第6話 神聖魔法

「今日はとてもいいものが2つも手に入った。ご飯を食べた後に見せるから早くシャワーを浴びてこい」


 ジークが口早に言う。


「わかりました。お父様」


 アイクが言うと俺も頷きアイクの後ろを追いかける。


 そして夕飯が終わって、ジークが迷宮に潜るときにいつも持っていくリュックから一振りの剣を取り出した。


 その剣の鞘は派手さはないが綺麗な装飾が施されており、剣の柄には大きな赤い魔石がついていた。そして刀身は綺麗な銀色だった。


「これは火精霊の剣サラマンダーソードだ。火属性の剣らしい。鑑定士に調べさせたので間違いはないと思う。アイクこれはお前にピッタリな剣だからお前にやる。絶対に正義のために使えよ」


 アイクは満面の笑みで


「ありがとうございます。お父様。僕はお父様のような立派な人間になります!」


 といった。


 俺は火精霊の剣を鑑定してみた。


【名前】火精霊の剣サラマンダーソード

【攻撃】20

【特殊】魔力+2

【価値】B


 これは凄い。


 ジークとマリアが興奮して帰ってくるわけだ。


 ちなみにそこら辺のテーブルとかも鑑定できるが


【名前】テーブル

【価値】-


 と出るだけだ。


 希少アイテムだけ詳細にわかる様になっているらしい。


 さすが天眼だ。


 アイクが火精霊の剣を持って喜んでいると今度はマリアが


「次はマルスね。これを御覧なさい」


 そう言って一冊の本をリュックから取り出した。


 それは初級神聖魔法の魔導書だった。


「これはマルスにあげるわ。しっかり勉強して覚えてね」


 俺は思わずガッツポーズして


「ありがとうございます。今まで以上に頑張ります」


 と言って初級神聖魔法の魔導書を受け取った。


 その夜からずっと神聖魔法の練習をしたが、覚えられなかった。


 風魔法のようには覚えられないのは才能がBだからなのだろうか?


 すると火魔法の才能がCのアイクはよほど努力したという事だろう。


 そう考えるととても嬉しくなってきた。


 自分ひとりで努力するよりもみんなで努力したほうが楽しいからだ。


 翌日ジークとマリアが迷宮に向かうと俺たちもいつもの日課をこなした。


 アイクは昨日もらった火精霊の剣ではなくいつもの木剣を使って練習をしている。


「アイク兄、火精霊の剣は使わないのですか?」


 俺はそう聞くと


「まだ僕には早い気がする。過ぎた力は身を滅ぼしそうだからね」


 アイクも転生者かと思うくらいしっかりとした回答だった。


「さすがです。僕もアイク兄を見習って慢心しないように頑張ります」


 俺も神聖魔法が使えるように頑張るぞ!


 そう思って神聖魔法を使おうとするとなんと1回目の練習でMPが1減った。


 そして何度も初級神聖魔法の治癒ヒールを唱えていると昼ご飯前に治癒ヒールを会得した。


「アイク兄!治癒ヒールが使えるようになりました!」


 俺がそういってアイクに言うとアイクは嬉しそうに


「やったね。さっき訓練している間に膝を擦りむいたから治癒ヒールをかけてみてくれ」


「はい。わかりました。治癒ヒール


 するとアイクの膝の傷は瞬く間に治っていく。


 アイクはとても嬉しそうにしながら俺にグータッチをしてくる。


 治癒ヒールの消費MPは10。どのくらいHPが回復するのかはまだ不明。


 使う機会が無いのが一番だろうけど絶対にそんなことは無い。


 もっとスムーズに魔法が発動するように特訓をしなくては。


 というのも魔法というのは魔法を唱えてから発動するまでに時間がかかるのだ。


 俺のウィンドは唱えたら全くタイムラグが出なくて発動するが、アイクのファイアは発動するまでに2秒くらいかかる。


 中級魔法以上になるともっと時間がかかるらしい。


 午前中の訓練を終えて昼ごはんを食べていると事件が起きた。


 迷宮からジークとマリアが怪我をして帰ってきたのだ。


 ジークとマリアの戦闘スタイルは鉄壁らしい。


 怪我をしないから毎日のように迷宮に潜れるのだが、一般の冒険者はそうはいかないのでダンジョンに潜ったら2、3日は静養するのが普通らしい。


「お父様、お母様!大丈夫ですか?」


 アイクが駆け寄った。


「ちょっとドジってしまってな。すまないが濡れたタオルをたくさん用意してくれ」


 マリアの肩を借りているジークが平静を装いながら話してくる。


「心配かけちゃってごめんね。大丈夫だからタオルをお願いね」


 とマリアも優しく言ってくる。


 アイクはそれに答えタオルの準備をするために即座にその場を離れようとした。


 しかし俺がアイクに「ちょっと待って」と言ってその場にとどまってもらいジークとマリアに鑑定をした。


【名前】ジーク・ブライアント

【状態】怪我(大)

【HP】10/48


【名前】マリア・ブライアント

【状態】怪我(小)

【HP】24/40


 ジークのほうが重傷か。


 そして重傷のジークに治癒ヒールをかける。


治癒ヒール


【名前】ジーク・ブライアント

【状態】怪我(小)

【HP】25/48


 1回の治癒ヒールでHPが15回復した。

 という事はあと2回で完全回復かなと思い。


治癒ヒール

治癒ヒール


 と2回唱えた。


【名前】ジーク・ブライアント

【状態】良好

【HP】48/48


 その光景を見たジークとマリアはとても驚いている。


 それを気にしないで俺はマリアにも2回治癒ヒールを唱えた。


【名前】マリア・ブライアント

【状態】良好

【HP】40/40


 二人ともHPは回復した。


「お父様、お母様どうですか?まだ痛むところはありますか?」


 俺はそう聞くと


「……い、いや助かった。ありがとう」


 とジークが言い、マリアも


「ありがとう!もう治癒ヒールができるようになったのね!」


 と俺を抱きしめながら喜んでくれた。


 回復した二人はそのまま風呂場に行って疲れや汚れを落とす。


 それを見たアイクと俺はよかったと安堵した。



 そしてその夜家族会議が開かれた。

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