第1話-③ 青



 「われわれは二度にど絶望ぜつぼうあじわっている」


軍服ぐんぷくの男は平然へいぜんつづけた。


一度目いちどめはブルーエンダ。今の世代せだいでは当時とうじ経験けいけんしたもの数少かずすくないだろう…


 そして二度目にどめはアストラの出現しゅつげん



競技場きょうぎじょうはおろか中継先ちゅうけいさき画面がめんにまで大勢おおぜい人々ひとびとがブーイングをびせる。

「ふざけるな」やら「ひっこめ」やら、てすすりまでこだまする。



-しかし競技場内きょうぎじょうないは、

  つぎ瞬間しゅんかんうそのようにしずまりかえった。


地面じめん並行へいこうかかげた男の右手みぎてかげに、

めきったあおい目がにらんでいたからだ。



いやしかし、本当にそれだけだ。


だが、その青は誰も見たことがない色。

見てはいけなかった。

この目を見てよい瞬間しゅんかんいてあげるとするなら

それは

 今際いまわふち世界せかいから色がえるほんの一瞬いっしゅん




かみさま…?」


誰かがそうつぶやいた。






男はつづける。



混沌カオスという名の濃霧のうむつつまれたつぎはぎの大陸たいりくに、あらたな秩序ちつじょきずくべく、われわれは幾度いくどとなく交渉こうしょうをくり返した」


男の背後はいごにあるスクリーンが点灯てんとう

人々ひとびとだまっていている。


文化ぶんか価値観かちかんのくいちがいはあれど、みな同じ方向ほうこういていたのだ。混沌カオスからけ出すシリウスがひかりさきへ」


海辺 

 霧立きりためる山陵さんりょう

  三角形さんかくけいのテーブルをかこ交渉こうしょうひろげる

                 政治家せいじかたち。


その、さまざまな参考さんこう画像がぞううつし出される。

そして、スクリーンは暗転あんてんした。



「しかしアストラはふたたびわれわれを絶望ぜつぼうとした」


   

  観客席かんきゃくせきから悲鳴ひめいがる。

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