第17話あーちゃん初めてのショッピング1

「それでは、何かあればご連絡下さい」


「ああ、よろしく頼むよ。拓海」


「はい」


「あの、拓海さん、い、行ってきます。」


「はい。行ってらっしゃいませ綾さん」ニコッ


「あー拓海今あーちゃんに色目使ったでしょ~」


「使っていませんよ。」


「ふふふっみんな楽しそうねー」


「そうだね。さぁ、そろそろ行こうか」


「ええ、そうね、それじゃあ拓海後はよろしくね」


「かしこまりました。」ペコッ


「さあ、まずは綾ちゃんのお洋服を見に行きましょう!」


「あ、えっと、その、僕、お金持っていませんから買っていただかなくて、大丈夫です…」


「そんなこと気にしなくていいのよ!」


「て、ても…」


「そうだよあーちゃん!僕たちがあーちゃんに来て欲しい服を買うだけだからね!」


「それよりあーちゃんは今日はお人形さんにされるから頑張ってね!」


「お、お人形?」


「そうだよ、あれはね、幾つになっても地獄だよ」


「あぁ、そうだな。私もだよ。」


宗介さんまで…一体なんのことを言っているんだろう?


もしかして、お人形ってサンドバックのことだったりして…。


「い、痛いのは嫌だな…」


「大丈夫だよ…全く痛く無いし、ただ立っていればいいからね」


「立っているだけでいいの?」


「うん、だから安心してね」


「う、うん」


あきが大丈夫って言うなら大丈夫だよね。


……しかし、この後僕は思い知った…花さんの恐ろしさを…



「まあ、これもとっても似合っているわ!!綾ちゃん次はこれを着て見てもらえる?!」


僕は今、着せ替え人形と化している。


「あーちゃん次はこれね!!」


「は、はい。」


服屋に入った瞬間花さんが物凄い勢いで僕に似合いそうな服を集めてきて僕はずっと試着室で着せ替えをされていた…。

ちなみにこれで5件目である。


「母さん、あーちゃん初めてのこっちの方が似合うよ!」


「えーそんなことないわよ!」


ギャーギャーギャー


何故かあきも花さんと一緒になって僕に服を着せて来ている。


ちなみに宗介さんは試着室の前に置いてある椅子に座って魂が抜けた様な顔をしている。


一体僕に何着のお洋服を買うつもりなのだろうか?


……


「それじゃあ、私はお会計してくるから少し待っててねー!」


「「お、終わった…」」


…見事に言葉がシンクロした綾と宗介なのであった。


「うん、あーちゃんのお洋服が選べるからボケも張り切っちゃった!」


あきはとても楽しそうに花さんと一緒に僕に試着させたい服を持ってきていて何故か、今はホクホク顔をしていてとっても満足そうだ。

…でも、僕はとっても疲れた…。


「綾くん、お疲れ様だね。」


「あ、はい宗介さんもお疲れ様です。」


宗介さんは1、2店舗の時に花さんが宗介さんの服を嬉しそうに選んでいたんだけどそれもまた凄くて、宗介さんは疲れ果ててしまった。


でも、宗介さんは花さんの服を嬉しそうに選んでいたからとっても仲がいいんだと思う。


僕も花さんとあきのお洋服を一緒に選んだのはとっても楽しかった。


それに、今日は平日だからお客さんも凄く少ないから花さんや宗介さんはわざと週末じゃなくて平日に僕をお買い物に誘ってくれたのかもしれない。


あきの家族はとっても優しい家族だと思う。


さっきもあきの家族はとっても良い家族だねってあきに言ったらあきは僕も家族だよって言ってくれた。


血がつながっているはずの人たちに家族として認めてもらえなかった僕が、血が繋がっていない赤の他人である僕の事を家族だと言ってもらえたことがとっても嬉しかった。


また僕があの家で一人ぼっちだった頃の生活に戻ったとしてもこの思い出があればきっと僕は大丈夫だと思った。



「それじゃあ、ちょうど良い時間だしお昼ご飯を食べに行きましょうか?」


「そうだね、秋人と綾くんは何か食べたいものはある?」


「ぼ、僕は何でも大丈夫です。」


「うーん、そうだな、あーちゃんはまだ重いのは食べられないから和食なんかどう?」


「良いわね!そうしましょう!」


「それで良いかい綾くん?」


「は、はい!大丈夫です」


「それじゃああのお店がいいわね!行きましょう宗介さん!」


「そうだね」


宗介さんと花さんは一緒に歩くときは、花さんは宗介さんの腕に腕を絡ませて歩いている。とっても仲が良さそうだ。


「じゃあ、あーちゃん、はい。」


「う、うん」


僕は、あきが僕が迷子になったら大変だからって一緒に手を繋いでくれている。


誰かと手を繋いだことは僕が記憶にある限り一度も無いからこうやって秋と手を握って一緒に歩けるのはとっても嬉しいな。



……………



「「「「ご馳走様でした。」」」」


「綾ちゃんどうだったかしら?」


「はい、とっても美味しかったです。ごめんねあき、残り食べてもらって。」


「気にしないであーちゃん。僕にとったらご褒美だから。」   


「ご、ご褒美?」


「ふふっ気にしないでね。」


「?う、うん。」



「さあご飯も食べたことだし、午後も張り切って行くわよ!」


「ははは…」


午後もあの勢いでお買い物をするの?


…花さん怖い…。





つづく























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る