第21話 幼稚園にお迎え

「あっ、サラダを忘れてた」

「もうお腹いっぱい。晩ご飯に食べましょう。あっ、片付けは私が」

「それじゃあ一緒にやりましょう」

 

 遼平の鼻の頭に飛んだ洗剤の泡をリョウ君ママに拭いてもらったりして、後片付けをするうちに幼稚園のお迎えの時間になった。


 車を運転するわけにいかず、徒歩で迎えに行く。

 始めリョウ君ママが行って来ると言ったのだが、それなら一緒にということになった。

 門に着くと、珍しく勇気が駆け寄って来た。


「パパー」


 抱きついてきたので、抱き上げた。


「パパ、お酒臭い」

 

 勇気が顔を背けたので、わざとハアーと息を拭きかける。


「パパ、臭い、臭い、やめてよ」

「こら、暴れるな、落ちて怪我するぞ」

「じゃあ、おろして」

 

 勇気を地面におろすと駆け出して行った。


「パパね、すんごくお酒臭いの」


 砂場のリョウに報告している。


「おまえたち、早く帰ろう。夕食はミートスパだ」

「わあ、やったあー。パパの作るミートスパ、すんごくうまいんだぜ」

「ああ、ミートボールののったやつだろ」

「リョウ、何で知ってるの?」

「何となくだよ、それより手を洗いに行こう」

「うん」

 

 手洗い場まで駆けて行く二人を園内にいる母親たちが注視しているのに、遼平はまだ気づかずにいた。



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