極光の七星神 ～最強のURキャラになったはずなのに、なぜか悪役のうえに味方がポンコツ美少女ばかりなのだが～

第60話 レベルカンスト

　ジャスティスの突破力で迷宮をガンガン進む。俺達のレベルも上がっているので敵なしだ。ひたすら敵を倒し効率よくレベルを上げるのみ。

　しかも、こちらにはミウの高位神聖範囲復活（セイクリッド・エリアリザレクション）があるのだ。もはやバグレベルに高位神聖魔法を連発するミウ。意味が分からない。

　こうして経験値を大量に獲得できる最強クラスのモンスターを狩っていった。

　アークポイズンスライムキングが現れた。

「どっりゃああああああっ！」

　ズシャズシャズシャッ！

　ジャスティスの六本の剣がスライムを切り裂く。神器六剣による同時攻撃だ。スライム種の中でも最強っぽいモンスターだが、俺達の敵ではないだろう――と、思ったのだが。

　ギシャアアアアアアァァァァーッ！

　じゅるじゅるじゅるじゅる――――

「おい、ジェイド」

「何だ？」

　珍しくジャスティスが俺を呼ぶ。

「お前の魔法で倒せよ。このスライム、再生能力がマジでヤベぇわ」

　見ると、ウネウネと蠢（うごめ）く毒々しいスライムが、凄まじいスピードで細胞分裂の如く広がって行く。侵食剣ミストルティンで斬ったところも、侵食されるより早く部位を切り落として再生させていた。

　ズシャ！　グシャァァ！　ズバババッ！

「おい、早くしろよ！　きりがねえだろ！」

　ひたすらジャスティスが斬り続けているが、凄まじい再生速度で復活するスライムキング。本当にきりがない。

「あいつは厄介だな。少しでも部位が残っていると一気に再生される。全部まとめて焼き尽くすとかしないと」

　俺の言葉に目を輝かすララ。嫌な予感がした。

「じぇ、ジェイドよ、我の極大魔法で一網打尽に――」

「待て、ララ。早まるな」

「止めるなジェイドよ。わ、我も活躍してだな……」

　それはフラグだ。ララが極大魔法をぶっぱなしたら、迷宮ごと大破壊され生き埋めになりそうな気がする。

「ララの極大魔法は後にとっておこう。ララには期待してるから」

「ジェイド♡　そ、そんなに、わ、我に期待を……」

「おいっ！　イチャイチャしてんじゃねぇぇぇぇーっ！　早くしやがれゴラッ！」

　ジャスティスが痺れを切らしている。決してアークポイズンスライムキングの毒で痺れている訳ではない。

「よしっ、さっきのレベルアップで覚えた魔法を行くぜ！　暗黒神の力よ、彼の地より来たりて灼熱焦熱の地獄を顕現せよ！　ジャスティス下がれ！」

「うるせぇ！　俺に指図すんな！」

　俺の合図でジャスティスが後方へと飛ぶ。

「くらえっ、暗黒大焦熱地獄（ファイナル・グレーターヘルファイア）！」

　ズシャアアアアアアアアァァァァァァー！！！！

　アークポイズンスライムキングの上に真っ白な太陽のような火球が出現する。やがてそれは暗黒のオーラを纏（まと）って周囲を飲み込むと、超超高温の地獄にスラキムキングを引きずり込んだ。

　全てを消滅させるかのように塵となり消えて行く。

　シュバァアアアアアア――――

　ジジッ、ジジジッ、ジュバ、ジュババッ！

　静寂を持ち戻した迷宮内に、アークポイズンスライムキングの姿は完全に消えていた。周囲の床や壁も球体に削られ、空間ごと消滅したかのように。

「やった、この魔法は使えそうだ」

　超再生力を持つスライムキングを完全に消滅させる炎魔法。実戦で役に立つだろう。

「ジェイドさん、あれ！」

「ああ、アイテムが……」

　――――――――――――

　レベル96になりました。

　アイテム

　【スライムキングの錫杖】入手！

　――――――――――――

　ミウが言ったようにレアアイテムをゲットした。スライムキングの中から出てきたようだ。

「レアアイテムか……あれを試してみるか」

「あれって何ですか？」

「ミウ、リザレクションの準備をしておいてくれ」

「は、はい。分かりました」

「EXスキルを試してみる。失敗したら死ぬかも？」

「えええっ……」

　ミウが引いているようだが、実戦前にEXスキルを試さなくてはならない。俺はスライムキングのレアアイテムを五大原初魔宝玉（アルティマオーブ・イビル）を食わせることにした。

