第3話-② カッパ総監とライラ後半戦

「何だと?」


ヘデンが怪訝けげんそうに聞き返す。


ヘデンはメラナの説明に集中しようとするが、

ギャーギャーわめきながらまとわりつくライラに気が散ってしまう。

ヘデンは、ライラのおでこに手を押し当て、ライラをどかそうとするが、それは悪手だった。


「もー踏んだり蹴ったり。今夜時間とれー」


メラナは電話口で破壊音を聞いた。


「しんっじらんない!おでこを触るなんて!この変態ガッパが!」


続けてライラの金切り声。

そしてブッと電話が切れてしまった。


ライラは巨人きょじん族の娘である。


巨人族といっても背丈せたけ極端きょくたんに高いのではなく、種族しゅぞく特有とくゆうの身体能力の高さに加え、けものの耳など他生物の性質を持つ合わせる者たちを総称してそう呼ぶのだ。巨人族の中でも、細かく種族が分かれていて、ライラは龍人りゅうじん族に当たる。

そして巨人族に共通するのはひたいに第三の目を待つことだ。

ひたいの目は視力を有するタイプやツボ、センサーの役割を有するタイプ様々あるが、いずれも彼らにとっては急所である。


ライラは図らずもひたいの目をてのひらで圧迫され、衝動的にヘデンを投げ飛ばしてしまった。


ヘデンが投げ出された先には書棚が鎮座していて、ぱっくり破壊、極め付けにはヘデンお気に入りの時計もゴトンの鈍い音ともに床に打ち付けられ、壊れてしまった。


(よせばいいのに…)


メラナは呆れていた。

当然メラナには現場の様子を知るよしもないが、おそらくライラがヘデンに何かしらの攻撃をしたため、電話線が断線したのだろう。

メラナは用件を文面で送るため、メールを打ち込み始める。


手を出したライラがもちろん悪いのだが、ヘデンにもがあるだろうとメラナは推察すいさつした。

ヘデンは人望もあり信頼できるが、わざわざ電話帳の名前を「カッパ総監」に書き換える程度には嫌なヤツだ。


するとヘデンから折り返しがかかってくる。

メラナは少し迷ったが応答することにした。

明らかに不機嫌な低い声が聞こえてくる。


「8時だ。遅れずに来い」


「…はい」

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