第25話 ママお帰り

 バスタオルで躰を拭っていると玄関先で声がした。


「お帰り」

「お帰りなさい、ママ」

「ユウ君、ただいま」

 

 ミカはバスタオルの上から勇気をギュッと抱きしめた。


「ママ、僕、もう赤ちゃんじゃないんだよ」

「ひと月ほどおらんかったら、そんな生意気言うようになったん」

「そうや、子どもは、あっという間に成長しよる。ノンちゃんはもうええのか?」

「旦那も海外赴任先から帰って来て、ノンちゃんも産み月近くなったから、今度は産むときのための体力つけなあかんって、どんどん動きなさいやて」

「へえ、そりゃまた極端やな」

「まあ、これで一安心や。えらい迷惑かけたね」

「ミカも先に風呂入ってしもたらどうや」

「うん、お腹もペコペコやけどそうする」

 

 遼平はキッチンの棚をあさった。


「ラーメンぐらいしかないけどええか?」

「上等、上等。上等兵、風呂に入らせていただきます」

 

 ミカはおどけて敬礼をした。


「何じゃ、そりゃ。風呂から出て来る頃、作っておいたるわ」

「サンキュウ」

 

 ミカと入れ違いで洗面所を出て来た勇気。


「パパ、髪の毛乾かしたし、歯も磨いた。僕、もう寝るわ」

「ああ、おやすみ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る