第162話 一触即発、大爆発? その2
「今は星明くんを安全な場所に、頼みますよ元運び屋さん?」
「ええ、お任せ下さい。綺姫はやく御曹司を乗せて」
信矢さんが母さんに言うと私は真っ先に車に乗り込んで後ろの席を倒して星明の場所を確保する。
「分かってる!! 後ろの席倒すから!!」
そのまま私は奥の席を倒して信矢さんが星明を寝かせると隣は譲らず二人には前の席に座ってもらった。
「では出しますよ支社長、構いませんか?」
父さんの言葉に信矢さんが頷くと車は出発した。目的地はどこなのか? 父さんと信矢さん達の関係それに他にも聞きたい事はたくさん有るけど今は私の膝の上で寝息を立ててる星明が心配だった。
◆
――――星明視点
どこからか声が聞こえる。何か言い争いのような声だが頭にガンガン響いて俺は目を開いた。ゆっくりと焦点が合って光が戻ると天井が見えた。
「白い……あれ?」
俺は目覚める直前までの記憶を呼び起こそうと必死だった。たしか俺はと考えながら思い出す。体育館で後夜祭が有って俺は頭痛で……それから何があった?
「星明!? 星明!! 起きた!? 起きたああああああ!!」
「うっ、綺姫……頭に響く、痛いから、離してぇ」
見ると寝たままの俺の首元に綺姫が抱き着いて泣いていた。これは一体どういう事態なんだと思うとガチャとドアの開く音がする。確認しようと首だけ動かすと意外な人物がいた。
「父……さん?」
「……お前は倒れた。そして私の病院に運び込まれた、それだけだ」
その言葉を聞いて俺は思い出す。確か頭痛で苦しむ俺に春日井さんが何かの薬を無理やり飲ませた……そして気絶した。
「そうだ!? 俺は無理やり薬を!? 奴はどこだ!?」
「星明、違うの!! 落ち着いて~!!」
「でも俺はっ――――「落ち着けバカ者!! 彼はお前をここまで運び適切な処置までしてくれたのだ感謝しろ!! そもそも当家にとって春日井くんは恩人で……」
綺姫と父の言葉で俺は思考がストップする。綺姫は感情的になると冷静じゃないが父は別だ。俺に対しては冷徹で厳格だからこそ逆に信用はできる。
「は? どういう意味ですか?」
「まずは事情の説明をする入れ静葉!!」
父がいつものように怒鳴ると苦笑した静葉さんが入室した。ドアが開くと廊下では医師や看護師の話し声が聞こえ改めて、ここが父の病院なのだと理解した。
「はいはい、あなたも静かにお願いします。星明くんの体調を見たいから……綺姫ちゃんも良いわね?」
その静葉さんの言葉に抱き着いていた綺姫が気が付いて慌てて離れると俺にとって予想外な言葉が返って来た。
「あっ!? ごめんなさい……三日ぶりだから、つい」
「え? 三日? そうだ、今は!?」
病室らしき部屋には時計は有るがアナログで午前か午後か分からない。そういえばカーテンのかかった窓からは薄明るい光が差し込んでいた。
「小娘、少し外に出ていろ、今は過度な情報はパニックに繋がる」
「あっ、その……ごめん、なさい……」
至極もっともな言葉だが感情は追い付かない。俺の綺姫を悲しませる者は相手が父であっても俺は引く事は絶対にしない。
「父さん!! 綺姫、大丈夫だから……気にしないで」
「黙れ星明!! 貴様はっ――――「はいはい、あなた落ち着いて一緒になって騒いだら目も当てられないわ、ね?」
静葉さんの取り成しでも父は怒鳴り散らして落ち着かない様子だったがノックの音がするとイライラして返事をしていたが表情が変わった。
『院長、例の方からご連絡が……』
「なっ!? 春日井さんか?」
ドア越しに「はい」と答える女性の声に父は「到着次第お通ししろ」とだけ言って下がらせた。この病室には家族と関係者しか入れる気は無いようだ。
「まさか監視は無いでしょうけど……さすが
「恐らくな、例の天才が作ったのなら納得だ……それより診察を始める」
何やら気になる事を言っているが静葉さんと父に診察され異常無しと診断結果が出た。しかも静葉さんに体を触られても異常が無い俺を見て父は満足気な様子で俺としては複雑だ。
◆
「どうやら、やっと普通の人間に戻ったな星明……」
「ええ、綺姫のお陰でね!!」
診断が終わった父の第一声に対して俺は言い切った。綺姫と静葉さんが不安そうだが構わない今日こそ言いたい事を言ってやろうと思った時に頭の中で何かが引っかかった。
「悔しいが、その通りらしい……静葉が裏で色々していたようだが泳がせて正解だったようだな」
そう言って綺姫を睨み付ける父を睨んだ拍子に思い出す。そうだ俺が倒れたのは父の過去の因縁を春日井さんから聞こうとした時で、その中で彼は言った俺の実の母や綺姫の過去に関係すると確かに言ったんだ。
「あなた、気付いてたんですか……」
「当然だ。都合良く家に居ない時を作ったのも全てはこのためだ」
静葉さんも注意は払っていたのだろうが父を侮り過ぎていたらしい。確かに父は私生活の全てを静葉さんに任せているが、それは決して放置していた訳じゃない。本質的に人を信用してない人だから抜かりは無いはずだ。
「でしょうね、そして俺を治したかったのは今はオペすら出来ない自分の代わりをさせたいから……そんな所でしょう?」
「なっ……なぜ、それをっ!?」
「星明くん、どこでその話を!?」
父と静葉さんの悲鳴が響く中で少し大きめなノックの音、そしてドアの向こうから声が聞こえた。
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