第49話 七星神全員集合(一部氷漬け)
応接室の扉を開けると、知らない少女がライデンに捕まって暴れていた。
二人には体格差があり、長身のライデンが少女の襟首を掴んで持ち上げているので、少女は手足をバタバタさせているだけだ。もう、それだけ見ただけで、何が起きたのかは大体想像できてしまった。
「ライデン、無理やり連れてきたのか?」
俺の問い掛けに、自信満々の顔でライデンが答える。
「ああ、時間が惜しいからな。手短に説明して連れてきたぞ」
連れてきたというよりは連れ去ったという方が正確な気がするが……。もう説明して仲間になってもらうしかないだろう。
その少女は小柄だった。身長は140センチないくらいだろうか。ゆるふわなウエーブがかかった黄色い髪に、幼い感じの顔つき。大きな目がクリっとしていて可愛らしい。
長身で筋肉質なライデンとは正反対だ。
「あの、うちのライデンちゃんが手荒な真似をしてすみません」
とりあえず謝っておく。
「おろせぇ~っ!」
小柄な少女がジタバタして話を聞いていない。
「ほら、ライデンちゃんも下ろしてやれよ」
「いいのか? 逃げられるかもしれないぞ。あと、ちゃんとか言うな」
ライデンが掴んでいた手を放すと、少女が凄い剣幕で捲し立て始める。
「もうっ、一体何なんだキミ達は! 失礼にもほどがあるぞ。まっくもうっ!」
「ごめん、ライデンちゃんは脳筋だから。こんな小さな子を連れてきちゃうなんて……お嬢ちゃんは小学生くらいかな?」
俺の問い掛けに、少女の顔が見る見る赤くなり怒りの表情になる。何か問題発言でもしてしまったのだろうか。
「しょ、しょ……小学生だと……」
「あっ、ごめん、中学生だった?」
「ぐっ、ぐぉぉ……」
えっ、何か怒らせるようなことを言ったかな?
「わ、私はこれでも24歳だ! キミよりお姉さんなんだぞっ! 立派なレディーだ! 失礼な!」
どこかで聞いたようなセリフを少女が言う。そういえばミーニャの姿が見えない。
「えっと……大人でしたか。すみません」
俺が対応に困っていると、ライデンが火に油を注ぐようなことを言いだした。
「がははっ、私と同い年なのか。とても見えないな」
長身で大人っぽいライデンと同い年ということもあり、更に少女……もとい、女性の機嫌が悪くなってしまった。
「この女ムカつく」
「ライデンちゃんはこういうヤツだ。諦めてくれ」
「で、結局のところ私は何で連れてこられたんだ?」
「それはだな……」
俺が女性と話していると、待ちぼうけをくらっていたマサトラが部屋に入ってきた。
「ジェイド君、そろそろ自己紹介してもいいかな?」
あっ、忘れてた――――
◆ ◇ ◆
全員イスに座り、エルフリーデが来るのを待っている。揃ってから新メンバーを紹介することになったのだ。
ガチャ!
「皆様、おまたせしましたわ!」
ハイテンションでエルフリーデが入室する。相変わらず元気な王女様だ。腕の中にはミーニャを抱いていた。
「フニャー! 御主人、会いたかったです」
エルフリーデの腕から抜け出したミーニャが、俺に抱きついてゴロゴロする。まるで、ペットホテルに預けていたペットが、久しぶりに飼い主に会った時のような歓迎ぶりだ。
「どうしたミーニャ?」
「ニャニャッ! もう御主人の側を離れないです」
「わたくしは何もしておりませんわよ」
ミーニャの言動から、エルフリーデに何かされたように見えるが、本人は否定している。まあ、何となく理由は分かっているのだが。
「あの、エルフリーデ、ミーニャを可愛がるのはいいけど、余り撫で過ぎるのもダメですよ。ストレスがかかちゃうから」
「そうなんですの? これからは気をつけますわ」
注意するとエルフリーデが聞き入れた。これでミーニャへの過剰ナデナデを控えてもらえれば良いのだが。
全員が揃ったことで自己紹介を始め、最後に連れてこられた女性の番になった。
「私はピリカだ。天宮神ポラリスの名を持つ錬金術師だな。詳しいことはステータスを見てくれ」
ピリカのステータスを読み取る。
――――――――――――
名 前:ピリカ
レベル:42
錬金術師レベル:3
ステータス
筋 力: 320
攻撃力: 150
魔攻力: 880
防御力: 340
素早さ: 690
知 性:2220
魅 力: 860
スキル
【天宮神レベル3】
【術式展開】【魔力混合】【物質解析】【物質分解】【物質錬成】【自動人形錬成】【ゴーレム錬成】【人造人間錬成】【創造】
【鑑定】【探索】【空間転移】
専用武器:
――――――――――――
「凄い! 錬金術師なんだ。ゴーレム錬成とか夢が膨らむぜ!」
「そうだろうそうだろう」
ピリカが自慢気に頷く。
「自動人形と人造人間はどう違うんだ?」
「
「おおっ! 凄い! じゃあ、物質錬成と創造は?」
「私が知っている物を創り出したり複製を作ったりするのが物質錬成。この世の物理法則を無視したような、存在しない技術までも生み出してしまうのが
腕を組み小さな胸を張ってピリカが反り返っている。小さな子供が自慢しているようで可愛い。
「も、もしかして、壊れた物も再生できるのか?」
「ふふんっ、私にかかればお茶の子さいさいであるな!」
「付き合ってください!!」
ドッカァァーン!
