第67話 学術都市リーガン
2029年12月20日
リーガンの街に予定よりも早く着いてしまった俺たちはリーガンを観光することにした。
えっ? 試験勉強はだって? アイクが一度寄越した手紙には筆記が難しかったらしいが、実技で簡単にカバーできるからあまり難しく考えるなと書いてあった。
先人の言う事はしっかり聞いておかないとね。
ちなみにリスター帝国学校の試験は3日間行われる。
初日が26日で筆記、2日が実技、3日目も実技。
初日の筆記は書いて字のごとく筆記試験なのだが、2日目の実技は主に魔法以外の実技、3日目の実技は魔法の実技となっている。
俺は筆記だけ本気でやり、2日目の実技でなるべく上位になり、3日目で調整しようと思っている。
もちろん俺よりも強い奴はいるだろうし、こんな事を考えて自惚れていると思われるかもしれないが、注目されてしまうよりかは、マシかなと思っている。
俺は俺とクラリスと一緒に転生したであろう日本人が怖いのである。
同行してくれた蒼の牙のメンバーも12月30日まではリーガンにいてくれる。
12月29日が結果発表で翌年の2030年1月1日から入学式なのだ。
もしも落ちた時のために12月30日までリーガンにいるとのことだ。
リーガンの街はアルメリアと比べ物にならないくらい広かった。
そして街を行きかう人の人種は様々だ。人族、獣人族、
ただ
まず俺たちは街の北側にあるリスター帝国学校を見に行く事にした。
「……凄い……綺麗……」
クラリスが少し先にある建造物を見て思わず感動して呟く。
リスター帝国学校はヴェルサイユ宮殿のような建物だった。それが何棟もあるようだ。
俺たちは今リスター帝国学校の門の前にいるのである。
「確かに……凄いな……これは絶対に受からなくちゃね」
俺がそういうとエリーも言葉にはしないが感動しているようである。
まだ俺たちはリスター帝国学校に入ることはできない。
リスター帝国学校は非常に警備が厳重で学生と教員、この学校に従事する者以外入ることは出来ない。
まだ俺たちは指をくわえて見ていることしかできない。
俺たちはリスター帝国学校を後にし、蒼の牙のメンバーたちとご飯を食べることにした。
「マルス、この街は凄いな。いつかアルメリアもこんな風になるといいな」
蒼の牙のリーダーのバンがこう言った。ちなみにバンも準男爵になった。
バンは俺たちの護衛任務が終わりアルメリアに帰ると正式に騎士団の騎士団長となる。
他のメンバーもみんな騎士団に組み込まれる。
ちなみに赤き翼の方でももう一つ騎士団を作って、こっちも赤き翼のリーダーが騎士団長となる予定だ。
つまりブライアント家には騎士団が2つできる事となる。
ジークは将来的には3つの騎士団を作る予定なのでもう一つは黒い三狼星が中心となった獣人たちの騎士団を作るつもりだという。
「そうですね。だけどここまで大きいと治安が不安ですね。スラム街とかもあるようですし」
「まぁそうだな。アルメリアの街がこのくらい大きくなれば、俺たち騎士団も大忙しかもな」
もうすでにバンは騎士団としての意識を持っている。まぁ役職は人を育てるって言うしね。
「ねぇマルス。勘違いかもしれないけど私たちが外に居た時、この街の人たちがやたら私たちを見てきてなかった?」
とクラリスが言うとエリーも
「……見られてた」
という。やはり2人とも気づいていたのか。
「そうだね。最初はクラリスとエリーを連れまわしていい気になってやがるなっていう嫉妬の視線だと思ったんだけど……実際そういう視線の方が多いだろうけど、そうじゃない視線も感じた」
「まぁマルスは傍から見れば完全にハーレム状態だからな。しかも2人ともぶっ飛んだ美女だからな。嫉妬の1つもされるだろう。これから学校とか行ったらもっとされると思うぞ」
「うん……自覚はしてる……クラリスとエリーは9歳の割にはかなり大人びているしね。だけどそれだけじゃない視線も確実に感じたから少し気を付けるよ」
