第7話 告白
剣道部に入るかどうかはもうしばらく待ってくださいと先輩に伝えたら「オッケー!いつでも大歓迎だからね!」と気前のいい返事をもらえた。
彩葉にも伝えると「そっかー、あっでも顔は出してね!」と優しい言葉をかけてくれた。
そして1週間が経った。
未だに部活に入るかの決心はついていない。
今の自分の本当にやりたいことって何だろう、そう考えるとどうしても立ち止まってしまう。
そして昼休み。
外のベンチで彩葉のことを待っていると
「彩葉さん!僕と付き合ってください!」
誰かが彩葉に告白するの聞いてしまった。
私はそれを見て思わずその場から逃げ出してしまった。
どうして彩葉が告白をされてるだけでこんなにも胸が痛くなるのか、どうしてこんなにも彼女のことを考えてしまうのか、どうして。
その後はあまり覚えていない、ただ初めて彩葉から明確に距離を置いた。
彩葉が私といるとあまり良い気にならない人もいる。
なら、私は彼女から距離を置くべきだと、そう考えた。
色付いてきた世界が少しずつ薄れていくのを感じる。
高校で初めてできた友達を失ったからだろうか、もう私には分からない。
ただ今日感じた虚無感はあの日感じたものと似たものだった。
そして放課後、周りの人と話していたら気付けば教室がものけの殻となっていた。で急いで帰りの支度をしていると彩葉が近くに来た。
「今日、部活の見学来る?」
少し不安そうにそう聞いてきた。
「今日はいいかな」
少し距離を置きたい私としては剣道部に行くのはあまり乗り気では無い。
「ね、ねぇ今日どうしたの?お昼からなんか避けられてる気がするんだけど...」
流石に露骨に避けすぎたか、バレてる。
「そうかな?彩葉の周りに人が多いからわかんないや」
少しぶっきらぼうにそう答えて帰ろうと足を進める。が後ろから腕を掴まれ引き止められる。
「ねぇ!どうしてなの!」
「っ...」
「私何かしちゃった?それともお昼一緒に食べなかったのを気にしてるの?あれはちょっと用事があって」
「うるさいなぁ!ねぇ知ってる?私ってレズなの、あなたみたいな女の子が好きなの。もしかしたらこのまま襲っちゃうかもよ?」
「っ...!」
「わかったら離して」
そしてそのまま家に帰った。
完全な八つ当たりだ、ただ彼女が告白されて、そのことに苛立って、そしてその怒りをぶつけてしまった、高校に入ってからここまで楽しく過ごせたのは間違いなく彼女のおかげ。
なのに私は訳の分からない怒りを彼女に...。
それに私がレズだってことも言ってしまった。
これでもうおしまい、むしろこれまでが異常だったのだこんな私があんなにも楽しい生活が送れたのが奇跡だったんだ。
明日からまた虐げられる生活に戻る。
そう、戻るだけ、なのにどうしてこんなにも悲しいのだろうか、どうして涙が止まらないのか、彼女のことを考えるとこんなにも苦しいのか、今ようやく分かった。
私が彼女に恋をしていたからだ。
だからあの時と同じ、いや、それ以上に悲しいし、悔しいんだ。
彼女が告白をされてるのを見てあんなにも苦しかったんだ。
でも、もう私には何も無い。
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