第54話 能力解放
暗黒皇帝専用武器、
ステータス画面に詳細が表示されている。
「ミウの
何かしたか? ガルムに肩を叩かれ、ヘルとフレースヴェルグと握手をして、ファフニールに背中をトントンされたような……。
そうかっ! 六大魔王との接触かもしれない。その前にはニーズヘッグに腹を刺されて、ラタトスクにも爪で刺されて……って、刺されてばっかだな。
とにかくEXスキルを見てみよう。
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暗黒皇帝EXスキル
あらゆる魔法力を帯びた物質を取り込み、原初の地
※ただし、能力合成には術者の生命を使用。
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すげぇ! あらゆる物質を取り込むって、やり方によってはとんでもないスキルを作り出せるのでは。
いや、まて……術者の生命を使用って……このスキルを使ったら死ぬのか? まるで諸刃の剣じゃないか。
俺は不死身だから大丈夫だよな……
いや、やっぱりミウがいる時に使おう。死にそうになったらミウのリザレクションで。いきなり即死なんてないよな……。
俺がステータスを確認し終わり、ピリカが黄金ドクロを再生したところで、慌ただしく魔族の兵士が部屋に入ってきた。
バタン! ガタガタ――
「たたた、大変です、魔王ヘル様」
部屋に入るなりイスに足をぶつけて顔をしかめながら兵士が報告する。
「て、敵が我が領域に侵攻してきました!」
部下の報告を聞いた魔王達が、顔を見合わせた。
「ど、どこから……またアースガルズ? それともヴァナヘイム……」
困った顔をしたヘルが言った。
「そ、それが、あらゆる方角です! 南方からヴァナヘイム軍が、西方からはアルフレイム軍が、東方からニザヴェリル軍が、東の海の向こうには
聞き終わったヘルが絶望的な表情をしている。
「ガァァァァァァーン! どどど、どうするべ! もうオシマイだぁ!」
オロオロするヘルの首根っこを捕まえてガルムが吼える。
「グガアアッ! 俺達がそれぞれ向かって戦えば良いだけだろが!」
「そ、それはそうだけど……」
「ワシら四魔王で四方を守ればよかろう」
フレースヴェルグが話に入ってきた。
「ファフニールがニザヴェリル軍を、蛇娘がアルフレイム軍を、ガルムがヴァナヘイム軍を、ワシが
「ガルルッ! おう、任せろ!」
「あーしがいれば百人力、いや千人力だし!」
「えーっ、めんどい……うちも行くの」
ガルムとニーズヘッグはやる気だが、ファフニールは面倒くさがっている。
くっ、戦争が本格的に始まってしまうのか。何とか避ける方向で動いていたのに。それだけラタトスクの動きの方が速かったのかよ……。
「あの、とりあえず戦闘を避けるようにできないか? 国境線で睨み合い
俺の言葉に、フレースヴェルグの顔が険しくなった。
「おいボウズ、おぬし勘違いしてはおらんか? ワシが認めたのはボウズだけじゃ。それ以外の人族まで認めた訳ではないぞ」
「それは……」
「それに、我らの領土に攻め入ろうとする敵に、何故温情をかけてやる義理がある? 攻め入る敵は撃退するまで。それともボウズの国では、攻めてくる敵に『ようこそお越しくださいました』とでも言うのかの?」
フレースヴェルグの主張に、何も言い返せなくなってしまう。確かに敵国が攻めてきたのなら戦うしか選択肢はない。
うっ、元世界の日本が平和ボケして『遺憾』しか言わないから麻痺してたけど、普通は侵略行為には戦うのが世界の常識だよな。
しかし、これはマズいぞ。このまま大戦争になれば、本当に世界の終焉が。
「じゃ、じゃあ、皆よろしく頼む」
ヘルがそう言うと、四人の魔王は部屋を出て行った。それぞれの軍を引き連れ侵攻する周辺国と戦うために。
ガタガタガタ――
バタンッ!
部屋の中が俺達だけになると、ヘルが俺に近付いてきた。
「ジェイドとか言ったかな。本当にボクをアースガルズの王都に連れて行って良いのかい?」
「えっ、そうれはどういう……」
ヘルは、どういう意味で聞いているのだろうか?
「ボクが王都に行くってことは、王都に転移魔法のセーブポイントを作られるということだべ。この世界で転移魔法を使える者は数名しかおらぬ。それだけ上位の究極魔法なんだ。神の使徒たる七星神の中に何名か、そして元神であるボク。あと、ラタトスクも次元跳躍を繰り返し似たようなことが可能だ」
転移魔法のセーブポイント……つまり、次からは突然王都のど真ん中に魔王が現れるのが可能になるのか。確かに転移魔法はチートスキルだからな。そんなにポンポンあちこちに転移されたら困るよな。
でも……
「ヘル……あなたはさっき人族と争いは望んでいないと言っただろ。俺はそれを信じたい」
「ジェイドはお人好しだな。魔王が言った口約束を信じちゃうのかい?」
ヘルが真面目な顔になった。
「確かに信用はできない。闇雲に信用していても裏切られるだけだろう。でも、俺達七星神がこの世界に来たということは、確実に世界の終焉が近付いているんだろ。それを食い止めるには、強い力を持つであろう魔王ヘル、あなたが必要だと思うんだ」
「うっ……ボクが必要……ふっ、ふひっ、いつもディスられてるボクが必要……」
ヘルの雰囲気が若干キモくなる。やっぱり誰かさんに似ていて親近感を持ってしまいそうだ。
「そ、それに、王都には美味しいパンケーキの店もあるし、ヘルも美味しいスイーツでも食べれば――」
「パパパ、パンケーキだとっ!」
急にヘルが食い付いた。
「も、もしかして、タピタピ何とかティーもあるべか?」
「タピタピ……タピオカかな?」
「それだっ!」
「あ、あるんじゃないかな?」
「行く!」
ヘルが即答した。
ええっ、パンケーキとタピオカに釣られるのか? 腹ペコ魔王なのか?
「そ、その、ジェイド、もう一つだけ懸念があるのだけど……」
ヘルが神妙な顔になる。何か他に気がかりなことがあるのだろうか。
「ボクが王都に着いた途端に、ボッコボコにされたりしないべか?」
「えっと、それは……あるかも? 特にライデンとか」
「あるのかいっ!」
ライデンが『魔王は滅殺だっ!』とか言い出しそうだな。いや、確実に言う。しかも、あの正義マンのジャスティスを解凍したら、『俺様が悪を成敗だぁぁーっ!』とかなりそうだろうし。
「だ、ダイジョウブダイジョウブ……俺が止めるから」
「急に行くのが不安になってきたべ……」
俺の返答が棒読みだったからなのか、パンケーキで上がっていたヘルのテンションが下がってしまった。
「だ、大丈夫だよ。俺が何とかするから」
不安な顔のヘルをなだめて王都グラズヘイムに転移することになる。ジャスティスを解凍し、扇動されている各国の誤解を解く。そして、魔王ヘルと共に停戦を呼び掛けるのだ。
これで大戦争を回避できるはずだと思っていた。しかし、俺達はラタトスクの目的を見誤っていたのだと思い知らされるのだった――――
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