第17話 意地の張り合い温泉物語

 ジャブ、ジャバッ、ザバッ――

 裸で温泉に浸かる俺の後ろから、彼女達が湯船に入る音が聞こえる。想像するに、足から湯に入りジャバジャバと音を立てて俺の方へと近付いているようだ。


 どうしてこうなった……。

 そりゃ、俺も男だからエッチに興味あるし、彼女達の裸を見たいのは山々だが……三人同時なんて聞いてないぞ。


 い、いやまさか、変な気はないよな。二人で張り合ってこうなっただけで、俺とエッチなことしたいとかは無いはずだ。そこを誤解したらアウトだぜ。


 ここで勘違いした俺が手を出したりしたら、『そんなつもりじゃなかったのに』とか言われて事案発生になってしまう。ふっ、俺はそんな失敗はしないぜ。


 ジャバッ、ジャバッ――

 ララが俺の隣に来た。


「おい、近くないか?」

「ジェイド、こ、こっちを見ても良いぞ」


 俺の言葉も無視するように、ララがグイグイ迫ってくる。長い艶やかな黒髪がお湯で湿っていて、しっとりと垂れ下がっている。強烈な色気と恐怖が一緒にやってくるようだ。


「いや、それは……」


「見ちゃダメです! エッチ禁止って言いましたよねっ」


 俺が何か言う前に、ミウが止めに入った。ただ、俺の前に来たので色々見えてしまっているのだが。


 ぷるんぷるんっ!


 目を伏せていたはずなのに、視線の端に柔らかそうに揺れる下乳が入ってしまった。めっちゃデカいのに、まるで重力に逆らうかのように前に突き出てプルプルと張りがある。完璧なおっぱいだ。


「ぐはぁっ! み、ミウ、見えてるから」

「へっ……」


 ゆっくりと視線を落としたミウが、すっぽんぽんで俺の前に立っているのに気付く。


「きゃ、きゃあぁぁぁぁーっ! ジェイドさんのエッチ!」

「いや、おまえが見せてるんだろ!」


 ジャバーン!

 慌ててプルプルと胸を揺らしまくっていたミウだったが、やっと肩までお湯に浸かって隠すことに気付いたようだ。


「ううっ、うううっ……み、見ました?」

「見たじゃなく見えた・・・が正解だ」

「くぅぅぅぅ~っ……」


 羞恥に耐えるような真っ赤な顔でプルプル震えているミウが可愛い。エッチな体をしているのに恥ずかしがり屋なところにグッときてしまう。


「ふっ、ミウめ、そのドスケベボディで我が盟友のジェイドをたぶらかすのではない」


 俺とミウのやり取りと見ていたララが、ぶつぶつと文句を言っている。


「ララさん! どど、ドスケベじゃないって言ってるでしょ」


「どうだか? そなた毎晩ネットでエッチなのを見まくって自分で自分を慰めておったのであろう」


「何で知ってるんですかぁ!」


 シィィィィィィーン――


 冗談で言ったララの言葉に、ミウが自爆してしまう。やっぱりエッチな娘なのは本当だった。


「ち、違っ……ちがくて……」

 ミウが誤魔化そうとするが言葉が出ない。


「じょ、冗談のつもりだったのに……やはりドスケベ娘(ぼそっ)」

 ララがボソボソ呟いている。


「ミウ……毎晩オナ……してたんだ」


 恥ずかし過ぎる秘密をバラしてしまったミウ。もう俺は、元世界で毎晩繰り広げられているであろうその光景を想像してしまう。


「ジェイドさん! 想像しないでくださいっ!」

「おいっ、ミウ、立ち上がるな! 見えちゃうから」


 掴みかかるミウの胸が俺に当たっている。柔らかな感触が心地良い。もう、わざとなのか偶然なのか怪しいところだ。


「うわぁぁぁぁ~ん! もう、お嫁に行けません。ジェイドさん責任取ってください」


「ミウ……意味分かって言ってるのか?」


 俺の言葉が聞こえていないのか、ミウは羞恥心が限界になったように上の空だ。


 スゥーイ――スゥーイ――

「良かったです、御主人。嫁ができたです」


 俺達のやりとりを湯舟を泳ぎながら聞いていたミーニャが、能天気な感じに話している。


 お湯からしっぽが出ているのが面白い。一応言っておくが、俺はロリコンではないぞ。保護者的な観点から温かく見守っているのだ。泳いでいる時にチラチラ見える小さな尻や胸を見ているのも安全確認のためだ。


