【03】
楓さんが持ってきた人形は、青い服を着たフランス人形だった。
中世の貴族が着ているような、ふりふりした衣装と金色の髪、青い目が特徴的な人形だ。
その人形が、テーブルの上に置かれる。
人形をよく見てみると、周りに白い霧のようなものが微かに視えた。
高木はその人形を凝視して、しばらくした後、口を開いた。
「微かに霊気が感じられますね」
この白い霧のことを言っているのだろうか。
「ですが、これだけでは本当に動いていたのか判断がつきませんね。やはり直接動いている所を見てみないことには。人形が動き出すのは何時ごろですか?」
「深夜の2時頃です」
「その時間まで我々がお邪魔するっていうのは可能ですかね?」
「え?えぇ、構いませんよ」
「あの……」
和也さんが割って入った。
「もしお祓いをするときに、人形を燃やしたり壊したりすることはありますか……?」
「いえ、ありません。霊感がない方にどうやってお祓いをするのかは説明しづらいですが、人形を傷つけることはないので安心してください」
「そうですか、よかった」
説明が終わった後、斎藤夫妻が席を外している時に、高木は携帯電話を取り出すと俺に話しかけてきた。
「ちょっと電話してくる」
「いいけど、誰に?」
「東雲さん。一応これから仕事するって連絡しておかないと。この前みたいになった時にやばいから」
「まじかよ。もしかしてやばいのか?あの人形……」
「心配すんなよ。この前みたいなヘマはしない」
そう言って高木は玄関を出て外へと出て行った。
入れ違いで和也さんが席に戻ってくる。
「あれ、もう一人の方は?」
「上司に連絡があるみたいで、外へ出ていきました」
「そうですか」
人形が動く時間までしばらくあるので、俺はあの人形についてもう少し話を聞いてみることにした。
「この人形はいつ購入したんですか?」
「娘が5歳の誕生日に買ったから、もう6年も前ですね」
「そうですか。購入してから今回のようなことは一度もなかったんですか?」
「いえ、ありませんでした。娘はこの人形がとても大好きで、毎日のように遊んでいたんですよ。……実は、この人形は私の前の妻、娘の生みの母が選んであげた人形なんです」
「失礼ですが前の妻というのは?」
「娘が6歳の時、病気で亡くなってしまいまして。今の妻の楓は、その二年後に再婚した人なんですよ」
「なるほど」
「彼女は身体が弱くて、娘にもそれが遺伝してしまったのかもしれません。ですから、この人形は娘の遺品であると同時に、前の妻の遺品でもあるんです」
「それは大切にしたくもなりますね」
「そうでしょう?今の奥さんはちょっと嫌がっていますけどね」
笑いながら彼はそう言った。
まぁ確かに、楓さんからしたら、前の奥さんに気持ちが残っているというのは少しもやもやしたりもするのだろう。
その後も、俺は和也さんと取り留めのない世間話をしていた。
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