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中も外と同様にすっかり荒れ果てて、
蔦や苔が床となく壁となく覆い隠している。
屋根もところどころ抜け落ちている。
穴の開いた天井から、青い月明りが落ちていた。
ずいぶん明るい。今日は満月なのだろうか。
月を確かめようと、屋根から外を見上げたが、
そこには青空が広がっていた。
上空を大きな鳥が渡っていった。
鮮やかな大きな虹が遥か空の向こうまで続いている。
左の頬に涙が一筋伝って落ちた。
虹は、青い空に溶けていった。
部屋の奥から、木が軋むような音が聞こえた。
いぶかしんでいると、天井から差し込む陽光に照らされて
ロッキングチェアが揺れているのが見えた。
誰かが座っているように見える。
少し近づくと、その人は振り向いた。
ように見えた。
それは人ではなく、面であった。
ちょうど人の顔の高さに浮いていた。
卵のような白いおもてには鼻も口もなく
目と思われる所に丸い穴が二つ開いていた。
向こうが見えるはずの眼窩は真っ黒で
何も透かし見ることはできなかった。
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