第18話 どこか遠い世界に (ミウ視点)
私は人通りの少ない路地裏のパソコンショップにいます。今日からサービスが始まるゲームの機材を買いにきたのです。
私の名前は
数日前――――
『ねえ、美雨。私らさっ、今度みんなで一緒にゲームやることになったんだよね。星々の
『当然、美雨もやるよね?』
クラスの友達がゲームをやろうと誘ってくる。この人達が本当に友達かと言われると、少し怪しいところなのですが。
だって、少し前に私がいないところで悪口を言っているのを聞いてしまったから。良い気になっているだとか、男に色目を使っているだとか、誰誰の彼氏にちょっかいをかけたとか……。
私には、そんな記憶は全く無いのですが。
たまに私の下駄箱にゴミが入っていたり上履きが隠されていたりと、ちょっとしたイタズラをされていたこともあります。でも、誰がやったのが分からないから何も言えなくて。
今も、本当にゲームをプレイするのか怪しいところです。機材を買ったところで、『えぇ~っ、あれ冗談だよ。美雨ったら冗談通じないんだから』とか言われそうな気がします。
『あ、あの……私、ゲームとかよく知らなくて』
『そんなの簡単だって。ゲーム内に入って遊べるんだから』
『そうそう、みんなでゲーム世界で集まるの』
『美雨、もしかしてやらないの? 友達でしょ』
いつも人の顔色をうかがって生きている私には、皆の誘いを断る勇気はありません。だって、断わったら次からは仲間に入れてもらえなくなりそうで……。
『う、うん、じゃあやってみる』
『じゃ、決まりね』
『サービス開始日にまで機材そろえといてよね』
『じゃあねぇ~っ』
――――――――
こうして私はフルダイブ型VRゴーグルを買いにきたという訳です。
ただ、いざ買いにきてみると、機材が高くて私のバイトで貯めたお金では手が出ません。そして、裏通りを歩いていると、たまたま安い中古ショップを見つけたのでした。
「お嬢ちゃん、フルダイブ型RPGゲームは初めてかい?」
お店の店員さんが話しかけてきました。少し怪しげな人なので警戒してしまいます。
「あ、あのっ、初めてで……」
「なら、これはどうだい? 中古だけど最新のタイプにも引けを取らない性能だよ」
「えっと……じゃあ、それください」
私は言われるがままに機材を買ってしまいました。
「ふふっ、これはね数量限定なんだ。きっと気に入ると思うよ。こことは違う別世界に行って、心躍るような冒険をしたり出会いがあったり。お嬢ちゃんもゲームを楽しめたら良いな」
機材を買って怪しげな店を出る。
外は
こことは違う別世界か――――
この世界も学校も息苦しい。
皆に合せて上手く立ち回らないと。要領の悪い私は、目立ったり人と違うことをしたら、すぐにはみ出してしまいそうだから。
――――――――
『ようこそ、リンデンヘイムの世界へ。おめでとうございます。あなたは
こうして私は、こことは違う世界に旅立って行きました。
◆ ◇ ◆
ピカァァァァーッ!
ゲーム世界に飛ばされた私の前に、突然傷だらけの男の人が転移してきました。漆黒のローブを着た、何となく人当たりの良さそうな男性です。
「うっ…………こ、ここは……」
たたたたた、大変です! すぐに手当てをしないと。ああっ、そういえば私はヒーラーだから魔法で。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「これが大丈夫に見えるのかよ?」
「はわわっ、すみません……」
ですよね。大丈夫なはずないですよね。
でも…………そうだ、この人を利用して守ってもらおう。この世界にきたけど、結局友達もいないし、ログアウトもできなくなっちゃうし……一人でレベル上げしてみたけど、怖くてもうムリそうだし……。
この人を助ける代わりに、私のお願いを聞いてもらえれば。でも、この人を騙すみたいで心苦しいけど……。
――――――――
仲間になったジェイドさんは良い人でした。私のために道具をそろえてくれたり宿をとってくれたり。私が寝ぼけて抱きついてしまった時も、何もしないで我慢してくれました。
ジェイドさんに『溜まってるのか?』と言われてしまいましたが、私はそんなエッチな子じゃありません。
そ、それは、ちょっとはムラムラしちゃう時もあるし、元の世界の時のようにネットでエッチなコンテンツが見れないのは残念だけど。
でもでも、それは他の子もやってるはずですよね。私だけじゃないはずです。これはネット情報ですが、皆もやっていると書いてありました。
あと、最近仲間に加わったララさん。凄く美人で髪が綺麗な人。
たまにジェイドさんがララさんに見惚れているようなのです。二人が仲良くしているのを見ると、なぜかイライラしてしまう自分がいます。
突然、異世界に飛ばされてしまった私。でも、なぜでしょう。元の世界にいた時よりも伸び伸びしている気がします。
この先に何が待ち受けているのか分からないけど、まだ私達の冒険は始まったばかりなのです。
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