第15話 ポンコツの一号! ポンコツの二号!
掛け声と共に俺は疾走する。
敵はジャイアントオークの群れ。大きく
「ブゥォォォォーッ!」
「ブシャァァァァーッ!」
ジャイアントオーク達が雄叫びを上げる。
俺は
「くらえ、オークども!」
同時に少し後ろの美少女二人も魔法発動の体勢に入った。
「くぅーっくっくっくっ! 我の魔法をくらうがよいっ! い、いっぱい活躍して、ジェイドに褒めてもらうのだっ」
ララが極大魔導王専用武器、
「わ、私だって負けません! ジェイドさんが必要って言ってくれたんですから」
ミウが聖天総大神皇専用武器、
俺は雷撃の槍魔法をぶちかます。
「いくぜ、
スバババババババー!!
ドスゥゥーン!
やれる!
この俺の強さと、この神器があれば、大抵のモンスターには太刀打ちできるはずだ。
俺が次の獲物を狙って魔法を放とうとしたその時、後ろにいる二人から大きな魔力の発動を感じた。
「えっ?」
グワアアアアアアァァァァーッ!
「爆炎よ全てを破壊せよ!
「聖なる光よ、悪しき者を打ち滅ぼせ!
ドドドドドドッ!
ドーン! ドカーン! ズババーン!
数え切れないほどの爆発が起こり、俺もろともオーク達が消し炭のボロボロになってゆく。
ビィィィィィィィィーッ!
強力な神聖魔法のレーザービームが放たれ、俺もろともオーク達が塵のように消滅してゆく。
「ぎゃああああああああああああっ! なんじゃこりゃぁーっ!」
ドッカァアアアアァァーン!
――――――――
――――――
――――
――さん……
――ジェイドさん……
声が聞こえる……綺麗で可愛い声だ。それに、柔らかい……いい感触だ……スベスベでふわふわでムチムチだ……ここは天国なのか……?
俺が薄目を開けると、目の前に泣き顔のミウがいる。涙がぽろぽろ零れて、俺の顔に落ちていた。
柔らかな感触だと思っていたのは、ミウに膝枕されているからだろう。そして、俺の手がミウの腰へと回していて、ムチムチの尻を掴んでいた。
「あれ? 俺……生きてるのか?」
「うわぁぁぁぁ~ん、良かったぁぁっ! ジェイドさん、死んじゃったかと思いましたぁぁ~っ」
「くっ、苦しい……むぎゅぅ」
大泣きしたミウに抱きしめられ、ギュウギュウと絞められる。俺の顔が巨乳に埋まり息ができない。もう一度、昇天してしまいそうだ。
「ふぅ……危なかったぞ、ジェイドよ。そなたはオークとの戦闘で死にかけて、ミウの
頭がぼんやりする。そうか、俺は戦闘で死にかけて…………
「いや、待て! 戦闘で死にかけたんじゃない! おまえらに殺されそうになったんだろ!」
俺の言葉に、ミウが急にキョドリ始め、ララはとぼけてそっぽを向いてしまう。
「ミウ! 何で俺に向かってクリティカルで効く神聖魔法で攻撃してんだよ! 俺を狙ってんのか!?」
「え、ええ、えとえと……ジェイドさんに、私も役に立つところを見せたいと思って……頑張ったんですぅ……うえぇ~ん」
ミウは泣きながら必死に訴えている。
えええ……
この娘、ホントにポンコツなのでは? 俺に
「あと、ララ、何で俺ごと広範囲破壊魔法をぶち込んでんだよ?」
「そ、それはだな……ジェ、ジェイドに褒めて欲しくて……うっ、ううっ……精一杯やっているのだが……」
戦闘前までは頼りになりそうだったララが、今は完全にポンコツ化していた。ゲーマーという話は何だったのか。
「うっ、へぐっ、ひぐっ……頑張ってるのに……わたし頑張ってるのに……いつも、いつも……味方殺しのララとか呼ばれて……前やってたゲームでも、誰もパーティーに入れてくれなくなって……ううっ、うわぁぁぁぁ~ん!」
「えええっ、ギャン泣きかよ……」
ララまで大泣きになってしまった。二人でガチに大泣きされてしまう。美少女の涙の前では誰も勝てないだろう。
「ふえぇぇぇぇ~ん!」
「うわぁぁぁぁ~ん!」
「御主人、女を泣かせちゃダメです。謝るです」
ミーニャに叱られてしまう俺。何だか俺が悪者みたいだ。
ええっ、俺が悪いのか? 理不尽過ぎるだろ。でも、泣かせちゃったのは悪いと思うけど。やっぱり謝った方が良いのか。
「あ、あの……キツく言っちゃってごめん。怒ってないから」
「ううっ、ひくっ、もう怒ってないですか?」
ミウが両手で目をこすりながら聞いてくる。
「うん、怒ってないよ」
「わ、私……要らない子じゃないですよね?」
「うんうん、ミウは必要だから」
「はい……ふえぇ」
ミウが何とか泣き止んでくれた。
次にもう一人のポンコツ娘だ。俺はララの前に行って慰める。
「ララも泣き止んでくれ」
「えぐっ、ひぐっ……どうせわたしは……」
今日はテンション高めだったのに、またダウナー系になってしまった。
「ララ、『わたしなんて』とか言っちゃダメだ。ララにはララの良いところがあるはずなんだ。(たぶん)今までは、ちょっとタイミングが悪かっただけだよ。(たぶん)これからは、ゆっくりとやって行けば良いじゃないか」
「うっ、ううっ……ジェイドは私を捨てたりしないか?」
「捨てるわけないだろ。ララは大事な仲間じゃないか。ずっといて良いから」
俺の言葉に反応して、ララの背後からゾワゾワするオーラが溢れ出る。急にキモさが倍増したみたいだ。
「ふっ、ふひっ……くふっ、くふふっ……そ、そんなこと言ってくれるのはジェイドだけだ。もう離れないからな……」
ゾクゾクゾクッ!
背筋に悪寒が走った。
超美人で綺麗な黒髪だったララから恐怖を感じる。髪が顔の前に垂れ下がり、まるで幽霊のような迫力だ。ヤンデレっぽい目をして、口元に変な笑いを浮かべている。
「ふひっ、ま、まあ、ジェイドが逃げてもストーキングしちゃうかもしれないけど……(ぼそぼそっ)」
「えっ?」
今、何で言った? 声が小さくてよく聞こえなかったけど。もしかして俺は、とんでもない女にロックオンされてしまったのでは?
「ま、まあ、もうちょっと頑張ろうか? まだ始めたばかりだし」
「はいっ、頑張りましょうジェイドさん」
「ふふっ、ジェ、ジェイド……もう我は遠慮しないからな」
さっきまでの大泣きも忘れてしまったかのような笑顔のミウと、相変わらずワケわからん感じのララ。不安しかない。
「俺の固有スキル【暗黒神】で自己修復機能があるとはいえ、もう俺に魔法の直撃はやめてくれよ。再生能力を超えるダメージを受けたら本当に……」
いまいち不安だが、俺達は戦闘を続けることにした。
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