第30話 パーティの招待

 大学は2か月間の夏休みに突入した。特に課題もないから本当に自由だった。それにしてもセミの音が鬱陶しくて、今すぐにでも夏が終わってほしい。


「律貴! ドライブしよ、海行こうぜ」


 立花は俺の家でくつろいでいる。


「いいね」

「夏祭りも行きたい。行くぞ!」

「いいねー」


 暑くて何も考えられない。

 そんな時にスマホに1本の電話がかかってきた。扇子で顔に風を仰ぎながらスマホを手にとると、有沙さんからだ。通話にすると、でかい声が俺の鼓膜を破りかけた。


『明日13時!! 駅前で待ってまーす!! 車でお迎え来てね~!! スーツ着てきてー!』


 ブチッ!

 すぐに嵐が去って行った。


「アンクリの子? 俺は誰推そうかなぁ」

「立花はドMだから、青葉七瀬さんが似合う」

「Mじゃないわ。静音ちゃんもいいよなぁ、クールで好きー」

「ははは、クールね」


 ついこの前、俺の前で号泣してたぞ。

 それにしても暑い、暑すぎる。まだ7月下旬だからこれからもっと暑くなるのは耐えにくい。

 冷蔵庫を開けてお茶を出す。


「律貴は有沙ちゃんが似合うんじゃね」

「有沙さん?」

「ほら、律貴って振り回されるの大好きじゃん。遥夏ちゃんみたいな相手があってるんだよ」


 コップにお茶を注いで一気飲みした。


「そうかなぁ」


 また誰かが電話をかけてきた。スマホを見ると俺ではなくて、立花に電話がかかってきていた。だるそうに電話に出ると、一期に顔が明るくなった。


「やった! 律貴! 父さんのコネで明日のパーティに俺もお呼ばれしたぞ!」

「パーティ?」

「クルーズ貸し切って、芸能人や経営者が集まるパーティが開かれるんだって。今律貴に電話かかってきたのもそれじゃない? アンクリちゃんも呼ばれてるみたいだし」


 そういうことか。だからスーツを着ていくんだ。もっと詳しく説明してほしかったなぁ。


「……って、スーツないよ!!」

「買いに行こ! 俺もない」


 今は15時。


「はやく行こう!」

「おう! やった~! 一般人の俺まで行けるなんてな! 父さん最高!」


 俺たちは急いでブランドもののスーツを買いに行った。

 芸能人が来るってことは、遥夏もいる可能性高い。パーティにアイドルフェスに、遥夏に会えるイベントが続いてやってくるなんてチャンスだ。

 でも芸能人がいるってことは、みんな俺の顔を知っているわけだから気を付けないと。立花に手伝ってもらおう。


 次の日、俺は朝早く起きて変装を考えた。


「俺、律貴の車で行くことになったからよろしく」


 圭さんとのメールを見せてもらうと、車に乗る時のメンバーの配置が書かれていた。


「律貴の車には俺と父さん。プロデューサーの車にアンクリだって」


 そのことも俺のメールに届けてほしかったけど、圭さんのメールは持ってないから仕方ない。

 スマホを見ると大智さんから通知が来ていて、メールの内容を見るとパーティの詳細と待ち合わせ場所が書かれていた。

 13時に駅前に大智さんたちの車が止まっているから、そこで合流するってことね。


「律貴のために、新しいウィッグ買ったんだ。これつけて」

「え? うわっ!」


 いつものボサボサしたものとは違って、今回は本格的だった。


「真面目感でてるやつにしてみた。あとこの伊達眼鏡かけて」

「う、うん」

「おー。イケメンだ!」

「やめてよ。恥ずかしいだろ」

「もう少し髪型整えるぞー」


 立花は器用だから助かる。

 変装が終わった後は、また俺は別人になった気分だった。



「全然時間あるな。よっしゃ、ドライブしよう!」



 そして時間までドライブをした。

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