第3話-④ 巡る

「…頼むよ」


メラナはボソッとつぶやいた後、残りの演唱えんしょうを叫ぶ。


「五光!こいこい!」


メラナの周りをただよっていた鉄札てつさつの帯が急変する。

鉄札は刃を立て、メラナの両腕にへびのように巻きつき、締め上げ肉をえぐった。

メラナの鮮血せんけつ鉄札てつさつを赤く染め、落ちたままの赤い球体にわずか、黒い電流が走る。


すると、腕に巻き付いている鉄札てつさつはしから

2枚、ユラユラ離れメラナの眼前に浮遊する。

ソウタの脳内では、先ほど星の子の首元に鉄札が刺さった光景がよみがえる。


「やめろっ!」

「!!」


ソウタはセティをくぐり、メラナに向かって走り出した。


(‼︎…まずい)


セティはワンテンポ遅れてソウタを追う。


しかし何よりも早く、2へん鉄札てつさつはメラナの首をかき切る。


…切ったかように思えた。

鉄札てつさつの刃がメラナの皮膚ひふに到達する寸前、目の前から跡形もなく消えた。

それを合図に、メラナの腕に巻き付いてた鉄札の帯も力が抜けたかのようにジャララと音を立ててメラナの足元に落ちる。


そして飛び出してきたソウタを、

そのままメラナが受け止める。



「心配しないでって言ったでしょ?」


メラナはソウタにしか聞こえない声でささやく。

メラナは穏やかに笑っていた。

なぜかソウタは泣きそうになる-



一瞬の沈黙のあと、メラナが叫んだ。


「アイゼンっ‼︎」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る