第52話 新たな力

「まだやるか?」


 金獅子の男が言うと、この言葉に奴隷の獣人たちが驚いた。


「僕はもともと争うつもりはありませんので、話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「好きにしな」


「なぜ急に襲ってきたのですか?」


「俺を見定めようとしたからだ。ちょっと脅かしてやろうと思ったのだがな」


 鑑定をしようとしたのを感知したのか……この人がどのくらいの能力かどうしても見てみたい。


「僕はマルス・ブライアントと申します。よろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「俺はバーンズ。バーンズ・レオだ」


「バーンズ様、先ほどは見定めようとして申し訳ございませんでした。改めて見定めてもよろしいでしょうか?」


「……構わん」



【名前】バーンズ・レオ

【称号】獣王

【身分】獣人族(獅子族)・奴隷

【状態】感電(弱)

【年齢】29歳

【レベル】62

【HP】310/322

【MP】20/20

【筋力】145

【敏捷】128

【魔力】20

【器用】5

【耐久】135

【運】1

【特殊能力】獣王化(LvMAX)

【特殊能力】体術(Lv10/A)



 規格外すぎる……あれで思いっきり手加減されていたのか……体術もレベル10ってことはスキルのMAXは10より上という事か。


 称号が獣王で特殊能力が獣王化……これも気になるがやはり一番は、状態が感電(弱)となっている。って事はもしかしたら……


「ありがとうございます。また手加減して頂きありがとうございます」


 俺はなぜか手加減してもらったことにお礼を言っていた。普通は急に襲ってくんなとか言うのだろうが、今更になって圧倒的な力の差にビビッてしまったのだ。


「うむ。構わん」


 おーい。肯定しやがった。


「俺からも質問だ。お前は何者だ? さっき俺の右手を弾いたのはなんだ? あと俺の左手はどうなった?感覚がないのだが?」


 俺はこの質問にどこまで答えていいか分からず、まだ固まっているジークの方を見る。


 するとジークは我に返ったように頷く。ある程度は話していいという事か。


「僕はE級冒険者です。バーンズ様の右手を弾いたのはあちらの女の子です。バーンズ様の左手をそうしてしまったのは僕だと思いますが、必死だったので良く分かりません。お手を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」


 俺がそう言うとバーンズはクラリスを見ながら左手を俺に差し出した。左手は焦げていて触ると帯電していた金色の電気がバーンズから俺へと伝わると、俺とバーンズは2人して驚いた。


「左手の感覚は戻りましたか?」


「ああ、なんなんだこれは? 初めて見たぞ」


 とバーンズが独り言を呟いている。


 俺は自分の予想を確かめるべく自分を鑑定した。



【名前】マルス・ブライアント

【称号】雷神/風王/ゴブリン虐殺者

【身分】人族・ブライアント子爵家次男

【状態】良好

【年齢】6歳

【レベル】14

【HP】43/43

【MP】5024/6161

【筋力】36

【敏捷】40

【魔力】51

【器用】39

【耐久】37

【運】30

【固有能力】天賦(LvMAX)

【固有能力】天眼(Lv8)

【固有能力】雷魔法(Lv1/S)

【特殊能力】剣術(Lv7/B)

【特殊能力】火魔法(Lv2/F)

【特殊能力】水魔法(Lv1/G)

【特殊能力】土魔法(Lv2/F)

【特殊能力】風魔法(Lv8/A)

【特殊能力】神聖魔法(Lv4/B)


 やはりついに雷魔法を習得したのだ!


 ウィンドインパルスでびくともしない相手に傷と感電を与えることが出来た。


 それに称号が雷神って……雷魔法まだレベル1なのに……


 あ、雷魔法使えるのはこの世界で俺だけだから雷神になったのか。


【雷神】を鑑定してみると


【雷神】この世界で雷魔法の頂点に立ったものに与えられる称号。雷魔法の威力大幅UP。魔法発現時間短縮。


 凄い。厨二っぽいが雷神ってカッコいい。


「もう他に質問は無いか?」


 バーンズがそう言ったので


「僕たちは奴隷を探しているのですが……」


 俺がそこまで言うと、バーンズが


「俺は自分よりも弱い奴の下にはつかない。だからお前の下にはつかない」


「そう……ですか……」


「だが、お前の実力であれば、俺以外の奴らであれば納得するかもしれんな。俺たちだって意地を張って誰にも仕えない訳ではないからな」


 そう言ってバーンズが他の獣人たちを見る。


 獣人たちは先ほどとは違う興奮をしながら、獣人同士で話している。


 話している内容は主にバーンズが人間と話をしたという事だ。なんでそんな事に興奮しているのかが俺には分からない。すると店主のヘリクが


「セレアンス卿がこのアルメリアに来てから人族と話をしたのは、私を除けばマルス様だけです。話をするのもある程度認めたものとしかしませんから」


 という事は、少しは認められたという事か。


「では皆さんを見定めてもよろしいでしょうか?」


 と俺が獣人の奴隷たちに言うと、奴隷たちは頷いた。しかしバーンズが


「一番奥のは禁止だ。あとは本人たちに聞け」


 バーンズと一緒に居た女の子だけは鑑定してはダメなようだ。


 女の子というよりかはライオンな気がするが……


「分かりました。それでは奥の女の子以外を見させていただきます」


 俺は獣人たちを鑑定した。


 獣人たちのステータスは筋力と敏捷がクラリスより少し高く、魔力、器用、運は最低レベルだった。


 ようやく殺気の呪縛から解けたジークに獣人たちのステータスを言うと、ジークが店主に


「この人たちの値段を聞きたい。もちろんバーンズ卿と奥の女の子以外で」


「獣人たちの値段は人間たちとほぼ変わりません。一人金貨10枚前後といったところです」


 予想外に安いと思った、しかし店主が続けて


「ただし、隷属を結んだあとの待遇はそれぞれ奴隷と交渉して頂くようになります」


 ふむ。つまり奴隷に給料、もしくはそれに準ずるものを与えないといけないという事か。


「またこれも知っているとは思いますが、奴隷と性行為は合意が無い限りは禁止となっております。約束を守る者は少ないかもしれませんが、売買する際に必ずその確認はさせて頂きますので」


 うん!これはナイスだ!


