第2恋
その日も変わらない日の予定だった。いつものように昼休みに直輔が来て、いつものようにメロメロメロンマンを食べる。それだけのはずだった。
「最悪だよ」
廊下を歩く雅喜は呟いた。なんと、持ってきた飲み物がなくなってしまったのだ。休み時間に直輔が持ってきた激辛菓子を騙されて食べてしまったせいで、いつもは家に帰っても余っている水を飲み干してしまったのだ。そのため、買い足すために雅喜は自動販売機を目指している。
「だから、俺も来てんじゃん」
隣を歩く自称トーク担当の直輔は何か話題はないものかとキョロキョロ目を動かしながら答えた。昼休みのこともあり、同級生以外の生徒とよくすれ違う。
「あ、おい、雅喜。あの子、転校生だぜ?」
直輔は面倒くさい顔をしている雅喜の肩に手を回して前方を指さした。そこには目的の自動販売機前で楽しそうに飲み物を買っている、一つ下の女子生徒がいた。
「あの真ん中の子。ちょっと前に転校してきたらしい」
雅喜は直輔の指さす後ろ姿を興味のなさそうな顔で見た。
「まって、お前、よく後ろ姿でわかったな」
「だって、あの子の隣にいるみほろちゃんって子、可愛いなって思ってたんだもん」
「お前の好きな子?どっちだよ、右?左?」
「左ですぅ」
直輔が言うと、ちょうど小柄でふわふわのボブヘアが似合うみほろが振り返った。それにつられるように残りの女子生徒も振り返った。その瞬間、雅喜は目を見開いた。
「うおっ!振り返ったぜ!可愛い!」
隣で盛り上がっている直輔を無視して、雅喜はただ一点を見つめた。一目で惹かれた。優しそうな顔立ちと、柔らかそうな雰囲気を醸し出す転校生の少女から目が離せなかった。片耳にだけ髪をかけ、そこを小さな星のピンでとめているところも愛らしい。着崩さないで指定通りに制服を着ている姿から真面目さも伝わり、そこも愛おしく感じてしまう。こちらを不思議そうに見つめる瞳に自分がいると思うだけで嬉しさに包まれる。転校生の少女が振り返り、雅喜と目が合った数秒で雅喜はここまで考えるほど彼女を見ていた。やがて、そのせいで変なやつに思われるのが嫌で目を逸らした。
「あ、すみません。私達、終わりましたからどうぞ」
みほろが直輔に笑いかけた。雅喜ではないのは、きっと愛想が悪いという噂を知っているからだろう。それでも直輔は嬉しかった。
「なぁ、あの転校生の子、名前、なんていうの」
去り行く後ろ姿を見ながら、雅喜は直輔に尋ねた。今まで、女子に興味をもったことがない雅喜が、今まさに初めて女の子に興味を持った姿を見た直輔は目を見開いて未だに少女を見ている雅喜を見つめた。
「
戸惑いながらも直輔の口から出た名前を雅喜は何度も繰り返した。
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