第9話 味噌汁

 ミカのやつ珍しい、朝から味噌汁のいい匂いさせて。

 味噌汁? 

 遼平が目を開けると、そこは自宅ではなかった。

 白いソファーにタオルケットをかけてもらって寝てしまったらしい。


「あっ、起きられました? すぐに朝ご飯にしますね」

 

 勇気とリョウはスッポンポンで、バスタオルで躰を拭いてもらっていた。


「夕べ、シャワーも浴びずに寝ちゃったから」


 二人の裸の子どものうち、どちらが勇気かわからなかった。

 リョウ君ママの用意してくれた服に着替えて、髪の毛をドライヤーで乾かしてもらった勇気が、


「パパもお泊まりしちゃったんだね。ママ、心配してないかな」

「ママか、そうやな」


 落ち着いた口調で言ったが、まずい、非常にまずい。何て言う?

 ビール飲んで寝てしまって、泊めてもらった。正直に言うしかない。

 スマホに着信歴はなかった。


「シャワー浴びられます?」

「いや、もう帰ります。勇気の着ている服は今度お返しします」

「あら、そんないいんですよ。じゃあ朝食だけでもあがってらしてください」


  食卓の上には焼き鮭、卵焼き、ほうれん草のお浸しが用意されている。


「父親がいないものですから、リョウが喜んでいるんです」


 子どもたちが遼平に向かってニッコリと微笑んだ。

 もう、どのみち早く帰ろうが、遅く帰ろうが同じことだ。


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