第2話-③ 心配しなくていい

「あれ?その手…」


メラナはソウタの指が切れていることに気づく。

ソウタはハッとしてすぐに背中にかくす。


「これはちがう!………だ、大丈夫です。何もないです」


メラナはじっとソウタを凝視ぎょうしした。

ソウタはドキッとする。


「あなた…」



すると、うずくまっていた星の子がえた。

メラナはソウタに身体をむけたまま、一瞬、目線を左にすべらせた。

そしてメラナはソウタに指示を出す。


石碑せきひうらに隠れて」


「え…でもっ―」


メラナはソウタを無理やり立たせ背中を押す。

メラナの力が思いのほか強く、ソウタはたおれこむように石碑せきひに手をついた。


「っ…危ないよ!逃げなきゃ!」


ソウタは叫んだ。



星の子は明らかにいきり立っているようだ。

星の子の全身に抜きんでている鉱石が危険信号のようにギラギラかがやく。

しかしメラナはソウタの呼びかけに答えず、

そのかわり着ていた上着をぶっきらぼうにげてよこす。


メラナは右ポケットから断面だんめん半円状はんえんじょうの黒いつつのを取り出す。

そのつつふたけると、赤く縁取ふちどりされた黒い鉄札てつさつが何枚もばらばら落ちた。


「7…いや8か」


星の子が左腕を振り上げる。


「危ない!」


ソウタはメラナを助けようと飛び出す。

星の子の腕は、その振りかぶる強さのせいかビュービューと乱気流らんきりゅうまといながらメラナの頭を一直線いっちょくせんに狙う。

しかし、星の子の腕が地面をたたき割る頃には、ソウタは再びメラナによって石碑の裏に押し込められた。


(あれ?僕、たしか…)


「あーあ。記念碑こんなにして…始末書2枚目かぁ」


メラナはボソボソと気怠けだるそうにつぶやく。

一方またも獲物えもの仕留しとそこなった星の子は辺りをキョロキョロしている。


ソウタはメラナを助けるために石碑から飛び出したはずが、また元いた場所に押し込められたと理解するまでに数秒かかった。


「な、んでー」


「私の心配はしなくていい。いいって言うまでここで待ってて」

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