第13話 ポンコツパーティー結成
俺は地獄の責め苦のような中にいた。
美少女たちに囲まれ、本来なら喜ぶべきなのだろうが、少し……いや、かなり癖の強いメンバーで俺の理性が崩壊寸前だ。
「ふへへぇ~っ……ジェイドさん、えっちですよぉ~」
ミウが胸をぎゅうぎゅう押し付けて寝言を言っている。エッチなのはどっちだと小一時間説教したい気分だ。
「ふにゃ~っ、ごろごろ……」
俺のお腹の上に乗ったミーニャが気持ちよさそうな寝顔をしている。
「ハアっ、ハアっ……うっ、ううっ……ヤバい……」
ララが俺の耳元でブツブツとつぶやいている。超美人なのにキモさ百倍だ。あと、ヤバいのはこっちの方だ。
「ララ、起きてるのか?」
「…………あ、ああ」
少ししてから返事があった。
「何がヤバいんだ? 耳元でブツブツされると寝られないのだが」
「い、いや、それは……寝てから気付いたけど、わた、わたし……男に慣れてなくて……きき、緊張が……」
相変わらずララは小声でボソボソ喋っているが、一人称が『我』ではなくなっている。たぶん、こっちが本当の喋り方なのだろう。
「俺は何もしないから大丈夫だ。安心して寝てくれ。それに、ミウやミーニャがいるから何もできないだろ」
「そそ、そうではないのだ……むしろ男には興味津々というか、エッチにも興味津々というか……って、わた、わたしは何を言っているのだ」
「いや、こっちが聞きたいぞ」
「つまりだな……わたしだって彼氏や男友達を作って……気軽に話したいのだが……。いつも、嫌われたり避けられたりして……。だから、いつも楽しそうに盛り上がっている人たちを横目に見ているだけなんだ。わ、わたしなんて……」
これは重度のコミュ障が原因なのだろうか。見た目は超美人なのだから嫌われることは無いと思うが。たぶん、緊張のあまり変な喋り方になったり、中二病っぽいことを言い出して、更に変な人だと思われてしまうパターンか。
「ララ、ここは異世界なんだ。中二病でも良いじゃないか。気にせずいつものように振舞えば良い。ララの喋り方など誰も気にしないさ。それに、俺も中二病だったしな」
俺は少しだけララを勇気づけてみた。
「ジェイド……そなた……くくっ、くくくっ、そうかそうか。そなたも我と同じ星の名のもとに生まれた
ララが復活した。
「復活が早いな。それと、星の名はリゲルとシリウスで違うけどな」
「ジェイド、そなた星に詳しいのか?」
「まあ、少しだけだ。ララのシリウスは大星や天狼星など多くの呼び名があって、夜空で一番明るい星なんだ。ははっ、美人のララにピッタリだろ」
自分でもちょっとクサいセリフを言ってしまったと思ったが、どうせ寝ぼけていて覚えていないだろう。もう眠いので寝かせて欲しい。昨日もろくに寝てないのだから。
「ふふっ……そなた、――ったぞ……」
ララのセリフは、最後の部分だけ聞き取れなかった。
◆ ◇ ◆
どよぉぉぉぉ~ん!
あのまま寝かせてもらえるほど甘くはなかった。俺は三人の美少女から生殺しのような攻めを朝まで受け続けてしまう。
ミウの寝相が更に悪化して、俺の体をガッチリとホールドされたまま、『おいしいですぅ~』などと寝言を言いながら首筋をペロペロされてしまった。
ミーニャのしっぽがシュルシュルと動いて、俺の体をコチョコチョとくすぐり我慢できないほどだ。
トドメに、なぜかララの口が俺の耳に密着し、耳の穴に暖かな息をゼロ距離で吹きかけられる始末。もう意味が分からない。
「ち、違うんです。エッチな子じゃありませんから」
「ミーニャは悪くないです。しっぽが動くのは普通です」
「くくくっ、我を
ミウもミーニャもララも悪びれる様子もない。もう、一緒に寝るのはこりごりだ。
「朝からヘロヘロなのだが……」
「ま、待ってください、すぐ魔法で……」
俺の疲れ具合を見たミウが、治癒系魔法の【
ペカァァァァー!
