第2話 先輩と思い通り
その日、読書室に入ると、すでに先輩がいた。
俺が部屋に入ってくると同時に、先輩は身構えたようだった。
「どうも」
先輩は警戒しているよようで、俺のことをいつもより鋭い視線で睨んでいる。どう見ても俺がした質問が原因であることがわかる。
「えっと……てっきり、今日は来てないと思いました」
俺は正直な気持ちを先輩に告げる。
「……えぇ。どうしようか迷ったわ」
「でも、来てくれたんですね」
俺がそう言うと先輩は機嫌が悪そうに俺のことを睨む。
「……そうね。アナタの思い通りになるのは、癪だったし」
「え? 俺の、思い通りって?」
俺がそう言うと、先輩はニヤリと嗤う。
「アナタの魂胆はわかっているわ。私をこの部屋に来ないようにして、この部屋を独占するつもりなのでしょう?」
得意げな顔でそう言われても……俺はそうです、とは答えられなかった。
「だからこそ、あんな質問をして私を困らせた……そして、私を怒らせてこの部屋に来ないようにするつもりだった……そうなのでしょう?」
「いえ。別にそういうつもりではないですね」
俺がはっきりとそう言うと、先輩はキョトンとした顔をする。
「……フフッ。わかっていたわ。正直に言わないであろうことくらい。でも、アナタの本当の狙いをわかった以上、私はいつも通りにこの部屋にくるわよ」
「いや、だから、俺は先輩が処女かどうかを知りたいだけで、別に、先輩にこの部屋に来てもらいたくないわけじゃないんですけど」
俺がそう言うと先輩は悲しそうに俺を見る。
「本当に……違うの?」
「はい。大体、先輩にこの部屋に来てもらいたくないなら、もっと早く行動を起すべきだったじゃないですか。それなのに、結構それなりの期間、俺と先輩、この部屋を共有してましたよね?」
そう言うと、先輩はその通りだという感じで落ち込んでしまった。そして、ゆっくりと立ち上がる。
「……帰るわ」
「あー……えっと。先輩」
「……何?」
「明日以降も、来てくれますよね?」
そう言うと先輩は少し困ったような顔をしたあとで、何も言わずに去っていってしまった。
どうやら、先輩には俺の行動が明確に伝わっていなかったらしい。
俺としては……早く質問に答えてほしいだけなのだが。
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