第4話ー⑥ ウク=イグアス

辺りがざわつき出す。

リタがいち早くその異変に気づき、ソウタに声をかける。


「おい、あれ…」


リタが指差ゆびさした方向には、昨日、東方記念碑公園で見た車が停まっていた。

ソウタは目を見開き、息を呑む。


「警察隊だ!!」 


ほとんどの生徒が興奮気味で正門の前に群がる。

特に昨日の式典によって、三領域連合会はおろかその傘下の警察隊の株は抜群に上がっていた。


護送車から警察隊が3人降りてくる。


(あっ!)


ソウタはその3人の中に、昨日学生寮まで送り届けてくれたアンバーを見つけた。


アンバーも100を超える生徒の群衆ぐんしゅうの中、ものの1秒でソウタを見つける。


朝日を浴びたアンバーの白髪はかつての祖母を想起させる。ソウタはたじろぎ一歩下がった。


(…あの子はいないのか)


そしてもう一人、護送車から女性が降りてくる。

ソウタはアンバーからその女性に目線を移したが、その女性はメラナではなかった。


「ウク=イグアス…!嘘だろ…本物だっ!!」


隣にいたリタが興奮気味でその女性を指差す。


ウク=イグアス。

彼女は金の目と翼を持つ有翼族ゆうよくぞくである。

若干27歳で警察隊長秘書長に就き、警察隊本部隊の一隊長も務めているが、真人族しんじんぞくの生徒が有翼族ゆうよくぞくの彼女に羨望せんぼうの眼差しを向けるのは、その輝かしい経歴はもちろん、種族の垣根かきねを超え多くの人々を魅了みりょうする美貌びぼうを持っているからだ。


いわば警察隊の広告塔である。



ウクはなにやら通話をしているようだ。

しかし、ウクをよく見ようと生徒たちはウクの周りにわらわら寄ってくる。教官諸君もそんな生徒たちを牽制けんせいしつつも、完全に目にハートが浮かんでいる。


ウクは自分が注目されていることに気づく。


ウクは通話中でありながらも携帯電話を左手に持ち替え、生徒たちに向き直った。

右手の指を一直線に伸ばし畳む。綺麗きれいに並んだ指先を、ウクは微笑みとともにおでこに添えた。


生徒たちに電撃でんげきが走る。

生徒たちは即座にだらしない顔をしまい、背筋を伸ばす。

そしてウクの敬礼に対し、各々精一杯の敬礼で応えた。

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