「いや、ミーニャの言うようなのではないさ。パニくっているだけだろ」

「御主人は女を知らなそうです」

「誰がドーテーだコラっ」


 まあ、ミーニャはいいとして、ミウは無意識にエロいことをしてくるから用心しないと。


「まったく、ミウには困ったものだな……って、痛っ! おい、俺の腕をつねるのをやめろ。ララっ」


 ララが俺の腕をつねりながら「ぐぬぬ」とか言っている。相変わらず不思議な女だ。


 ――――――――



「俺は先に上がるから、おまえらはゆっくり入っていてくれ」


 そう言って俺は温泉を出た。

 これ以上混浴していると、さすがに俺の理性やら体の一部やらが限界だ。多少ポンコツだが、顔は美人だし体も魅力的な二人だ。まあ、性格も変わっているが可愛いと思う。


 ミウはエッチな娘のようだけど、男慣れしてないようだしチョロすぎて騙されそうで心配なんだよな。俺と出会ってなかったら、悪い男に騙されて手籠てごめにされてそうだ……。


 ララはコミュニケーションに難ありで、放っておいたら危険に巻き込まれそうだし。見た目だけは超美人だから。やっぱり俺がいないと悪い男に狙われそうで心配だよな。


 味方に魔法をぶっ放す問題児だけど、やっぱりパーティーメンバーとして俺が守るべきだ。せっかくできた仲間だし。




「――よね」


 俺が岩一つ隔てた場所で休んでいると、温泉から彼女達の会話が聞こえてくる。


「そ、その……ささ、さっきはごめん。わわ、わたしは冗談のつもりで……」


 ララの声のようだ。

 あいつ、俺がいなくなった途端、コミュ障が再発してるじゃないか。


「いえ、私こそすみません。取り乱してしまって」


「あ、あのっ、わ、わたしは友達がいないから、仲良くしてもらえると助かる」


「じゃあ、お友達になりましょう。さっきは、ジェイドさんがエッチなのがいけないんです」


 おいっ!

 聞こえてるぞミウ。


「お、男はエッチなものだからな」


「そうです! 男はあれですよね。『奴隷調教』とか『くっころ』とか『羞恥攻め』とかするんですよね」


 それはミウが毎晩見てたネットのエロコンテンツだろが! エッチなのはどっちだよ!


「ふひっ、そ、それはそれで……良いものかもしれないぞ……ごにょごにょ」


 ララっ! 良いのかよっ! ドン引きだぞ!


「そ、その……ミウはジェイドのことを……(ぼそっ)」


「えっ、何か言いましたか?」


 ララが何か言おうとしたようだが、声が小さくてミウは聞き取れなかったようだ。


「ところで、お二人は御主人が好きなのですか?」

 突然ミーニャが突っ込んだ話をする。


「なななっ、すす、好きだとっ!」

「ミーニャちゃん、なに言ってるんですかぁ」


 ミウとララが一気に動揺した。


「しゅしゅ、しゅきとか……」

「ちち、違います! すすす、好きとか」


 おい、何を言おうとしてるんだ。気になる。もう少し近付いてみるか。

 ガサゴソ――


「にゃにゃっ、待ってくださいです。御主人が、あの岩の向こうで聞き耳立ててるです」


 ギクッ!

 ななっ、ほんのわずかな音で気付いたのか? さすがネコミミだな。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


「ジェ、ジェイドよ、今の聞いていたのか……?」

「ジェイドさん! まさか覗いてたんですか?」


 岩の上からララとミウの顔が出てきた。


 この後、俺はプンプンと可愛く怒ったミウと、ドロドロとした感じに妖しいララの二人から、こってりとお仕置きされてしまうのだった。


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