第28話 それからどうした?

 それからどうしたかって言うと…長くなるから詳しくは割愛するが、とりあえず吸血鬼の指示どおり、俺は『坂本城』を築いた。

 その時、ついでに作ったのがあの花町に『アヤカシ館』だ。

 『アヤカシ館』は俺がこっそり羽を伸ばす為の館だ。

 何かの『仕事』で人間界に来ていた連中を集めて『ホストクラブ』を作ったのは、これもたまたま通りかかった『大江山』で『桃太』が行き倒れてた(と、言うか封印されてて動けなかった)のを拾ったからだ。

 『桃太』は人間に正体がバレて動けなくなったらしいが、この人間界で正体バレずに仕事するのもなかなか大変なのは知ってたから人(?)助けのつもりだった。

 『お菊』もたまたま仕事でこっちに来ていて、そこを身請けして『店番』してもらう事にした。

 このお菊の人間界での仕事が、何だか俺もにも良く分からん仕事で、『皿を数える』のが仕事だったらしく、「お皿数えるのも飽きた頃だったから喜んで!」と言ってくれた。

 俺は坂本の町から魔王を監視するのが主な仕事だったが、時は戦国。

 人間どもの『黒歴史』とも言えるほど戦ばかりの時代だ。

 『明智光秀』として『戦に参戦』も大事な仕事だ。

 まぁ、魔王が「越前遠いからお前行ってきて!」とか「長篠行くんだけど、一人じゃつまんないからお前も一緒に行こうぜ!」とか、割と軽いノリであちこち駆り出されたんだけどな。

 ちなみに、坂本にいる時は『蝶の式神』たちを魔王のそばに配置して監視していた。

 俺の『蝶の式神』たちの『目』は『俺の目』だ。

 蝶たちが見たものは俺にも見えるんだ。

 だから、魔王がデスクワークサボってるのを見たら、速攻吸血鬼にチクってやった。


 魔王はホントにデスクワークは全くやる気にならないらしく、魔界の仕事も人間界の仕事も貯めに貯める始末。

 そして、蝶をとっ捕まえては「ヴィリー、手伝ってー!」としょっちゅう呼び出された。

 蝶たちは通信機じゃねぇんだが、俺は吸血鬼にどやされるよりはマシと思い、仕方なく手伝ってやった。

 そして、そんな時は決まって、鏡に向かって「早く魔界に帰りたい」とボヤいていたが、多分相手は魔王の嫁だろう。

 『鏡は魔界と繋がってる』から。


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 そんな魔王だったが、流石は『魔界の支配者』だ。

 信長の故郷、尾張国のインフラの整備や税制の改善をして民からの支持を集めた。

 民の支持は「税収」にもつながり、ついに念願の『安土城』の築城を始めた。

 そして、安土城が完成する頃には、今度はその城のある安土山周辺の町に『掟書』を発布。

 その掟はもちろん『町を繁栄させる為の掟』で、そこでも更に民の支持を集めた。


 しかし、戦の時はうって変わって残酷だった。

 魔王は先陣を切り、まぁ、魔王が魔王たる所以ではあるが、『力』は使わずに剣技だけで戦い、ひと振りで数人の敵を倒すチートぶりだった。

 正に『敵に容赦なし』。

 『パワー イズ ジャスティス』が主流だった頃の『魔界』で、沢山の魔族をねじ伏せただけの事はある。

 人間相手なら正に赤子の手、だ。

 だから敵対していた武将には『魔王』とも呼ばれていた。

 しかし、さすがの『魔界の王』でも『無敵』ではなかった。

 人間界の戦の勝手が分からなかったから、と言うのもあるが、初戦は散々だった。

 それは『甲斐の虎 武田信玄』ってヤツから書状が届いた事から始まった。

 内容は

 「延暦寺を焼くとか、お前ばっかじゃねぇの?バチあたっても知らねぇからな!お前の事はこれから『第六天魔王』って呼ぶわ!」

 的な事が書いてあったらしい。

 武田信玄的には間違いなく『皮肉』や『嫌味』の類いだったんだろうけど、まぁ、『本物の魔王』だから魔王自身はなんとも思ってなかった以前に、『魔族』にとって『魔王』は褒め言葉以外の何者でもない。

 「甲斐の虎、気に入った!」と、めでたく(?)『魔王のお気に入りリスト入り』を果たしたのだが、フツーの人間の光秀はぷんスカしていた。

 「打倒、武田信玄!」を掲げて『徳川家康』とのタッグマッチだったが惨敗。

 その時、負けたのが相当悔しかったらしく、『竹中半兵衛』の『戦の勝ち方講座』を受けていたのには笑った。


 そして、人間界代表の光秀君。

 彼は『延暦寺焼き討ち』に関しては色々負い目があったらしく、俺に「焼き討ちした寺や近くの村の立て直し」を頼んできた。

 俺があの時、『幸』の故郷の村に行ったのも、その一端ってわけだ。


 吸血鬼のヤツはちょいちょい人間界に来ては魔王に仕事を置いていった。

 その度に『羽柴秀吉』に『憑依』してたもんだから、秀吉はしょっちゅう記憶を失くし、「儂は脳の病気かも…?」と、自信を失っていたが、記憶のないうちに『功績』を積み重ねていった。

 吸血鬼にとっては憑依させてもらってる『お礼』のつもりらしい。

 そんな吸血鬼も、最初のうちは『魔界あっち』と『人間界こっち』の仕事でてんてこ舞いだった様で、だんだん頬がコケて見るからに吸血鬼(て言うかゾンビ?)みたいになっていった。

 「全然仕事したくないなぁ…サボっちゃおっかなぁ…。」

 と、仕事が計画通り進むのが大好きな吸血鬼が、こんなボヤきを言っていた程だからよっぼどだ。


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 それを見た魔王は『織田信長の長男』に織田家督を譲る事で人間界での仕事量を減らして、吸血鬼に恩を売った。

 しかし、先代魔王も魔界での仕事をすでに減らしていたので、吸血鬼は「ここぞ」とばかりに人間界に入り浸っていた。


 そして─。

 かねてから築城していた魔王の『安土城』の『天守閣』が完成した頃、『お菊』がミケを拾って来て─


 と、まぁ、ここからがミケの話の続きになるわけだ。

 

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