第26話 えらい惚れ込みよう
「疲れてへんか」
「うん、躰は疲れてるのに神経がピリピリしとお」
「えらい痩せたな」
パジャマのボタンを外しながら、ミカに鎖骨が出来ているのを見付けた。
「めっちゃダイエット出来たわ。結婚前に行ったプロポーションアカデミーで10キロ落とすのに30万円かかって、それやのに止めた途端元に戻って」
「ああ、俺が詐欺や言うたときやな」
結婚式のときは中肉中背のスラリとした印象やったのが、結婚してひと月もせえへんうちに、餅のようにふっくらと。それはそれで可愛らしいと思ったのやが、今まで着ていた服が着られへんと嘆いていた。太っていたときの服を全部ほかしてまいよったと言う。えらい気の早い。
「今回はお金をかけずに痩せられたわ」
「ノンちゃんには感謝されるし、その上痩せられてよかったな」
「リョウ君ママにはお世話になってもうて」
「おお、今度メロンでも買ってお礼に行って来てくれ。リョウ君ママの味噌汁が絶品なんや」
「そんなに美味しいならミカも食べてみたいなあ」
「おまえもよばれてこい。ほんで作り方を習って来てくれたら、すっげえ嬉しい」
「すごい惚れ込みようやね」
「あの味噌汁には惚れ込むわ」
「まさか、リョウ君ママにも」
「そんなアホなことあらへん、ミカがおるのに」
「もうパパったらん」
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