第15話 ミカのおふくろ飯

 こんなことなら最初に断っておくべきだった。でも、孫の世話が出来るとはりきっているのに、来んでいいとも言いにくかった。


「遼平さん、晩ご飯の用意してあるから、ご飯は自分でよそってね。先にお風呂に入って休ませてもらいますね」


 勝手知ったる娘の家で、ミカの母親は客間に布団を敷いている。

 遼平はそれほど空腹ではなかったが、せっかくこしらえてくれたのだからと箸を取った。


 んっ? いくら躰にいいからといって薄味過ぎるやろ。ひょっとして味付けするのん忘れた? 遼平は菜っ葉の炊いたのを器から箸でつまみ上げた。僅かに茶色い汁が滴っている。味付けはしているようや。菜っ葉はどうにか飲み込めたけど、油揚げが入っていかない。

 味噌汁も、高校の剣道部で合宿をした高野山のお寺より、まだ薄い味だった。

 ミカの父親は毎日、これを食べているんか。それこそ修行のようや。


 遼平は冷蔵庫からビールを取り出すと、これで流し込むことにした。

 マグロの刺身にはワサビと醤油をたっぷりとつけて食べた。


 申し訳ないけど、味噌汁は流しに溢して証拠隠滅。

ほかの食器も流しに運んでいると、ミカのおふくろさんが風呂から出て来た。


「遼平さん、やりますから置いておいてください」

「いえ、大丈夫です」


 遼平はビールの空き缶をすすぐと、すぐに空き缶入れに放り込んだ。

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