第13話魔王様〇〇体験してみた

 それから、ジャージに着替えてアリーナと呼ばれる建物の広い空間に皆で集まり、撮影開始。


「さて、皆のもの待たせな。今回わしに挑戦するものは・・・ではなかったな。今回わしが血祭りにあげるのは・・・これも違ったな。ええ、おほん。今回わしが体験する職業はこれだ! 」


 わしの合図と共にアイリスがフリフリのゴスロリ衣装で登場してくる。


「皆さんこんにちは。

魔族領でNo. 1のアイドルと噂のアイリスです。

今回は私が魔王様にアイドルについて教える先生です。」


「うむ。アイドルとはどういうものかはよくわからんが

よろしく頼む。」


「はい。今日体験して頂くのはアイドルのレッスンです。

流石にライブにアイドル衣装で参加して頂くわけにも

いきませんのでまた後日ライブの密着で皆さんにアイドルについてお届けすることになりました。そちらの方もよろしくお願いします。」


はい。カット。ありがとうございます。

次のシーンに行く前に5分の休憩をお願いします。

すみません。船内で魔王様のオフショットを撮っていたままなのでキャメラのテープがもう終わりそうなので休憩をお願いします。


「うむ。了解した。」


「わかりました。」


ありがとうございます。少々お待ちください。

キャメラの調子どうだ?


とスタッフたちは作業に入ってゆく。


わしとアイリスはその場で椅子を用意され座って待つ。


おまるが2人分の飲み物を持ってきてくれる。


「魔王様、紅茶をお持ちしました。

アイリス様は甘いものがお好きとのことで

ミルクティーをお持ちしました。

お好みでお砂糖もおいれください」


「すまんな。ありがとう。」


「わざわざすみません。ありがとうございます」


とお礼を言いながらわしはお茶をいただく。


わしが視線を外し少し気を緩ませた瞬間を狙って

おまるとアイリスが同時に魔王に襲いかかる。


実力はアイリスの方が格上のようでおまるよりも全然早い。

アイリスの攻撃は瞬時に発動できる中では最高の攻撃力を誇る

得意な「ウォータースピア」を至近距離から魔王目がけ放つ。


魔王になってからというもの狙われ続ける毎日を30年も送っていると自然と脊髄反射で体が防御を行なってしまう。


魔王は周りに被害が出ないように一瞬にして火で水を蒸発させる。

アイリスはその光景を見て驚愕に顔を染める。


アイリスが驚愕に顔を染めるなか、今度はおまるが動く。

おまるは風魔法により毒塗りの極小針を放つ。

これまでにない工夫として貫通力をあげるために

乱回転を加えていた。


成長したな、おまる。日々忙しい中でもわしを殺すために

見えないところで鍛錬している証拠だな。

兄として感動する。それでもまだ死ぬわけにはいかんので当然攻撃は防がせてもらう。

毒塗りの針はわしが編み出した転移魔法にて

新しく幹部になったと聞くマモンにでも飛ばしておくか?

常日頃から気を抜くなとは言っておるし

この程度の攻撃は防げなくては幹部を名乗るのは難しい。

ということでわしはマモンのところへ毒塗りの針を

プレゼントすることにした。

幹部が気を抜いておらんかわしはわしの気分次第で

襲撃者の攻撃を幹部どもに転移することにしている。


両者の攻撃は失敗に終わりそれを確認し固まるアイリス。


おまるの場合は攻撃が失敗しても動じることはない。

幼い頃より続いている修行みたいなものだから。

アイリスの場合は自分の最速の攻撃が失敗したのが信じれないのか未だに顔を驚愕に染めている。


「どうされた?アイリス殿」


と声をかけるとアイリスは


「な、なんで死なないの?ライブの時にファンは私の方が魔王よりも強いって30年くらい前に言っていたのに!」


と小声でそんなことを言うアイリス。

すぐに我にかえったようで

「はっ!すみません。少々疲れが溜まっていたようで

気が動転してしまいました。」


と言い、謝罪するアイリス。


お互いに事情はわかっているが撮影が滞らないように

知らないふりをする2人。

おまるに至っては平然と脇に立って「紅茶の方はどうですか?」


と何事も無かったかのように普通に会話してきおる。

間違いなく1番成長したのはメンタルじゃな。

幼い時はわしへの不意打ちが失敗するたびに泣きながら


「お兄様。本当に一回でいいから僕に殺されて下さい」


ってお願いされたな。あの頃は可愛かったな。


おまるの幼い頃を思い出していると脇に立つおまるから殺気を感じる。おまるを見ると冷たい笑顔で

「魔王様。

何やら人の恥ずかしい過去を思い出しているのではないですか?

魔王様は顔に出るのですぐにわかりますよ。

そんな魔王様にはこちらのスペシャルプレンドティー

「死への導き」をお勧めいたします。

私の気分が爽やかになること間違いないです♪」


といつもの紅茶とは別にドロドロとしたお茶が死神に変化して不気味な笑いを浮かべ、手を差し伸べてくる。

そして一定の時間が経つと見た目が普通のお茶に変化する。


「さすがに最初のドロドロとした状態を見てしまうと飲む気が失せるのだが?」


「いえいえ。名前も見た目も確かに抵抗があると思いますが、

騙されたと思って飲んでみて下さい。

魔王様クラスでもどうなるかわからないお茶に仕上がっていると思いますので」


「会話が成り立っていないように思うのだが、

お前がそこまで言うのなら味に問題はないのだろう?

一口味見してみるとするか」


とおまるが差し出した「死への導き」を一口飲んでみる。


「ほう。わし好みの味だ。今度からこれを出すようにしてくれ。」


「わかりました。後に参考までにお聞きしたいのですが、

それには毒が入っています。ドラゴンも怖気付いて逃げ出すほどのものが入っておりますが体調に変化はないのですか?」


「何ともないな。だが、方向性は悪くないな。

これならば、わしに効く毒が作れるようになるかもしれん」


「そうですか。次こそは魔王様の命を死へ導く毒を

作って見せます。」


「うむ。期待して待っておるぞ」


わしとおまるは普段通りの会話を続ける。


それをみたアイリスは小声で「この2人頭は大丈夫ですかね?」

と先程とは違った表情で固まっている。

わし達は魔族の中でもかなり特殊な関係なのは言うまでもない。


そんなこんなで5分の休憩が終わり撮影が再開される。

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