恥ずかしそうにしているわしがおるわ

確かにこれは結構顔に出ておるな

これはいいな

自身の自覚していない面も見つめ直すことができる

横になり瞑想すること20分


「魔王様どうでしょうか?

自身の意外な面に驚いたことでしょう」


「そうだな。自分がどれだけ感情が表に出やすいか、周りから50年くらい言われてきたがようやく自覚することができた」


「素晴らしいですね

一回でそこまで自身のことを理解するのは難しいのですが。

では、次のステップにまいりましょう。

次は立ち上がって体を動かしながら

瞑想をしていきます

体を動かしながらも自身がどう考えて体を動かしているのかを感じてください

イメージとしては動いている自分とは別の視点から見ている

もう1人の自分がいる感じになると思います」


アイリスの説明を聞き、もう少し横にになっていたかったが仕事中だから仕方がない。

わしはよっこらせと重くて重くて仕方がない腰、手、肩、顔、頭、足を上げる。

体を起こしたら、アイリスの説明通りにふかんするようなもう1人の視点をイメージして足を上げたり手で顔を触ってみたりと軽く動かしてみる。

瞑想をしながら体を動かしてわかったことは

最近は鍛錬をする暇もないほどブロードキャストの仕事が忙しくなっていたから体がそれなりになまっていた。

軽く本気で動いてみるか?


「みなの者、少々体が鈍(なま)っているようなので

今から軽く本気で動くから衝撃波に巻き込まれないように

念のため10メートルくらい離れてくれ

一応わしの周りには防御魔法は展開するが念のためにな」


わしの言葉を聞いて周りのスタッフやアイリス、アイリスの関係者は「大袈裟じゃないか?」って疑問符を浮かべているが

わしの実力を把握しているおまるは瞬時にわしから10メートル離れ自分以外の者たちに「魔王様の仰っているように離れられた方が賢明だと思います。そんな必要ないって人はどうぞ命の保証は致しませんので今すぐ遺書を書くことをお勧めします。

命を落とされた際は自己責任でお願いいたします。

こちらとしては忠告は致しましたので責任は一切負いません」


おまるの一言でごくりとなどを鳴らし、わしの周りから離れていく撮影スタッフやアイリスとその関係者たち。


離れたことを確認したわしは、


「うむ。賢明じゃの。

では、少々うるさい音もなるが驚くでないぞ」


その場で深呼吸を一つ。

呼吸と共に体の力を抜く。

イメージとしては自身の体が水に変わっていく様を想像する。

そうすることで普通の力を抜くのとは比べ物にならない程の脱力につながる。

この脱力により普通に立っていることはできず、まっすぐ伸びて立っていた状態から、徐々に膝が曲がって体が崩れていく。

次に膝の曲がりの角度が45度くらいになったら一気に力を込める

原理はわからんがこうすると通常の5倍の速さで動くことができる

打撃も力を抜くことによって通常よりも体の内部にダメージを浸透させることができる。


わしは脱力により膝から崩れ落ちてゆき、程よい膝の曲がり角度のところで体に力を込める。

最初に放つ打撃は右手の正拳突き

次に左の正拳突き、体の連動も意識して右のハイキック

次にそのまま右足を下ろし体を左に回転させ、

左のバックスピンキックからの右ストレートでフィニッシュ。


「ふう。久しぶりに本気で動いて良い汗をかいた。

たまには、本気で動かんとダメだな」


とわしの喋り終わりと共に先程の打撃音が遅れて


ぱぁぁん!……ぱぱぱぱぁん!……どぱぁん!!!


と耳を覆いたくなるほどの音となって聞こえてきた。


「魔王様の打撃は相変わらず人の枠を超えていらっしゃますね。

打撃音が遅れてやってくるなんて芸当(げいとう)ができるなんて魔王様くらいのものでしょう」


「いや、わしなんてまだまだじゃ。

このくらいの芸当は邪竜や勇者だってできるじゃろう」


わしとおまるは普通に話しているがそれ以外の者たちが何が起こったのか分からず固まっている。


「おっと。すまぬな。撮影を止めてしまったか。

アイリス殿、瞑想しながら軽く本気で動いてみたがどうだろうか?

まだ至らぬ点はあったかな?」


魔王に話しかけられ正気に戻るアイリス。

魔王から先程の動きについて聞かれたが、正直言って微かにしか

見えていなかったので正直何をアドバイスしたら良いかなんて

さっぱりわからない。

こんな攻撃なんて反則でしょうと思いながらも

今は仕事中のため営業スマイルと知ったかと勢いで乗り切る

魔族領No. 1アイドルと名高く、何人ものファンたちをライブにて血祭りに上げてきたこの私なら絶対に乗り切れると自信を鼓舞して

キャメラに向かってコメント。


「さすが、魔王様ですね。完璧に使いこなせています。

私が魔王様の域に到達するのに軽く1ヶ月はかかりましたよ

他の者たちなら3年はかかるでしょう。

それをたった数十分でマスターしてしまうなんて

驚きしかありません」


「そんなことはない。

たまたまうまくいっただけだ。

次は何をすれば良い?アイリス殿」


「次は瞑想をしながら組手を行なっていきたいと思います」


「わかった。して、相手は誰がしてくれるのだ?」


「この場にいる中で魔王様とまともに組手をできるのは

私だけだと思います。

ですが、この後にレッスンの総仕上げの戦闘訓練がありますので組手は軽くでお願いします」


「あい。わかった。」


「では、お互いにアリーナの中央へ行き、

お互いに正面を向きます」


アイリスの指示通りにお互いにアリーナの中央へ行き向かい合う


「準備はいいですか?」


「いつでも」


「では、アイドル組手を始めます!

先手は私から行きます!」


アイリスは開始と同時に残像を残しながらわしに迫ってくる

接近と同時に喉元(のどもと)を抜き手にて狙ってくる。

わしはのどもとあへの攻撃をかわし、アイリスの抜き手を手に取り

突っ込んできた勢いを利用して壁めがけて投げ飛ばす。


壁めがけて吹き飛んでいくアイリスは

壁にぶつかる瞬間に体制を整えて、壁に着地する。


「お見事です。参りました。」


「アイリス殿の攻撃もわしを必ず仕留めるという気概(きがい)が

伝わってくる良い抜き手であった」


アイリスと魔王の組手は他の者達には捉えることが出来ず

2人の間でどんなやりとりがあったのか理解できなかったが

2人の会話から組手が終わったことだけは理解する一同


「何があったかはわかりませんでしたが組手が終わったということでいいでしょうか?」


とプロデューサーが確認してくる


「うむ。アイリス殿の抜き手が素晴らしかった」


「魔王様の身のこなしも素晴らしく

格の違いを見せつけられました」


「わかりました。撮影を止めてしまってすみません。

キリが良いのでここで一旦休憩にしましょう」


プロデューサーの一言で現場は30分の休憩に入る。


休憩中はまたしてもおまるからの襲撃を受ける

そして、襲撃後はおまると改善点を話し合い時間を過ごす

2人で改善点を話し合っていると時間はあっという間に過ぎ

次の撮影が始まる。


つづく

to be next episode

see you again

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