第1話-⑥ 黄昏時

ソウタは石碑せきひかってあるき出す。



今日きょう墓参はかまいりのために式典しきてんをサボった。

せめて…



石碑せきひまえまでたどりき、ソウタはアスターの花を一輪いちりんそなえる。

そして片膝かたひざをつき目を閉じて合掌がっしょうする。



手を合わせながら、やさしかったははおもった。

仕事しごといそがしくかぞえるほどしか会えなかったちちの、あせにまみれたうでなかぬくもりをおもい出した。


でも…



「アストラは…いなくなった…よ。平和へいわになった…んだ、……て」


なみだが止まらない。

一体いったいどんな顔でつたえればいいんだ-



           ☆




かたむき、ソウタのかげがゆっくりびていく。

ソウタははっとわれかえった。あたりは夕暮ゆうぐどき。どうやら石碑せきひにもたれて、ねむってしまったようだ。 



(やばい…点呼てんこ…)



ソウタはいそいで身支度みじたくをする。

夕刻ゆうこく点呼てんこまでには学生寮がくせいりょうもどらないと教官きょうかんから大目玉おおめだまらう。



わ…)



そこで気が付いた。

昼間ひるまにはなかったはずの黒いたまがソウタの目の前にころがっている。

 


(こんなのあったか?)



ソウタはゆっくり立ち上がり、黒い球をもっとよく見ようとちかづく。



大きさはこぶしだいぐらいはあろうか。

ソウタはその黒い球をのぞんで、おどろいた。


無数むすうほしのような砂粒すなつぶたまの中で渦巻うずまいている。

思わず手をばそうとしたその瞬間しゅんかん

その黒い球が音を立ててれた。 


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