揺れる光線、黒い泥
あたらし うみ
1
薄い霧に線を描くように木漏れ日が差し込んでいる。
私は、独り林の中を歩いていた。
なぜここにいるのだったっけ?
そうだ、私は泣いているのだ。
鳥たちのさえずりの声に混じって
涼やかな小川のせせらぎが聞こえている気がする。
どこへ行くというわけでもなく、
林の中の道なき道を進んでいく。
木漏れ日は音もなく降りそそいでいる。
ふと、鳥の声が止んだ。
辺りが静寂に包まれる。
小川のせせらぎが大きくなったように感じられたその時、
林の奥から木々を大きく揺らして風が吹いてきた。
私の髪を巻き上げた。
私は思わず目を閉じる。
爽やかな涼やかな風。
私を風が通り過ぎた後。
ふいに夏の音がした気がした。
鉄風鈴の高い音が耳をくすぐる。
なぜ?
いぶかしんで目を開けると、
目の前に朽ちかけた教会があった。
その外れかけた扉は、手招きをするように揺れている。
私は招かれるまま建物に足を踏み入れた。
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