第31話 前兆
なんでこいつは迷宮と武器屋と道具屋を往復している?
ビートル伯爵からの
またこいつがなんで迷宮に入っているのかも疑問だ。
何かを企んでいるそれだけは分かる。
ブレアは部下と共に今日もある人物を監視していた。
クラリスとのゴブリンジェネラル狩りからさらに一週間が経った。
クラリスはアイクよりもレベルが上がるのが早い。もう15まで上がっている。
今日からクラリスの結界魔法の練習を始める。
ただ結界魔法の練習と言っても何をしていいのか分からない。
魔導書なんてものは無いし、教えてくれる人も当然いない。
俺たちは手掛かりがないまま湧き部屋に来ていた。
「結界魔法、なんとなくどういう類の魔法か見当はつくけど……そう簡単には覚えられそうにはないわね」
「結界魔法は使えればいいくらいに考えておこう。とにかく努力だけはしよう」
本音は安全のためにも必ず覚えて欲しい。
なんせ結界魔法というくらいだから身を守る魔法であることは容易に想像できる。
ただしあまりプレッシャーをかけるとよくないと思ったから先ほどのような言葉を言ったのだ。
クラリスとの修行と言う名の楽しい時間がどんどん過ぎていく。
「マルスごめんなさい。こんなにも付き合ってもらって。だけどこれだけやって覚えられないとちょっと病んでくるわね……」
「しょうがないさ。クラリスしか使えない魔法だからね。明日はボス部屋突入する日だから今日はこれくらいにしてゆっくり家で休もう」
1週間やっても結界魔法は覚えられなかった。
そして約束の日まで1日になっていた。
クラリスは相当頑張った。
【名前】クラリス・ランパード
【称号】-
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】6歳
【レベル】15
【HP】32/32
【MP】18/191
【筋力】21
【敏捷】21
【魔力】22
【器用】21
【耐久】20
【運】20
【固有能力】結界魔法(Lv0/A)
【特殊能力】剣術(Lv4/C)
【特殊能力】弓術(Lv4/B)
【特殊能力】神聖魔法(Lv3/A)
C級〜D級冒険者くらいのステータスにはなっているだろう。
実践経験が乏しいから同じようなステータスの人間よりかは弱いかもしれないが……
1週間前とレベルは変わっていないが、スキルLvが上がった。
そういえばアイクも湧き部屋ではレベル15までしか上がっていなかった。
もしかしたらこの部屋では15までしか上がらないのだろうか?
俺はと言うと全くステータスは変わっていない。
そしてボス部屋突入当日の朝になった。
朝と言ってもまだ日は昇っていない。
グレイとエルナには今日突入するとは言っていない。
しかし雰囲気から読み取ったのであろう。
「絶対に無事に帰ってきてね」とか「無理だと思うのであれば、今日じゃなくてもいいんだぞ」とか言ってきた。
俺らは後ろ髪を引かれる思いで家を出て、冒険者ギルドへ向かった。
今日はビートル伯爵と
ボス部屋まではいかないが、安全地帯まで一緒についてきて見守るというのだ。
伯爵とは冒険者ギルドで待ち合わせをするという事になっている。
俺らは伯爵を待たせるわけにはいかないので1時間前に待ち合わせ場所の冒険者ギルドに着いた。
するとほぼ俺らの到着と同時にビートル伯爵が来た。
「おや、結構早めに着くようにしたのだが、待たせてしまったかね?」
「いいえ、僕たちもたった今到着したばかりですので」
「今日は頑張ってくれ。褒賞の方も期待しておいてくれていい」
「ありがとうございます。それでは早速ですが行きましょうか」
「ちょっと待ってくれないか、今日は騎士団からも数人連れて行こうと思う。いくら安全地帯と言え私一人では少し心許ないからな」
すると伯爵の後ろから10人ほど騎士団員が現れた。
その中から一人の男の人が挨拶してきた。
「初めましてではないが、話をするのは初めてだな。騎士団長のブレアだ。マルス殿には
「「よろしくお願いします」」
ブレアの第一印象は荘厳、厳格だ。
曲がったことは許さない、ちょっと融通が利かないといった感じがにじみ出ている。
鑑定をしてみた。
【名前】ブレア・ブレイズ
【称号】-
【身分】人族・ブレイズ準男爵家当主
【状態】良好
【年齢】36歳
【レベル】20
【HP】64/64
【MP】10/10
【筋力】22
【敏捷】18
【魔力】3
【器用】15
【耐久】28
【運】1
【特殊能力】槍術(Lv4/D)
【特殊能力】剣術(Lv2/E)
能力的にはクラリスと同じくらい、スキルはクラリスのほうが上、経験はブレアという所だ。
蒼の牙のリーダーのバンのほうが強いのは確実だ。
騎士団長という事もあって準男爵らしい。
冒険者ギルドからグランザム迷宮までは近いので歩いて行くことになった。
俺とクラリスが先頭を並んで歩いて、その後ろを騎士団が伯爵を守りながら歩く。
少し歩くと、違和感を覚えた。先日から感じた視線だ。今日はいつもより確実にその違和感を捉えることが出来た。
「クラリス、やはり視線みたいなものを感じないか?」
「言われてみれば、何か感じるかもしれない……後ろの方からかしら?」
「ああ、まだ住民が外で活動する前だからな。間違いなく普通の住民ではないだろう」
俺は足を緩めて伯爵の近くまで下がった。
「ビートル伯爵、ブレア騎士団長、何か違和感があるのですが気のせいですか?」
「どういった違和感だい?」
伯爵が驚いたように答えた。
「少し前からなのですが、視線を感じるのです。今日は特に違和感が……」
「その件は、迷宮を攻略してからにしよう。私の方で対策はしてあるからマルス君は迷宮攻略に集中してほしい」
今度は俺が少し驚いた。伯爵も違和感を知っていた。そしてその正体も把握しているらしい。
クラリスの隣に戻ってその話をしてみる。
「私たちの知らないところで何かあるのは確実なようね。でも伯爵の言う通りだわ。私たちは迷宮攻略に集中しましょう」
「わかった。何かあったらすぐに教えてくれ。後悔はしたくないから」
俺は一抹の不安を抱えながら迷宮に向かった。
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