第4話-⑤ 都市伝説?

リタは少し考えたが、やはりソウタが何を言っているか分からない。


「ばあちゃんから聞いたんだ。ブルーエンドが起きる前、人間は1種類しかいなかったって。有翼族ゆうよくぞくとか巨人族きょじんぞくとかもともとは別の世界にいたんだ」


「あー…隕石いんせき落ちた事件だろ?100年ぐらい前の」


リタはようやく合点がいく。

昨日の式典でも発言されていたブルーエンド。

三領域内でこの言葉を知らない人はいない。


102年前に起こったブルーエンドによって、三領域は現在の姿とあいなった。

現在は、当時を知る者は数えるほどだが、未だ色褪せることなく、その惨劇さんげきは語り継がれている。


「違うよ。青い光だ。

今僕らがいる真人領域と有翼領域、巨人領域の3つの領域はもともと別次元で存在してたんだ。

だけど領域の間に壁みたいのがあってお互いが見えてなかった。その壁をさ、青い光が溶かしたんだよ。目の前がバーって青く光ってる間にさ!だからブルーエンドなんだよ」


リタはどこか呆れがちに答える。


「お前、そんな都市伝説信じるタイプだったか?」


「納得できない?」


「はっ無理だろ!

壁とか別次元とか意味わかんネェ。

一晩で海だった場所に山が生えたとかで世界地図の書き換えがあったって授業で聞いたけど、考えてみろよ?普通ありえないだろ!?

 …隕石が落ちたってならまだ納得できるよ」


ソウタはムッとして答える。


「クレーターなんてどこにも見つかってない!津波も地震だって何にも起きてない!当然だ!何も変わってないからだ!元々あったものが見えるようになったんだけだ」


「お、お前なぁ…」


「そ、れ、にっ!」


ソウタはリタの正面に回る。


「見えてないだけでさ、僕らの隣りにも…4番目の種族がいるかもしれないよ」


ソウタはニタァと笑いながら、空中で、その誰かを探るように掌を動かす。

リタは顔をこわばらせた。


「こ、怖いこと言うなよ!」


「ビビってる〜笑」


「ウルセェ!」


ソウタとリタが騒ぎ立てる。

そんな二人の脳天にゲンコツが一発ずつ入った。


二人はその場にうずくまり、そしていの一番にソウタが叫んだ。


「ったぁー!なにするんですか、教官!」


陸上課一回生教官ウィリアム=ダダン。

黄金色こがねいろ四肢ししに加え、思わず襟元えりもとの布に同情してしまうほどの太い首。絵に描いたような暑苦あつくるしい男だ。


愛称あだなはウリボー教官。

走り出すとまず曲がらない。



「なんですかじゃねぇ!久々に来たらペラペラ喋り倒しおって」


リタが勢いよく質問する。


「教官!ブルーエンドの正体は隕石ですよね?」


「いや、違う!青い光だっ」


ソウタとリタは睨み合う。

ウリボー教官は再び怒鳴りつける。


「何年前の話をしてんだ!いまは走りこみだぞっ!」

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