「ジェイドさん、どうですか?」
「楽になったよ」
「なら、毎日でも大丈夫ですよね」
(は? もしかして、毎晩俺に抱きつく気なのか? ミウのドスケベボディで。いくら紳士的な俺でも我慢の限度というのがあるのだが)
俺の心配など他所に、皆は元気いっぱいだ。
「では、今日も元気に出発しましょう」
「我はいつでも準備完了であるがな」
「御主人、急ぐです」
個性的なポンコツメンバーと一緒に、今日も冒険が始まった。
◆ ◇ ◆
「先ず、基本がなってないぞ! パーティーを組んだのなら、先にやるべきことが色々あるのだっ!」
ララのテンションが高い。昨夜はテンション低めだったのに、なぜか吹っ切れてしまったかのように全開だ。
レベル上げと新たなパーティー編成を兼ね森へと入ったのだが、パーティーを組むにあたっての基本ができていないとララが言い出したのだ。
ララは先輩風を吹かせ始めた。
「先ず、ミウ!」
「は、はい」
「何でパーティーメンバーにまでステータスを隠しているんだ?」
「ええっ、よく分かりません」
ガクッ!
ララがズッコケそうになった。
「個別設定画面でPT内で情報を共有できるように変更するように」
「はい」
次に俺の方を向いたララが話し始める。
「ジェイド、装備やアイテムの設定が甘いぞ」
「そうなのか?」
「クリ値やMP値やSTR値がアップするアイテムはスロットに装備せよ」
言われてみれば、ゲットしたアイテムがボックスに入れっぱなしだった。
「ジェイドは経験者じゃないのか?」
「まあ、少しだけだが」
と言っても、主に遊んでいるゲームは
ララが基本情報を説明する。
「この世界は、基本がゲーム設定と同じになっているようだ。レベルアップに伴い各パラメーターがアップし、新たなスキルも覚えることになる。スキルは【剣技】【剣術】【武術】【魔術】【神官】【その他】など色々あり、そこから様々な剣技や魔法などが使えるのだ」
ゲーマーだけあってララの知識は豊富だ。TSOの内容も事前に雑誌やネットで勉強しておいたようで、設定や世界観も頭に入っていた。これは、ゲーム上級者の仲間がパーティーに入ったようで心強い。
「通常のレベルとは別にスキルレベルが存在している。このスキルレベルにより、各種スキルや魔法の強さが決まるのだ。スキルレベル1が普通の人。2になると上級者。5まで行くと勇者のような存在だ。我ら七星神は特別にスキルレベル10が取得可能になっている。これは、極めれば伝説級の魔法も使えるということだな」
「伝説級……やっぱり凄いURアバターだったのか」
「我が事前に調べた情報では、TSOのスキルレベル上限は5だったはず。10というのは明らかに異常だ。異世界転生させられた時に
ララが輝いて見える。ゲーマーとしての本領発揮だ。たまにキモくなる時があるが、いざとなれば頼りになる女なのかもしれない。
「ララ、助かったよ。これで色々と戦闘やレベル上げがしやすくなった。本当にララが仲間になってくれて良かった」
「そ、それほどでも……ふっ、ふひっ、くふっ……」
俺がララを褒めると、超美人の顔でキモい笑い声を出してニヤニヤしている。もう慣れたとはいえ、ちょっぴりキモくてギャップが凄い。
「むぅぅぅぅーっ!」
そしてミウがプク顔をしている。
「えっと、ミウ。怒ってる?」
「べつに怒ってませんけどぉ」
やっぱりミウが不機嫌になっているようだ。なぜか俺をジト目で睨んでいるのだが。
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