第2話-④ メラナの殺意

メラナは二度目のねんを押す。

ソウタが反論はんろんするより早く、メラナは石碑せきひを飛び出し、一瞬で星の子の背後に回る。


そして、先ほど地面にばらいた鉄札てつさつを星の子の首筋くびすじに突き刺した。


「ギャアアアアア!」


星の子にも痛覚つうかくがあるようで耳をつんざくほどのさけび声をあげる。


星の子は首にき付いているメラナを引きがそうとするどい爪がついた左腕を上げようとする。が、持ち上がらない。

メラナが首にからみ付く一瞬のあいだで、星の子の左肩ひだりかたの関節を外していた。



「…静かに。怖くないから」



メラナは幼子をなだめるようにささやくが、

星の子を見つめる目には温度が感じられず、

メラナの言葉を合図あいずに、星の子は瞳孔どうこうをゆっくり開かせ、動きも徐々じょじょに固くなり、やがて固まった。


静かで強烈きょうれつ殺気さっきだ。

慈悲じひぶか愛溢あいあふれた聖母マリアが

わずらわしさをあらわにするとしたら、

おそらく今とそう変わらない。


彼女はおだやかな表情をピタリと張り付けたまま優しく星の子の命を根こそぎみ取るだろう。

彼女は、花畑に生えてきた雑草にいちるの愛をこぼしつつ跡形あとかたもなく排除はいじょする。

 

ソウタはメラナを案じて、なおも飛び出そうとしていたが、その場から根が生えたように動けなくなった。いや、動いてはいけない。



「ハナフダ式鉄札術しきてつさつじゅつ…ひつき、赤短あかたん…」



メラナの声に反応して、

先程ばらいた鉄札てつさつがユラユラと宙に浮いた。


黒かった鉄札てつさつは真っ赤に染まっている。

それらの鉄札てつさつが全て星の子に狙いを定めた。



「こいこい」



風を切り、鉄札てつさつが星の子の首に食い込んだ。

星の子の喉元のどもとをザクザク切りつけ

鉱石すらも容易たやすくだく。


鉄札てつさつくだかれた箇所かしょから星の子はくずれはじめ、

肉や骨は赤い粉煙ふんえんに、

鉱石だったものは火花のように弱々しくきらめき、やがて元通りの球体に収束された。


コツンっと音を立てて赤い球体は地面に落ちた。

メラナはそれを拾い上げる。

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