第19話
これは、なんて言うか公開処刑場かな?
冒険者同士を戦わせたりする
楕円形の建物で、屋根は無い。
高い位置に設置された観客席は、楕円形にそってぐるりと舞台を取り囲んでいてどこからでも鑑賞可能だ。
いま、その席には一般市民や、貴族たちが座っている。
そのほとんどの観客達は、農民出身の冒険者達がS級冒険者によって蹂躙され、夢を散らせる様を心待ちにしているのだろう。
「よくこんな場所手配できましたね」
「いやぁ、ほんとなら今日はここで有名な歌劇を上演予定だったらしいんだけど、幸運が味方してくれたみたいで、知り合いがスケジュール調整してくれたんだ。
本当にたまたま歌劇団のメンバーの何人かの都合が悪くなったらしい。
代役も運悪く立てることが出来ずに、公演が延期になったんだと」
そう教えてくれたのは、情報交換会に参加していた一人であるおじさんだった。
「そこに捩じ込んでくれた、というわけですか」
「そういうことだ。ま、その人は俺に恩を感じてるからかなり無理をしてくれた可能性もある」
「恩?」
「うちの実家、【妖精王の涙】って品種の薬草育ててるんだけどな」
「え、あの一定時間内なら死者も蘇生させることが出来るって、有名な?」
あと現代の伝説とも称される、幻の品種だ。
「そう、病院中心に卸してる。
B級品なんかを実家が送ってくれてて、まぁ冒険者稼業してるからそれで薬を自作してたんだよ。
物がモノなだけに売ることは出来ないから、自分で消費してたんだ。
成り行きで、それを使ってその人の娘さんを蘇生させたことがあるんだ。
今回はその縁を最大限使わせてもらったんだ」
もちろん、合同昇級試験のことをイベント関連の企画を仕事にしている人達へリークしたのは俺たち農民だが。
歌劇団の人達にとっては不幸だったが、それは俺たちにとっての幸運でもあった。
冒険者ギルド側、というよりその中にいる農民を差別している人達も、この際だ身の程をわからせてやるとばかりに、この舞台での開催を受け入れたらしい。
そうなるように、別の情報交換会の参加者がわざとギルド内の担当者を焚き付けたというのもある。
焚き付けた人曰く。
『そんな晴れ舞台でドラマティックに農民が活躍したら、今後が明るいですよね!』
と、夢見る夢子ちゃんの演技をしたらしい。
ならそんな期待も夢もぶっ潰す、と無事焚き付けられてるのだから冒険者ギルドの中の人は単純としか言いようがない。
そうそう、舞台が大きくなったことで、話もどんどん大きくなった。
試験官の数が増えたのだ。
と言っても、S級以上なのは変わりないが。
試験内容はこうだ。
時間内に試験官五人を倒すこと。
この倒す、というのは戦意や意識を喪失させる、行動不能にするということをさす。
倒しきれなかったり、制限時間を過ぎてしまえばそこで終わりだ。
そして、試験官全員を倒し、なおかつ一人でも受験者が残り立っていたら全員合格ということらしい。
滅茶苦茶、イージーモードだ。
とても有難いけど。
「しかし、即席のチームワークでなんとかなるもんかね?」
参加者の一人が不安そうに言う。
まぁ、総勢三十人弱の農民冒険者の集まりだ。
やろうと思ってもチームワークなんてそうそう出来るわけはない。
でも、俺は、あえて呑気に返す。
「だから、あれからも何度か集まって打ち合わせをしたんじゃないですか。
仕込みだって十分過ぎるほどです」
合同昇級試験の会場がこのコロシアムに決定した時だって、冒険者ギルドの中の人よりも、こちらの方にはやく情報が来たのだ。
なんなら、このコロシアムでイベントがある度、警備のバイトをしていた人や、その舞台をセッティングする仕事をしていた人だってこちら側にいるのだ。
妙な言い方になるが、地の利はこちらにある。
「もしかしたら、呆気なさすぎてそれが理由で観客達から石を投げられるかもしれませんけどね。
でも、これは実戦ですよ、ルール無用の実戦です。
害獣達がルールを守るなんて、しますか?」
俺の言葉に、他の受験者達が大笑いした。
弱肉強食の自然界に生きる存在を相手にしてきた経験は、伊達じゃない。
そして、この参加者たちはみんな知っているのだ。
出し抜いた方が勝ちで、出し抜かれるのが悪いのだと。
「幸いにして、今回の相手は俺たちを侮っている害獣と一緒です!
農民だからと馬鹿にしている猿達です!
人間の知恵がどんなものか目にもの見せてやりましょう!」
俺の言葉に、雄叫びのような声があがる。
うしっ! いっちょ害獣駆除と行きますか!
しかし、本当に今回の試験官が農民を下に見ている連中で構成されててラッキーだった。
勝利の女神に微笑まれてるんだろうなぁ。
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