歴史の守護者
第19話 世界の仕組み
─黒猫を追いかけて三毛猫はどっか行っちまうし、3匹の毛玉は「ニャアニャア」と大騒ぎだわで俺は頭を抱えた。
この状況、俺にどうしろってんだ?
まぁ、とりあえず、だ。
「お前ら落ち着け!」
と、俺は近場の2匹の毛玉をとっ捕まえた。
「ニャア!ニャニャニャ!」
って言われても俺にはさっぱりわからんわ。
小型の三毛猫だけは冷静に顔を洗ってる。
「お兄ちゃんたち、落ち着きなよ。とーちゃんとかーちゃんがケンカするなんていつものことじゃん。夫婦喧嘩は犬も食わないんだから。ヴィリーのおじちゃん困ってるよ。」
ああ、そうだな。
困ってはいるが、この毛玉…可愛すぎかよ!
「お嬢さんは冷静で大変宜しい。」
俺はニコニコ(のつもりで)言ったら
「おじさん、ヘラヘラでキモい…。」
と、耳を尖らせて目を釣り上げた。
他の2匹は相変わらず「ニャアニャア」を繰り返し、畳の上をうろちょろしている。
「と、り、あ、え、ず!」
俺は2匹はの毛玉の頭を掴み
「お前らもう一回人になれ。言葉がわからん。」
と、言うと
─ポン
─ポン
と、人に変化した。
「ヤバいよ!今度こそ『リコン』だよ!」
「僕たち、とーちゃんとかーちゃんは一緒がいい!おじさんなんとかしてよ!」
と、小僧達はそれぞれ俺の肩を掴んで揺さぶった。
体が左右に揺れてだんだん気持ち悪くなってきた。
「だーかーらぁ、落ち着けって。」
俺は二人を振り払う。
「ホント、男って子供よね。」
三毛猫は相変わらず毛繕いに余念がない。
「所でお嬢さん?おめぇさんも人になれるのかい?」
俺はミケが脱ぎ散らかした着物(と、言うよりミケが猫になったから抜け殻?)を三毛猫に被せた。
その着物からヒョイっと顔を覗かせて
「なれるよ!」
と、言って
─ポン
と、可愛らしい女の子になった。
ミケの言った通り、この子は人に変化すると裸。
ってこたぁ、人がベース。
それにこの子の顔は間違いない。
あ、あと、もう一つ確認。
「なぁ、おめぇさんたちのおっかさん、名前は?」
と、聞くとチビミケが
「『ユキ』って言うの!『幸せ』って書いて『
と、ニコニコしながら言う。
俺も釣られて笑いながら
「なら、『リコン』はねぇよ。おめぇたちのかぁちやんは、アイツにとっては『ずっと待ってた人』だからな!」
と、3人の頭を順番に撫でた。
「???」
3人は首をかしげながらキョトンとした。
「それはいいけど、私にとっては話の続きの方が気になるんだけど。とーちゃんどっか行っちゃったし…。」
と、チビミケが体には合わない着物を引き摺って俺の前に立った。
すると他の二人も
「僕も気になる!とーちゃんの呪い解けてないから
「そーだよ、どーなるんだよ?」
と、俺の肩を再び揺さぶる。
「ねーねー、おじさん、どーなるのー??」
俺の体は再び左右に揺れて…気持ちわりぃ…。
「あーーーー!分かった分かった!続きは俺が話してやるから、とりあえず座れ!」
と、言うと3人は俺のあぐらの上に手を置いて
「おじさん、続き知ってるの?」
と、顔を近づけて来た。
俺は
「ミケのいた『アヤカシ館』の『主人』は誰だい?」
ニヤッと笑いながら聞く。
「「「ヴィリー・キサラギ!」」」
と、3人がハモる。
「ま、そういう事だ。」
─話す前に少し前置きが必要だ。
ちょっとややこしいが、我慢して聞いてくれ。
まず、この世界は『この世』と『あの世』がある。
『この世』は生きている者の世界。
『あの世』は魂だけの世界、いわゆる死んだ者しか行けない世界だ。
『あの世』は『天国』と『地獄』の2つの世界がある。
『地獄』は『汚れた魂を浄化する』世界で、生きていた頃に悪い事して汚れた部分を洗い流す、いわゆる『魂の浄化工場』。
浄化が終わると『天国』へ送られる。
『天国』では『魂の転生』が行われ、魂はまた『この世』に送られる。
『魂』ってのは『リサイクル』されるんだ。
さて、俺たちがいる『この世』にも3つの世界がある。
『天界』『魔界』『人間界』の3つだ。
『天界』は、ここ。神族が住む世界だ。
『魔界』には魔族が、『人間界』には人間が住んでいる。
『天界』は神族と魔族にしか行けない。
『人間界』と『魔界』は表裏一体で、『鏡』や『水面』を使えば行き来できる。
だから人間界には『鏡の向こうには知らない世界が広がってる』って言うジンクスが出回ってるワケだ。
人間が言う『神隠し』と言う現象も、人間たちが知らずに魔界に迷い込んでるんだ。
そして、この3つの世界には役割がある。
『人間界』は魂の生産。
『魔界』は魂の管理。
『天界』は人間界の歴史の観察と監視だ。
魂は『この世』にいられる数が決まっていて、多くても少なくてもダメなんだ。
新しく作られた魂の分だけリサイクルされた魂の数を調整しなくちゃならない。
それを管理するのが『魔界』の仕事。
魂を生産出来るのは『人間界』の者達だけ。
その魂の数を把握する為に人間の歴史を監視するのが『天界』の仕事なんだ。
大きな戦争や災害を監視して、魂の数が少なくなるのを防いでるんだ。
神族や魔族には『人間が持っていない力』を持っている。
だから人間界を支配しようと思えば簡単なんだが、人間界を侵略するのはご法度だ。
『人間界不可侵条約』
天界と魔界の間に結ばれた条約だ。
魂の生産が出来るのは『人間界』だけ。
そこを侵略する事は『魂の数』のバランスが崩れて世界が傾いてしまうから。
人間界の歴史の監視も同じだ。
人間界の歴史に干渉してはいけない。
歴史を支配すると言うことは、人間界を支配するのと同じだからな。
『人間界』の歴史は『人間界の者』に作らせる。
これが鉄則なんだ。
さて、ややこしいが世界の仕組みを理解した事前提で、話をしよう。
せっかくだから、『俺が何故人間の織田信長を監視してたのか』も話しておこう。
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