俺の発言で、一部の女子が慌ててイスを転がした。
「ままま、待ってください! ジェイドさん、ロリコンだったんですか!」
「まてぇい! ジェイドよ! 子供に手を出すとは見損なったぞ!」
ミウとララが俺に迫る。完全に勘違いしているようだ。
「いや、そういう意味では……」
俺の言葉を聞く前にララに襟を掴まれてカクカクされ、ミウはピリカの方に迫った。
「ピリカちゃん、私がエッチなジェイドさんから守りますからね」
「おい、私は24歳……」
話を聞かずに暴走するミウが、ピリカの眼前にグイグイ迫り、突き出た迫力の巨乳がぷるんぷるんしている。
「おい、この女もムカつく」
ミウの巨乳を顔に押し付けられそうになりながら、ピリカが文句を言う。胸が当たらないように後ろに仰け反りながら。
「ミウに悪気はないんだ。たまに巨乳を押し付けてくるけど、不可抗力だと思ってくれ」
「ジェイドさんに押し付けてるのはわざとです!」
「やっぱりわざとなのかよ!」
ミウが自らバラしてしまった。やっぱりわざとか。ただ、寝ている時はリアルに寝相悪いだけの気がするが。
「はっはっはっ、これは愉快なパーティーだな」
皆のやりとりを聞いていたマサトラが笑う。
「まったく、けしからん。ハレンチなパーティーで恥ずかしい限りだ」
ライデンが他人事のように言う。そのハレンチなメンバーには自身も入っているのだが。
「ええいっ! 私はキミ達より年上だと言ったではないか。あと、ジェイドとかいったな、付き合えというの違う意味なのだろう」
ピリカは理解しているようだ。
「そうそう、物質錬成で直して欲しい物があるんだよ。だから俺と一緒にニヴルヘイムまで付き合って欲しいんだ」
やっと誤解が解け、暴走していた二人の女子が止まった。今は何事もなかったかのようにイスに座っている。
「まったく騒々しい。あんな言い方では、ジェイドが新メンバーを、いきなり口説いているのかと思うだろ。手あたり次第か」
やれやれと言った感じにライデンが呟いた。
くっ、ライデンの中の俺は、どんなハレンチ男になってるんだよ。というか、ライデンとマサトラもお似合いな気がするけど。
「ライデン、おまえも一緒だろ。お前ら二人もお似合いじゃないのか?」
ライデンがキョトンとした顔をする。全く考えていなかった感じだ。
「マサトラ殿には悪いが……私はデカい男は好みではないのだ。そうだな、理想の男といえば、線が細くて童顔な感じが良いかな。実は年下が好みなんだ。それでいて、いざという時は強く誇り高く。でもでも歴史好きだと嬉しいかもしれない。一緒に時代劇や歴史映画を観たいしな。それでそれで、わ、私を乙女として扱ってくれて……」
ライデンが乙女になって理想の男を語る。もう止められない。
そこに、マサトラの放った言葉で場が凍り付いてしまった。
「つまり、ライデン君の好みはジェイド君みたいな
シィィィィィィーン
「おい、そうなのか?」
「ライデンさん、怪しいです……」
「おい、更にライバルが増えるのではあるまいな」
俺とミウとララの視線がライデンに集中する。
「うっ、ううっ、ち、違うぞ! ぜっんぜん違う! 違うったら違うからなぁぁぁぁ~っ!」
真っ赤な顔をしたライデンが部屋から飛び出して行った。
事態は混迷を極めているのに、パーティー内の男女関係も混迷を極めてゆく――
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