第32話 楽勝
迷宮内部は平常運転だった。
妙な違和感はなくなり、俺とクラリスはゴブリン達を屠っていく。
ビートル伯爵や騎士団員たちはクラリスの動きにびっくりしていた。
先日まで神聖魔法しか取り柄がなかった6歳の娘が今はゴブリンジェネラルと互角以上にわたりあっている。
そして装備のおかげで多少のダメージはすぐに回復する。
騎士団員もゴブリンジェネラルを倒せない訳ではない。
受けたダメージの回復手段が乏しいので長期戦が出来ないのだ。
安全地帯まで行くと少し休憩した。
休憩中にブレアがクラリスに聞く。
「クラリス嬢は昔からこんなに強かったのか? 私よりも強く見えるくらいで驚いているのだが……」
「いいえ、私はマルスと出会ってこの1か月でここまで強くなれました。1か月前はゴブリンやゴブリンメイジを倒すのもギリギリだったと思います」
「どうやって急激にそこまで強くなれたのか教えてくれないか?」
「マルスのいう通りに戦っていただけです。ただ自分でも信じられないくらい強くなっているというのは実感できます」
すると伯爵が
「何にしろ、我がグランザムの街にこれだけの才女が誕生したというのはとても良いことだ。マルス君もグランザムにとどまってくれればもっと良いのだがね」
「申し訳ございません。僕もそうしたいのですが、事情がございまして……もうそろそろ出立したいのですが、よろしいでしょうか?」
俺は逃げるようにそう言うと
「申し訳ない、それではグランザムの為に、ビートル領の為に、そして我らが
伯爵がザルカム王国という言葉を強調した。もしかしたら俺の正体にうすうす気づいているのかもしれない。
「承知致しました。必ずやビートル伯爵のご期待にお応え致します」
俺はそういうとビートル伯爵に会釈をしてクラリスと一緒に安全地帯を出た。
道中で違和感の正体はビートル伯爵や騎士団の人たちかもしれないと思った。
もしかしたら俺の出自を探っていたのだろうか?
そんなことを思いながら湧き部屋のゴブリンジェネラルを全部倒した。
そしてボス部屋の扉の前にきた。
「クラリス、以前に言ったが、もう一度言うね。ボス部屋にはゴブリンキングという魔物がいる。ゴブリンキングはゴブリンロードを召喚し、ゴブリンロードはゴブリンジェネラルを召喚する。
クラリスには俺のサポートをお願いしたい。ただクラリスの身の安全を一番に考えてくれ。あとMPは出来る限り温存してほしい。なので
「分かったわ、なるべくマルスから離れないように、ゴブリンに囲まれないように立ち回るわ」
俺らはお互い頷いてから扉を開け、静かに注意しながらクラリスと部屋に入るとイルグシア迷宮とは違う光景が広がっていた。
イルグシア迷宮のボス部屋と違う点は部屋の大きさが倍以上ある。
間違いなく倍以上あるのだが、イルグシア迷宮のボス部屋よりも狭く感じる。
理由はゴブリンの数だ。
ゴブリンキングが2体、ゴブリンロードが4体、ゴブリンジェネラルが50体以上いるのだ。
ゴブリンキングの数は正直想定内だがゴブリンジェネラルの数が予想以上だった。
イルグシア迷宮ではゴブリンキングは1体ゴブリンロード2体、ゴブリンジェネラルが20体に対し、この数だ、正直ゴブリンジェネラルだけでも100体弱はいるのではないだろうか……
「クラリス相手の数が予想以上に多いが、作戦は変えないぞ。ここで倒しきる」
「分かったわ、回復は任せて」
100体弱のゴブリンジェネラルをウィンドカッターで倒すのは効率が悪いと思ったので、範囲魔法のトルネードを使って巻き込み、前回と違いトルネードの中にウィンドカッターを仕込んだ。
大きい
ゴブリンロード、ゴブリンキングは範囲外だ。
竜巻の中にウィンドカッターを仕込んでゴブリンジェネラルを瞬殺した。
100体くらいいるゴブリンジェネラルをトルネードで一掃できたのは大きい。
ウィンドカッターを仕込んだら消費MPが50もした。
一体あたりMP0.5で済むからかなり効率的なのだが、少し贅沢をしている気分になる。
「な、何その凄い魔法……」
「トルネードと言って今俺が使える中で2番目に強い魔法だ。殺傷力はウィンドカッターよりも低いけどね。広範囲魔法だからこういう時便利なんだ。一番強い魔法は迷宮の中で使うと恐らく俺たちも被害を受けるから使えないんだ」
この部屋に入った時はかなり危ないと思ったが、トルネードの威力が思ったよりも強くなっていたので、結局何体いようが変わらなかった。
むしろいい経験値になってよかった。
トルネードを60発くらい撃った時にはもうゴブリンキング、ゴブリンロードから召喚はされなかった。
そして意外とあっさりゴブリンキングを倒すと、俺のレベルも上がっていた。
【名前】マルス・ブライアント
【称号】風王/ゴブリン虐殺者
【身分】人族・ブライアント子爵家次男
【状態】良好
【年齢】6歳
【レベル】13
【HP】40/40
【MP】2741/6001
【筋力】34
【敏捷】35
【魔力】45
【器用】35
【耐久】35
【運】30
【固有能力】天賦(LvMAX)
【固有能力】天眼(Lv7)
【固有能力】雷魔法(Lv0/S)
【特殊能力】剣術(Lv6/B)
【特殊能力】火魔法(Lv1/G)
【特殊能力】水魔法(Lv1/G)
【特殊能力】風魔法(Lv8/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv3/B)
B級冒険者のステータスを見たことが無いから分からないが、おそらくB級クラスはあると思う。
そして宝箱が2つ出た。
価値4が2つもだ。
たまには俺以外の人にも開けてもらおうと思いクラリスにも1個開けてもらう事にした。
まず俺から開けた。
【名前】
【防御】14
【特殊】魔力+3 耐久+2
【価値】A
【詳細】神聖魔法と結界魔法の消費MP軽減、効果増。状態異常無効。自動修復。
え? 結界魔法? これってクラリスの為にある装備だ!
効果を説明すると早速クラリスが身に纏った。
日本の法衣と違い派手ではないが装飾がされている。
そして法衣の内側には魔法陣が描かれている。これが自動修復機能だろうか?
ベースの色は銀髪のクラリスによく似合う白色だ。
「か、かわいい……」
思わず口にするとクラリスが顔を赤くして
「あ、ありがとう。これも絶対に大事にするね……」
その言葉に俺も顔が赤くなってしまった。
「じゃあ今度は私が開けるね」
そう言ってクラリスはもう一つの宝箱を開けた。
【名前】偽装の腕輪
【特殊】-
【価値】-
【詳細】装備者のステータスを偽ることができる。しかし自分のステータス以上の数値には出来ない。普通の鑑定では看破されない。
黒い魔石が埋め込まれた腕輪だ。
俺が欲しかった装備だ。
早速装備してステータスをいじる。これで学校に行くことになっても浮くことはないな。
この時までは呑気にこんなことを考えていた。
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