「い、いくぞ。成功してくれよ……」

　キュゥゥゥゥーン！

『EXスキル発動条件確認！　暗黒皇帝リゲルEXスキル【万物輪転】！　スライムキングの錫杖を取り込みました。能力を合成し新たなスキルを生み出します』

「ぐはああっ！　あ、ああ……目の前が暗く…………」

　バタッ！

　――――――――

　――――――

　――――

「――さん、ジェイドさん！　ジェイドさん、しっかりしてください！　起きて！　ジェイドさん！」

「ジェイド！　起きろぉ！　死ぬんじゃない！　まだ返事を聞かせてもらってないぞ！」

　あれ……？　ミウとララの声が聞こえる……お、俺は……はっ、そうだ！　俺はEXスキルを使って。

　ガバッ！

「あ、あれ？」

　体を起こすと、涙を流したミウとララが俺の顔を覗き込んでいる。

「目を覚ましました。ジェイドさん」

「ジェイドぉぉ～っ！」

　二人がギュウギュウと抱きついてくる。

「あ、ああ、そうか、EXスキルの代償が術者の生命だったな。それで倒れていたのか」

「もうっ、ジェイドさんって何回死ぬんですか！　心配させないでください」

「そうだそうだ、ジェイドは死に過ぎだ！　前もレベル上げの時に死にそうだったではないか」

　前に死にそうだったのは、ミウとララの魔法が直撃したからなのだが。まあ、それは黙っておく。

「そ、それで新しいスキルは」

　ステータス画面を見ると、新スキルとして【気象操作（ウェザーコントロール）】が表示されている。

「確かに凄い魔法だけど、想像していたようなのじゃないな。もっとラスボスに打ち勝つような凄いのを期待していたのだけど……」

「おい、超強ぇえスキルが手に入るんじゃねーのかよ」

　所在なげにウロウロしていたジャスティスが声をかけてきた。

「ああ、そのはずなんだけど……」

　あらゆる魔法力を帯びた物質を取り込み合成し進化……あらゆる……そのアイテムが強ければ強い程、新たに作られるスキルも強いのか。まさか、いや、もしかして…………。

「ミウ、俺が倒れていたのはどのくらいだ？」

「えっと、一分くらいだと思います。リザレクションで息は吹き返しましたから」

　そうか、そのくらいなら……俺の考えていることも……でも、これは最終戦でないと試せないな。

「よし、とりあえず実験は成功した。EXスキルの使い方が分かっただけでも収穫だ。あと少しだ、先を急ごう」

「はい、って、あれ……」

　フラフラ――

　ミウの足元がふらつき倒れそうになる。

「ミウ、大丈夫か？」

「は、はい……ちょっと疲れただけです」

　もしかして……

「高位神聖魔法を連発したからなのか？」

「で、でも、自身の体力（HP）も魔力（MP）も回復していますから」

　ミウが高位神聖範囲復活（セイクリッド・エリアリザレクション）で全開複するのだと主張する。

「いくら体力（HP）と魔力（MP）が全開複しても、精神力や心がすり減るのかもしれない。例え魔力（MP）が全開複しても、高位神聖範囲復活（セイクリッド・エリアリザレクション）を連発するのは……」

「だ、大丈夫ですよジェイドさん。私も皆さんの役に立てるのですから。が、頑張ります」

「でも、無理はするなよ……」

　ミウのことが心配しながらも、俺達は原初の裂け目（ギンヌンガガプ）の迷宮最深部へと到達した。別ルートを周っていたライデン達とも合流する。

　迷宮の底には広大な空間が存在し、その裂け目は永遠に地面の底に続いているようだ。裂け目の底には数万もの最強種モンスターと、それらを率いる迷宮主が待ち構えていた。

　そして――――

「宇宙開闢（かいびゃく）の光よ、星の誕生よ、三千世界より来たりて十万億土へと帰れ！　宇宙大爆発（ビッグバン）！」

ピカーーーーーーン！　ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォーン！！

　何かもう全てを超越したかのようなララの極大魔法が炸裂した。最深部にいた迷宮主を含め数万のモンスターが瞬殺され、阿鼻叫喚の咆哮と共に裂け目の底から爆炎と衝撃波が噴き上がる。

　どうしても活躍したいと言うララに花を持たせたのだ。ただ、この迷宮のモンスターは全て狩り尽くしてしまったのかもしれない。

　その代わりに、俺達のレベルとスキルがカンストした音声が鳴り響いた。