第182話 絡み合う陰謀 その2
振り返ると正に相談しようとしていた監視兼護衛役の人がいた。だが普段の信矢さんにしては珍しく険しい表情をしているのが気になった。
「今のも千堂グループの関係者ですか?」
「違うかな、でも厄介な連中だとは思うよ」
(もう民主派が嗅ぎつけたか……想定外だ)
何か含みの有る答えだったが正体は不明らしい。ただ明らかに怪しいし千堂グループも一枚岩で無いから油断できないから用心しろと俺達に言った。
「とにかく変な人を見たらすぐ連絡します」
「それが正解だ綺姫ちゃん、とにかく中に、マンションまでは入って来ないはずだ」
そのまま俺達は信矢さんに部屋の前まで送ってもらって、その日は終わったが不穏な動きはそれから何日も続いた。
謎のローブ姿の連中は、それからも更に不可解な行動をした。最初は監視していただけだったが何人か俺たちを拝んだり、お辞儀したりして来たのだ。
「という話でして……」
「かなり怖くて気持ち悪いです」
それから更に一週間後、クリスマス会の委員の仕事の時に俺と綺姫は工藤先生に一連の件を相談していた。
「分かった、じゃあ帰りは俺が護衛に付くか?」
「今は実害も無いので大丈夫ですが……これ以上増えた場合は……」
「先生、あの人達って何なんですか? いつも、こっち見たりボソボソ話したりしてて気味が悪いです」
しかも最初の遭遇以降、茶色だけでは無く赤いローブの者らも現れ二チーム以上で監視しているのも確認されていた。先生も報告は受けていると話した上で既に千堂側でも対応していると報告を受けているそうだ。
「やはりグループ内の問題ですか?」
「そんな所だ、ただ俺はエージェントとは言っても会長直属でな、その辺りの勢力争いに詳しいのは信矢だから聞いてみるといい」
だが結果的に聞く前に事件は終わってしまった。その翌日から謎のローブの集団は現れなくなったのだ。どうやら千堂グループ内での内部処理は終わったみたいだ。
◆
――――信矢視点
二人と一緒に怪しい人物らを目撃してから五日目に奴らは動いた。いかにもな路地裏で行動を起こそうとしていた二人組を見て僕はすぐに対象を鎮圧した。
「バカな……たかが一般人が、ひっ!?」
「あまり、この世界を舐めるなよ?」
僕は茶色ローブ姿の怪しい連中、おそらく王国の民主派の男の頭に銃口を突き付け言った。彼らでも銃の知識くらいは有るらしい。
「くっ、しかし、何で我らに対抗が……」
「千堂グループ第二情報室を甘く見るな。君らへの対抗策は全てシミュレート済みでね、これでも仁人先輩の直属なんだ」
「マサヒト、まさか千堂の!?」
僕の所属は幾つか有る。千堂グループの王国支部支社長で七海先輩の直属……だったけど先々月に解任された。だけど他にも役職は有る。その中でも千堂グループ第二研究室付き情報室副課長、通称『第二情報室』所属が僕の本命だ。
「君達は千堂の逆鱗に触れようとしている」
「……わ、分かった。同士達にも引き上げるように伝える。我らの目的は争いでは無く、あの方に立って頂く事だ!!」
「やはり狙いはそれか、彼にも迷惑をかけてくれるな。本国との板挟みなのに」
そして彼らの狙いも察しが付いたから釘を刺す。ただ気になるのはコイツらの情報源で星明くん達が彼のアキレス腱だと広まるのが早過ぎる。少なくとも民主派程度には今の時点で情報は伝わらないはずだった。
「だが!! 我らは!! あの方が立ち上がれば喜んで従う!!」
「彼にその意志は無い。何度も断られているだろ」
「だが現国王より我らの救世主で元ゆっ――――「その言葉を言ってはいけない、頭の風通しを良くしたいのなら話は別だが?」
そう言って銃の安全装置をカチリと鳴らす。意味は分かって無さそうだが音だけで目を見開いているから警告としては十分だろう。
「っ……分かった……」
「強制送還されないだけ温情だと思って欲しい後は自分の足で帰れ。そして二度と二人に接触しようと考えるな!!」
僕の言葉を正しく理解した二人は再度、他の同士にも伝えると言って立ち去った。次もし見かけたら処分しなきゃいけなくなるから僕としても困る。
「二人の情報がこんなに早く知れ渡っているのは何でだ?」
まさか民主派以外の敵が存在しているのか? などと思案すると、つい独り言をしてしまうのは悪い癖だ。子供達もマネするからと狭霧に注意される事もある。とにかく一度、七海先輩や工藤先生にも報告しよう。
「やれやれ、久しぶりの日本だと思ってたのにな……」
サラリーマンは辛いと思いながら僕は路地裏を出た。そして島の彼とも連絡を取るべきだと考え動き出した。
◆
――――綺姫視点
「何か今回はアッサリだったね委員の仕事」
「今回は業者が入ってるから姫星祭とは事情が違うんだと思う」
星明に聞いた話では今回のこれは海外のプロムというパーティーの真似事らしい。そして今は明日に迫ったクリスマス会の最終打ち合わせ中だった。
「要は気合の入った学校側主催のクリスマスパーティーって事さ」
「アタシ、ちゃんとしたクリパって初めて!!」
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