第160話 三日目の真実と対面 その2
◆
――――星明視点
あの後も俺達はひたすら働いた。クラスの模擬店は任せてしまったが実行委員長と副委員長として俺と綺姫は最後まで頑張った。来賓への挨拶に記念撮影それに一般生徒のフォローや案内とサインと記念撮影などだ。
「なんか記念撮影、多くない?」
「それは言わない約束だ綺姫……」
今回の文化祭いや姫星祭は過去最大で去年とは比較にならない規模なものだったらしい。そんなのを未経験の、それも不慣れな人間に指揮を執らすなと言いたいが我慢しする。これも俺と綺姫の平穏な学校生活のためだ。
「以上を、閉幕の言葉として……姫星祭の締めくくりの言葉とさせていただきます。皆さん本当にお疲れ様でした」
最後に体育館で俺の閉幕の言葉で終了し残りは後夜祭だけとなった。そう。まだ後夜祭なるものが有る。俺は去年まで即帰宅だったから忘れていたが面倒なことは残っていた。つまり姫星祭の三日目はまだ終わらない。
しかも今回の後夜祭は無駄に豪華らしい。挨拶が多かったのは来賓が例年の倍以上いたからで今回の姫星祭の運営も含めた様々な多額の寄付が有ったらしい。
「それにも悪意を感じるよ」
「
「綺姫、食べながら喋らないでソースが制服に付くよ」
「んっ、ごくっ……だって~、お昼食べ損ねたんだもん」
そして束の間の休息を俺は綺姫と二人でとっていた。二人で食べているのは残った材料と有り合わせで作った綺姫特製ヤキソバだ。教室には二人きりソースの匂いと少しキツ目の夕日が差し込んで俺たちを照らしている。
「それは分かるけど……俺も昼は食えてないからな」
「そうだよ後夜祭まであと30分!! ほら、星明、あ~ん」
「うん、あ~ん……美味しいよ」
なんとか英気を養うと最後だと思って俺と綺姫は立ち上がる。そして誰も居ないのを改めて確認し綺姫とキスをした。夕焼けが眩しくて二人共オレンジに染まっていたから俺は密かに安堵していた。ただ廊下に出たら二人して顔は真っ赤だった。
◆
「よ~し!! じゃあ後夜祭も張り切っていこ~!!」
綺姫の号令で後夜祭は始まった。姫星祭の本筋とは違い完全に学内と関係者のみだけで行われるから、ゆる~く始まった。場所は体育館で行われ内容がステージでの発表や有志によるダンスや漫才などだ。
「ふぅ、これで完了だな」
「そうだね、星明」
そして後夜祭は来年のためにと二年が中心で行われ俺たち三年はノータッチとなっていた。最初の挨拶だけで後は自由行動だ。
「だと思っていたんですが……何で居るんですか?」
「まあ、良いじゃないか気にしないでくれ」
学生でも無いのに普通に目の前にいる春日井さんを俺は見た。さすがに子供達は居ないが奥さんの狭霧さんは綺姫と話している。どうやら分断されたな。
「はぁ、でも俺も聞きたいこと有ったんで瑞景さんから聞いた話とか」
「……いいよ、答えよう」
「話によると海外の千堂グループ支社の支社長で、しかも英雄だとか……あと俺の知り合いも全員倒して大活躍らしいですね?」
俺が瑞景さんに聞いた話は大きく分けて二つ。一つ目は例の動乱の具体的な中身の話、事件の詳細な内部関係と裏の人間関係だ。
「君の知り合い? 済まないが僕の方でそこまで調べていないんだ。大事なのは君と天原さんだからね」
狙いが俺と綺姫、本当に他には眼中に無いらしい。だけど聞かなくてはいけない。だから俺は尋ねた。
「八岐金融、知ってますか?」
「名前だけなら……それが? ごめん、質問の意図が分からないよ」
「ではストレートに聞きます、八岐二郎、四門さんの二人を覚えてますか?」
そう言った瞬間、少し考え込んだ後に顔を上げて俺を見た。
◆
「ああ、そうか
「そう、ですか……」
俺が瑞景さんに聞いた話では四門さんを再起不能に追い込んで失職させたのは竹之内先生では無く本当はこの人だった。表向きは法曹関係の彼女に任せていただけだった。そして更に過去のS市動乱においてジローさんは当時高校生の目の前の人に手も足も出ずにボロ負けして敗走したらしい。
「そうか、君がお世話になった相手か……でも僕の狭霧に手を出した以上ただでは返せなかったからね? 謝る気は微塵も無いよ、他に何か有るかい?」
「い、いえ……そっ、それは別に」
目付きが変わって恐いという感情しか起らなかった。明らかな逆鱗に触れたと見て間違いない。瑞景さんに聞いた話は本当だった。動乱時に誘拐された幼馴染を助けるためヤクザに真向から立ち向かった高校生……それが彼だ。
「聞きたいのはそれだけかな? なら僕の話も――――」
「いえ……その、もう一つ父のことを……」
「君のお父さん葦原建央さんの話? 悪いが親子の君より詳しくは――――」
「あの人が、父が例の動乱後にトラウマでオペはおろかメスすら握れなくなっているという話は本当……なんですか?」
瑞景さんに聞いた二つ目の話、それは父が俺に虐待を加える直前の乱心した原因の話だ。その詳しい事情は千堂七海総裁の高校時代からの後輩で海外支社すら任されている千堂グループの中枢の人間なら知っているという話だった。
「そこまで話したか……困ったね瑞景くんにも」
その言葉だけで真実なのだと理解した。
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