第11話 見分けがつかない

「すみません、しわくちゃで、ミカ、妻が出かけているもので」

「あら、お洗濯してくださったんですか、ありがとうございます」

「ありがとうなんて、こちらこそ」

 

 そんなやり取りをしていると、園庭の方から手を繋いだ親子が二人の前に来て、どちらへともなく挨拶をした。


「お先です」

 

 リョウ君ママが会釈した。


「さようなら」

 

 砂場で遊んでいる子どもたちに、遼平は呼びかけた。


「ユウ、帰るぞ」

「嫌、まだ遊ぶの」


 こっちが勇気やったんか。やっぱり見分けがつかん。


「遊ぶって、ママ帰っているかもしれんぞ」

「いいの、リョウ君とまだ遊ぶの」

「じゃあ、リョウ君のお家で遊ぶ?」

 

 リョウ君ママが言った。

「うん、リョウ君のお家で遊ぶ、わーい、わーい」


 リョウも勇気につられやりだした。


「わーい、わーい」


 それでなくとも注目を浴びている二人なのに。母親同士の会話がピタリと止み、二人に視線を送り、次は遼平、リョウ君ママを見詰めているのを感じた。


「ねえ、パパ、いいでしょ?」

「ともかく手を洗って来なさい」

「はーい、リョウ君、手を洗いに行こう」

 

 幼稚園のカバンからタオルハンカチを取り出した。


「あれ、ユウ、お弁当食べへんかったのか」


 今朝、コンビニで買ったお握り弁当が手付かずのまま入っていた。

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