第188話 あけまして新年、明かされた事実と謎 その2


「なら、ウチらもイチャイチャするアヤ?」


「えっ……そういうのはちょっと」


 最近は女の子同士とか多様性とか聞くけど私は星明が好きだし女同士でそういうのは……遊んだり普通なのは良いんだけどね。


「いや、そこはマジで返すな、元旦なんだしウチらも浮かれよっ!!」


「それは賛成!! てかカラオケ行くんでしょ?」


 最終的にタマだけじゃなくて咲夜にも抱き着かれてわちゃわちゃになった。その咲夜の言葉で思い出したけど今日は新年カラオケの予定だった。


「うん、何か星明から聞いたけど瑞景さんが予約してるって」


「じゃ後ろにも声かけますか、ミカ兄ぃ~」


 後ろの三人をタマが呼ぶと星明たちが来て私達は程々に混んでいる近所の神社にやって来た。


 そこで私達はパートナー同士になって初詣をした。星明に二礼二拍手一礼とか言われたけど分からないからテキトーにやったけど大丈夫だと思う。


「ま、細かいこと気にするのもな……」


「そうよ、葦原は細か過ぎよ」


 私達の後からお参りした咲夜と聡思さんが言うと星明は少し困惑してたけど最後に初詣を終えたタマと瑞景さんも堅苦し過ぎるのも考え物だと言われて納得してた。


「そうだろうか……まあ皆が言うのなら」


「そうだよ~!! それよりカ・ラ・オ・ケ!! 行こ!!」


「そうだね、俺は今回も綺姫の歌う姿を見れれば」


 こんな感じで星明とは既に何回かカラオケに行ってるけどイマイチ楽しめて無い。本人は私が楽しければ楽しいと言ってるけど私は嫌だ。


「ノンノン、今日は星明も歌うよ!! アタシとデュエット!!」


「だけど俺、そういうのは苦手で……」


 裏のバイトの時も断ってたみたいで星明は宴会とか飲み会に慣れていても本人いわく若者のノリが苦手らしい。ジローさんとかのヤクザ屋さんの集まりでも意外とカラオケは無かったそうだ。


「だろうなセイメーはジローの奴に酒飲まされてばっかだったからな~」


「付き合わされて大変そうだった」


 だから不意に後ろからの聞き覚えの有る声に驚いた。慌てて振り返ると八岐金融の四門さんと吾郎さんがいて困惑した。


「四門さん、それに吾郎さんも……今日はどうしたんですか?」


「ああ、今日、用が有んのはお前らじゃねえよ、そうだろ?」


 用が有るのは意外な人物で瑞景さんだった。隣のタマも驚いて少し警戒している。四門さん達にタマと咲夜は会うのは初めてだし隣の吾郎さんは大柄で厳ついから怖がるのも分かる。アタシも気絶させられたし。


「何もこんな日に来なくても」


「いやいや急いだ方が良いと思ってよ……」


「分かりました、では向こうで……」


 そう言って二人を誘導しようとする瑞景さんだったが四門さんはまたしても待ったをかけた。


「いんやセイメー達が居た方が面白い事になる」


「どういう意味ですか?」


「お前らの記憶の関係って言ったら分かるか?」


 その言葉を聞いて俺と綺姫そして瑞景さんだけは反応していた。反対に残りの三人はポカンとしている。この話題な場所だけは変えようとなって予約していたカラオケボックスへ向かう事になった。



――――星明視点


「出来れば関係無い人間は巻き込みたくないんだが……」


「まあ、気持ちは分かるが取りあえず依頼のブツだ」


 二人が話す中で俺は改めて今日の会場のカラオケルームを見て思った。元々が六人で予約していた広めの部屋だから八人になっても狭く感じないが救いだ。そして四門さんは本題と言って封筒を瑞景さんに渡していた。


「……これはっ!? では島の重要人物と過去に?」


「ああ、その女が何者かは調べなかったが見覚えは有る、ジローのシマを荒らしてたガキ共だな?」


 見て良いかと瑞景さんに尋ねて見せてもらった資料は須佐井 照陽の物で驚いた。今さら関わって来るとは思わなかったからだ。そして彼女の現在状況という項目で更に驚かされた。


「い、生きてる……んですか!?」


「ああ、そこからか……その女は”島”と呼ばれる場所へ送られた、船を乗り継いで日本海の洋上に存在しないはずの場所に連れて行かれたそうだ」


 俺と綺姫もだがショックを受けていたのは聡思さんと浅間だった。だが問題は他にも有った。意味不明な文字の羅列が多過ぎたのだ。


「この対象者Yという人物は?」


「分かんねえ、だが調べてた奴は行方不明だ……」


 四門さんの話では雇った凄腕の探偵は数日前に、この報告書を送ったのを最後に所在不明となった。


「だから、これ以上は千堂内部にいるお前が調べた方が確実だ。俺らは無理だって話をしに来た……悪い、手を引く」


「でも四門さん、これが俺と綺姫の記憶の関係じゃ無いですよね?」


「ああ、それは調査中の別件の副産物だ、この探偵ってのが実は天原の嬢ちゃんの親の昔の仕事仲間でな、何かこんなのが部屋に有ったんだ」


 それは地図だった。しかも珍しく綺姫の両親のキチンとした署名と捺印のされた書面だから余計に気になった。


「間違いない、父さんの字だ……」


「じゃあよ、すっかり水差したみたいだが明けましておめでとう、じゃあな、行くぞ吾郎」


「ああ、兄貴……セイメーそれと天原と他の四人も……あけおめ」


 そう言って四門さん達は部屋を出て行った。照陽の生存や綺姫の両親の話など色々と新たな事実も判明したが、それ以上に残された謎は余りにも多く重い話だった。だが俺達にはそれより気になった事が有った。


「ゴローさん、あけおめ派なんだ……」


「俺も同じこと思ったよ綺姫」


 二人が出て行くと一瞬の沈黙の後に俺達が言った言葉は四人に大ウケして少しの間だけシリアスな空気は止まった。だけど、それも長くは続かず意を決したような表情をして海上が俺達に言った。


「じゃあ、そろそろウチらにも全部話してよ、二人の本当の関係をね」

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