第18話 ワイン

「会社へは行かなくてよろしいんですの?」

「ええ、今日まで有休をとっているんです」

「あら、せっかくのお休みに申し訳ないわ」

 

 日用品コーナーの買い物カゴには電球しか入っていなかった。


「洗剤とか他に買う物はないですか?」

「あっ、それじゃあ」

 

 とソフランとハイターをカゴに追加した。

 急にズシリと重量が増した。


「ついでに食料品も買って帰りましょう」

「いえ、そこまでして戴いたら」

「いつものお礼に、お昼は僕がパスタを作ります」

「まあ、嬉しいって言っていいのかしら」

「味の方は保証出来ませんけどね。パスタはありますか?」

「いえ、ないです」

「それじゃ多めに買って、子どもたちにはミートスパでもしましょう」

「あら、晩ご飯も作ってくださるの。嬉しい」

 

 リョウ君ママは音を立てずに手を叩いて喜んだ。

 キャスターのカゴの中に、あれやこれやと詰め込んでいく。


「リョウ君ママはアサリは好きですか?」

「ええ、大好きです」

「じゃあ、ボンゴレにしましょう」

「あら、ステキ。白ワインも欲しくなりますね」

「いいですねえ。お好きな銘柄はありますか?」

「特にはないです」

 

 遼平は白ワインとスパークリングワイン、ビールもカゴに入れた。


「あら、そんなに飲めません」

「僕が飲みます」

 

 遼平の頭の中は車で帰る事など吹き飛んで、飲む気満々でいた。



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