第10話 新たな仲間

 俺に淫紋を刻まれヘナヘナと崩れ落ちるミーニャ。何でも思うがままのエッチ奴隷の完成だ。奴隷契約をしているので、俺には絶対服従となり逆らいようがない。


「えっと……と、とりあえず今日は街に戻ろうか?」


「ううっ、いくらミーニャがセクシーなレディだからといって、魂に淫紋いんもんを刻まれてエッチ奴隷にされるなんてあんまりです」


 セクシーなレディかどうかは知らないが、ミーニャが羞恥や恐怖でプルプル震えている。きっと、毎日エッチなことをされると誤解しているのだろう。


「ジェイドさん! こんな小さな子が好きだったんですか! み、見損ないました」


 ミウまで怒り出してしまう。


「ちょっと待てミウ。話をややこしくするな」


「ダメです。ミーニャちゃんじゃなく、代わりに私を……わ、私なら……も、もっと色々とエッチなことできます……ごにょごにょ」


「は?」


(な、なんだと…………ミウが色々とエッチなことを……。いやいやいや、なに言ってんだこの娘、エッチは苦手みたいなこと言ってたのに、実はエッチに興味津々じゃないのか!? いつか間違いを起こしそうで危険過ぎるぞ)


 とにかく、誤解は解いておくか。


「二人共、落ち着け。俺は無理やりしないって言っただろ。今日だって、ベッドでミウのイヤラシイ体で抱きつかれても、朝まで何もしないで耐えていたじゃないか」


「い、いやらしくありません! で、でも、確かにジェイドさんは紳士的な方でした……」


「だろ」


 イヤラシイ体なのは否定するが、俺が無理やりしないのはミウも認めてくれているようだ。ミウがミーニャに説明している。


「ミーニャちゃん、ジェイドさんはヘタ……えとっ、紳士的な人なので大丈夫ですよ」


「そうなのです? ミーニャ、エッチ奴隷にならないです?」


(おい! 今、『ヘタレ』って言おうとしただろ! ミウって可愛い顔して意外と毒舌な気がする。というか、本当はエッチしたいんじゃないのか?)


「とにかく、もう街に戻ろう。メンバーも増えて宿もとらないとならないからな」


 俺は奴隷契約の話を終わらせて、今夜の宿を決めるために街に急いだ。


 ◆ ◇ ◆




「なんだって! 部屋が一つしか空いてないだと」


 宿屋に行くと、空いている部屋が一つだけだと言われてしまう。ミウと同じベッドで寝るのは色々とヤバいので避けたいのに、また抱き枕状態にされて眠れというのだろうか。もう最悪だ。


 そんな俺の苦労や我慢など知りもしない顔をしたミウが、今回も能天気なことを言っている。


「ジェイドさん、ここは我慢しましょう。私なら大丈夫です」


「俺が大丈夫じゃない。ミウのドスケベボディには、もう耐えられない」


「ど、ドスケベじゃありませんからぁ!」


 ミウが文句を言っているが、このまま野宿するわけにもいかず部屋を借りることにした。今回はミーニャもいて三人だが、もう面倒なので考えるのをやめることにしよう。


 結局、三人で一部屋という更にハードな一夜になりそうだ。



 とりあえず今夜の宿も決まり、俺たちは夕食を食べに行くことにした。


「じゃあ、飯でも食いに行くか」

「はい、行きましょうジェイドさん」

「にゃにゃっ、ご飯、楽しみです」


 飯と聞いてミウとミーニャのテンションが上がった。能天気なパーティーメンバーばかり増えてしまい、この先どうなるのか少し心配になってきたぞ。


 ◆ ◇ ◆




「誰かに見られている気がする……」


 宿屋を出て通りを歩いていると、俺の後ろから誰かの視線を感じる。


「ジェイドさん、もしかしてストーカーとか?」

「そんなわけない……」


 ミウに言われて否定しようとしたが、ジャスティスとかいう変な男の件もあり不安になる。


「どうせ、騙した昔の女から狙われているです」


 ミーニャが余計なことを言い出した。


「ジェイドさんって遊び人だったんですか!?」


 案の定、ミウが本気にしてしまうのだが。


「そんな訳あるか。遊び人なんかじゃない」


「で、ですよね……ジェイドさんってドー……いや、誠実そうな人ですし」


(ミウ…………今、童貞と言おうとしてなかったか? この娘って、たまに本音がダダ漏れするよな)


「まあ良い。それより探索だ」


 とりあえず周囲を探索しても怪しい奴はいないようだ。まあ、俺と同じように隠密や探索妨害のスキルを使っていたら意味が無いが。


 周囲の安全を確認した俺たちは、昨日と同じ酒場に入った。


 ◆ ◇ ◆




 ガヤガヤガヤガヤ――

 酒場は今日も繁盛していた。


「ところでミウはステータスが読み取れないけど、何かのスキルなのか?」


 俺は直接ミウに聞いてみた。俺と同じ七星神なのは間違いないはずだ。今まで一緒に行動して、ミウの強さには驚かされてきた。ただ、ポンコツなのか戦闘では役にに立っていないのだが。


「ええっと……私の固有スキルみたいです」


 ミウがステイタス画面を確認しているようだ。


「あっ、ありました。固有スキル【聖天神皇せいてんしんこう】により、回復系魔法効果の大幅アップ。高位回復系魔法の初期装備。探索妨害、鑑定妨害、物理防御、魔法防御、呪い防御の自動発動……と書いてあります」


「何だそりゃ、無敵かっ!」


「あ、あのあの、このキャラは衣装が可愛いから選んだだけです」


 平然とミウがスキルの説明をしているが、とんでもないチートキャラのようだ。七星神の一人なのは確実だろう。


 しかし、これで疑惑は晴れたのかもしれない。今までミウの行動に裏があるとか何か隠していると多少なりとも思っていたが、こう易々と全部しゃべってしまうのなら、裏など無いのだろう。


「はむっ、はむっ……何の話ですか?」


 美味しそうに料理を食べているミーニャが会話に入ってきた。


「まあ、俺たちのスキルについて話していたんだ。どうやら、他の人と少し違うようなのでな」


「エッチな奴隷契約魔法を使えるくらいだから普通じゃないです。はむはむっ……」


 余程お腹が空いていたのか、ミーニャは食べる方に夢中で話はよく聞いていないようだ。まあ俺たちが異世界だとバレても、絶対服従の奴隷契約があるから大丈夫だろう。


 俺も目の前の料理を食べようと思ったその時、向こうから見たことのある黒髪ロングの美少女がやって来るのが目に入った。


「あれは……昨日の……」


 そこに現れたのは、昨日この酒場で相席になった女だった。見間違えるはずもない艶やかで綺麗な黒髪。赤く深い色の瞳に切れ長の美しい目。鼻筋が通った形の良い鼻。

 どの角度から見ても超美人だ。


 そして俺は先刻までの違和感に気付く。誰かに見られていると感じたのは、たぶんこの女に違いない。


 カタッ!


 その女は俺たちのテーブルのところに来ると、何やら喋り始めた。


「ふっ、ふひっ……わ、わわ、われは、この世のことわりを統べる深淵しんえんの魔術師にして最強の魔導女王……最強にして至高にして最上位の存在……きょ、極大魔導王きょくだいまどうおうシリウス、ベルゼビュートララアドラメラク!」


 シィィィィーン――――


 顔は超美人なのに性格は超寒い感じの女が突然自己紹介を始めた。ただ、このちょっとキモい感じに共感してしまう俺もいるのだが。


 新たなポンコツヒロイン到来の予感に、俺の不安と今夜の危険がますます増大した気がした。


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