 どうしても奴隷という言葉に抵抗を感じてしまうのは、この点が気になっていたからだ。


「お父様何人くらい購入するつもりですか?」


 アイクも殺気から解放されてジークの隣にきて尋ねた。


「うむ。金貨10枚でいいのであれば……マルスたちに3人くらいがいいかと思うのだがどうだ?」


「そうですね、アルメリア迷宮から魔石を持ち帰るだけかもしれませんが、帰るときに魔物と遭遇するかもしれませんしね。僕たちの予定では当初は1層の敵をある程度殲滅してから2層に潜る予定ですので、安全に往復するためにも3人が良いかもしれませんね」


 ジークが3人買いたいというと店主が


「ではこちらの3兄弟はどうでしょうか? 狼族で出来れば同じ方に買っていただけると私としても安心できるのですが……」


 3人は16歳だった。3つ子かな? 能力的には他の獣人とそこまで大差がなかった。


 そして3人のステータスは少しずつ違った。


【名前】オル・ジェット

【称号】-

【身分】狼族・奴隷

【状態】良好

【年齢】16歳

【レベル】16

【HP】58/58

【MP】5/5

【筋力】26

【敏捷】30

【魔力】2

【器用】2

【耐久】20

【運】1

【特殊能力】剣術(Lv4/D)

【特殊能力】体術(Lv3/E)


【名前】マック・ジェット

【称号】-

【身分】狼族・奴隷

【状態】良好

【年齢】16歳

【レベル】16

【HP】54/54

【MP】5/5

【筋力】24

【敏捷】30

【魔力】2

【器用】10

【耐久】18

【運】1

【特殊能力】槍術(Lv5/D)


【名前】ガイ・ジェット

【称号】-

【身分】狼族・奴隷

【状態】良好

【年齢】16歳

【レベル】16

【HP】62/62

【MP】5/5

【筋力】29

【敏捷】22

【魔力】2

【器用】1

【耐久】25

【運】1

【特殊能力】斧術(Lv3/E)

【特殊能力】盾術(Lv4/D)


 長男のガイがどちらかというと万能、次男のマックが頭脳? 三男のオルがパワー型という感じだ。


 店主のヘリクが3人を部屋から出して挨拶させた。


「俺は黒狼族の長男のガイだ。次男のマックだ。三男のオルだ」


 長男のガイは髭が似合っている。次男のマックは右目が隻眼だ。三男のオルは巨漢だ。


 あと黒狼族?鑑定結果は狼族なんだが……まぁ狼って黒っぽいイメージだよな。


 うん! 今日から彼らは黒い三狼星だ。ジェットストリームアタックを教えてあげよう。


 ジークが黒い三狼星に隷属の条件を聞くと


「衣食住を約束してくれ。住む場所は俺たち3人が一緒に住める場所を用意してくれ。また食事は毎食たらふく食べさせてくれればいい。別に高いものを用意しろとは言わないが、必ず肉は用意すること。これを約束してくれれば給料は特にいらない」


 これは……もしかしてかなり高いのか?住む場所が一番問題な気がするが……


「うーむ……では私からも何点か条件を出そう。君たちの条件は全て飲む。そのうえでこれから私たちは君たちとアイクたちの住む家を用意しようと思う。ただし君たちと隷属関係を結ぶのはブライアント家当主の私だ。だから私の命令に従ってもらう。よろしいか?」


 そうか獣人たちは俺の事は認めてくれたが、ジークのことは認めていないんだった。


「いいだろう。どうせお前は迷宮に潜らないのであろう?」


「ああ。私はこれでもイルグシアを任されている貴族だからな。ここに長居することはできない」


 この言葉に店主であるヘリクが驚いた。


「先ほどから少し気になっていたのですが、お客様は茶色の盾のジークさんですか? 我らがマリア様の旦那様の……」


「我らがマリアって……おい……まぁそうだが」


「そうですか! それでは今度マリア様と一緒に来ていただければ大サービスをさせて頂きますよ! 今もさぞや美しいのでしょう!」


 やっぱ美人って得だよな。


 ただ自分のかあちゃんの容姿を褒められるのってなんかくすぐったい。嬉しいんだけどね。


「分かった。明日、いや明後日にでもマリアと一緒にこよう。では彼らを買うのは明後日でもよいか? またその時に一人使用人の人間を買おうと思う。それでいいか?」


 店主のヘリクは揉み手をしながら


「是非! では明後日お待ちしております。今から髪の毛を切りに行って……」


 最後の方はもう聞き取れなかった。


 会話の途中からバーンズは部屋に戻っており、バーンズが


「ヘリク! 早くこのガラスを直す手配をしろ!」


 と怒っていた。いやー誰が壊したんだよ……と絶対に言えない……


「ではまた明後日くる。よろしく頼む」


 ジークがヘリクにそう言うと、俺らもジークの後に続いた。

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