第7話 先輩と告白
「えっと……後輩君。ちょっといいかしら?」
その日、先輩が読んでいた本を机において、俺に聞いてくる。
「はい。なんですか?」
俺も読んでいた本を机に置いた。
「その……この前のことなのだけれど」
「この前?」
「……私達は友達ではない、という話のことよ」
少し恥ずかしそうにしながら、先輩はそう言ってくる。
「あ~……それがどうかしましたか?」
「どうかしましたか、って……あのね! 私はあの後、とても悩んでいたのよ? 本当に私と後輩君は友達ではないのか、って」
先輩は真剣にそう言ってくる。どうやら、本当に悩んでいたようである。
「そんなに悩んでいたんですか」
「そうよ……まったく。あのね。ああいう時はお世辞でもいいから、友達ですよ、って言うのがマナーというか……そういうものじゃないかしら?」
「そうですかね? 逆に嘘を言う方が失礼な気もしますけど」
俺がそう言うと先輩は絶句する。そして、悲しそうな目で俺を見てくる。
「後輩君は……本当に私とアナタが友達ではないと思っているの?」
「まぁ……いや、別に仲が悪いとか、一緒にいたくないとか、そういうことではないですよ。ただ、友達、っていう関係性ではないかなぁ、と」
俺がそう言うと先輩は腕組みをして悩んでしまう。
そんなにどうにかして、先輩は俺と友達という関係になりたいのだろうか?
「……じゃあ、質問を変えるわ。後輩君は、私と友達になりたい?」
「友達に、ですか? まぁ……なりたくないわけではないですけど」
「その中途半端な反応……やっぱり、なりたくないってことではないの!?」
なぜか少し怒り気味に先輩はそう言ってくる。俺は反射的に首を横に振る。
「……じゃあ、正直に言います。俺は先輩と友達という関係にはなりたくないんです」
「え……。やっぱり! 私と友達になりたくないってことじゃない!」
「違います。友達という関係が嫌なんです」
俺は立ち上がった。と、先輩は少し驚いたように反応する。
「ど、どうしたの? 後輩君」
「俺が先輩となりたい関係は、恋人なので」
俺ははっきりとそう言った。先輩は目を丸くして硬直している。
俺はゆっくりと椅子に座り直した。俺が椅子に座ると、先輩が視線だけを動かして、俺のことを見る。
「……え? えっと……あの……後輩君。その……え?」
「二度は言いません」
俺はそう言って、今一度立ち上がる。先輩はまたしても驚いていた。
「帰ります。失礼しました」
俺はそれだけ言って、部屋を出た。部屋を出てから足早に廊下を歩く。
……ついに言ってしまった。
言おうとしていて、おかしな質問が出てしまうという紆余曲折はあったが……。
兎にも角にも、俺はついに先輩に告白してしまったのであった。
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