そう言って俺たちは宿に戻った。
もちろん俺とクラリスとエリーは同じ部屋だ。
翌日以降も観光をしたり、ごはんを楽しんだりした。少しばかり勉強もすることにした。
俺とクラリスの学力は問題ないのだが、エリーが少し心配だから、エリーの勉強を手伝う事にした。
2029年12月24日
日が経つにつれ、リーガンの街に人が集まってくるのが分かる。世界中からこのリーガン帝国学校に受験に来るのだ。
当然受験生の他に受験生の護衛たちも来る。俺は受験生や護衛たちを見ながら言った。
「改めて凄い人たちだね。なんか人種のサラダボウルとはこういう事を言うんじゃないかな?」
「そうね。ここまで同時にいろんな種族を見られるのは、世界広しとは言えここだけかもね」
「……ここに居る人みんなライバル……負けない……」
「うん。リスター帝国学校は各国、各地域の優秀な人だけを集めて、その中でも倍率が100倍近くなるっていうからな。1つの街の同年代が全員ここを受けても誰1人受からないなんてことはざらにあるって言うしね」
「もしかして私たち3人で受けて3人とも受かるって相当なことじゃない?」
「だろうね。2日目の実技試験は本気でやったほうが良いかもしれない。受験生であろう人たちを鑑定するとそれなりの人がかなり多い。それでも俺たちほどスキルレベルが高い人はいないけど……ただ気になるのがスキルレベルは低いけどレベルが高い人がかなりいるな……なんでだろ」
「……そういう人……皆上級貴族……パワーレベリング……中にはBランクのパーティをいくつも雇って……止めを刺す……」
「あーそう言う事か……だからレベルのわりにステータスやスキルレベルが低いのか……エリーは詳しいね」
「……リスター連合国……上級貴族では常識……でもパパはそんなことはしなかった……他の国の上級貴族も同じことをしてる……」
バーンズならエリーの為にそういう事しそうだけどなぁ……まぁ実際最初に会った時のエリーはレベル1だったからパワーレベリングしなかったんだろうけど。
「でも上級貴族の気持ちも分からなくはないな。俺も妹のリーナには危険を冒してまでレベル上げしてほしくないから、やっちゃいそう……」
「ブライアント家のリーナちゃん愛は凄いからね。少し妬けちゃうわ」
「……うん……でもリーナ可愛い……仕方ない」
ご飯を食べに出かけていた俺たちが宿に帰る途中でクラリスが俺に小声で話しかけてきた。
「ねぇやっぱり誰かに見られているわよね?」
「うん。ずっと同じ人が俺たちを見ているね。もうどこから見ているか分かったよ。どうする? この人の所に突撃してみる?」
流石に何日も尾行され、ずっと監視されていると相手がどんなに手練れでも察知できる。まぁ最初から本気で探せばすぐに見つけることが出来たんだけど、相手にも気づかれそうだから、慎重に察知していたのだ。
「ちょっと怖くない?」
「でもずっとこのままだとなんか嫌じゃない? スッキリしてから試験に臨みたくない?」
「……突撃する……懲らしめる」
「エリー。まずは話をしてからにしてくれ。いきなり戦闘とか絶対にダメだからな」
「……分かった……」
「じゃあ5秒後に俺がそっちに走って向かうから、俺を追っかけてきてくれ」
2人は頷くと俺がカウントを始める。
「5・4・3・2・1・行くぞ!」
俺は急に方向転換をして俺を監視している者たちがいる路地へ走った。
監視していた者たちはあまりにびっくりして口をパクパクしていた。
俺も監視していた者たちを見てビックリした。
「ミーシャ? お前が俺たちをずっと監視していたのか……? サーシャさんも……?」
そこには俺とクラリスと一緒に奴隷オークションで売られていた
----------あとがき----------
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