第7話 ママにはナイショ

 たこ焼きの発泡スチロールの容器を持って通りかかったおばさんが、子どもたちを見て、


「双子やねえ、そっくりやわ、一卵性かい」

 

 と、こちらの返事も聞かずに去って行った。


「やっぱり、似ているんですね。この間幼稚園に迎えに行って、どっちがどっちかわからへんで、親でさえこれなんやから、他人ならなおさらですよね」

「本当」

 

 そう言うとリョウ君ママはクスリと笑った。


「パパ、遊びに行って来ていい?」

「ああ、ここの場所をよく覚えておくんやぞ」


 二人は手を繋ぎ遊具施設の方にかけ出して行った。

 その後ろ姿も双子そのものだった。 

 ただ、リョウの方が大人しい分、少し大人びえて見えた。と言ったところで、まだ5歳の子どもだった。

 

 ビールをいじましく6本とも全部開けた頃に、勇気たちも戻って来て帰り支度を始めた。

 

 荷物を担いでゲートに向かって歩いていると、勇気が近付いて来て言った。


「今日のことはママにはナイショね。リョウ君ママの話すると機嫌悪くなるんだ」

「なんや、そりゃ」


 リョウ君ママに車のキーを渡した。


「よろしくお願いします」

「はい、お任せください」

 

 助手席に身を沈めると、そこから先は記憶がなかった。

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