第159話 三日目の真実と対面 その1
◆
「今日は頼むぞ、お前ら主役なんだから、な?」
「「は~い」」
朝も早くから俺と綺姫は呼び出しを受け職員室で説教を受けていた。理由は単純で昨日のステージでの審査員や出し物など全て忘れてすっぽかしてしまったからだ。
「迂闊だった……昨日の瑞景さんの話やら詩月さんとかレナさんのせいで」
「それに春日井さん達もだよぉ……子供たち可愛かったけど」
何より意味深なことを言って立ち去った春日井さん一家だ。一応は例のメイドでお世話になったモニカさんの知人らしいが胡散臭い。そもそも本人が来てないし連絡手段も無いから怪しい。
「あっ……」
「どしたの星明?」
職員室を出て廊下を歩いてる時に俺は思い出した。そして財布から一枚の名刺を取り出した。それは夏休みに渡されたモニカさんの名刺だった。
「もらったの忘れてた……これで連絡が付くじゃないか!?」
「も~、そんな大事なこと何で忘れてたの!?」
しかもSIGNの招待コード付きだ。これで本人に一発じゃないか。明らかに超VIPだったしホットラインのような物が有るのは大きい。
「名刺もらった後にも色々と有ってすっかり忘れてた……」
あの夏は本当に色々と有り過ぎた。皆との出会いにモニカさんやアルカ君それに父さんや静葉さんとの再会と何より綺姫と結ばれた夏だ。そんな風に回想していると綺姫も同じことを思ったのか隣で口を開いた。
「そうだね……星明も頑張ったもんね、最後はヘタれたけどさ」
「それは言わないでくれ、でも今は綺姫を手放すなんてバカな選択はしないからさ」
それだけ言うと二人で教室に戻り今日は朝からの屋外ステージメインでの活動になった。昨日やらなかった演劇コンテストやらイベントを今日一気に消化しなくてはいけなくなったからだ。
◆
――――綺姫視点
「は~い、では次は昨日の予選を勝ち抜いたカップル選手権の決勝大会です!! しかし、なんということでしょう!! 外部参加のカップルが二組で我が校のカップルは一組だけだああああああ!!」
取りあえずステージ上で小野っちがうるさい。最後の年だからと後輩たちの司会のポジションを半ば奪い取る形で昨日から全開だったと私は聞いていた。
「それで、何で……居るの? あの人たち」
「俺が知るか、本当に何なんだよ……」
「エントリーナンバー27番!! 夫婦でエントリーされた春日井ご夫婦です!! 結婚八年目のおしどり夫婦、付き合いは四歳の頃からの幼馴染カップルだ~!!」」
そうなんだ……あの二人って幼馴染カップルなんだ。待って結婚八年目なの? それで、あの大きさの子供がいるんだ。何歳で産んだのか参考に聞きたい。
「続いて異色中の異色!! 本名は伏せると言う条件で女性の同性カップルの入場だ!! カップルの二人はムーン&レナだあああああ!!」
「へ? 何で今日も来てんの!?」
「暇なのか? 社長と秘書って実は暇なのか!? 会社ピンチじゃないのか!?」
しかも、もう一組は詩月さんとレナさんで堂々と参加してた。最後は以前、私と星明の写真を撮りに来た一年生の二人だった。
「では第一次審査は……」
その後は一次審査の特技披露、二次審査の互いの十の質問など次々としていくが最終審査までの総合得点で勝利したのは春日井夫婦だ。その活躍ぶりは他の二組の追随を許さず圧倒的でしかもラブラブだった。
「夫婦か……いいなぁ……」
「そ、そうだね綺姫」
(でも得体の知れない相手なんだよなぁ……)
一次審査では暗記とバスケの連続スリーポイントシュートで前者が信矢さんで元素記号を逆から言っていくという技を披露し、狭霧さんは高校時代にバスケをしていたらしく四連続まで成功させステージを湧かせた。
「う~ん、やっぱり体が鈍ってるかも昔は五連続までは余裕だったのに~」
「去年は出来てたけどね?」
「シンは相変わらずキレッキレだね!!」
こんな感じで二人は息ピッタリで文句無しに優勝し姫星祭は次回から成人カップルはコンテスト出場禁止となってしまった。
「ママ~!! かっこいい~!!」
「父さんさすが!!」
そして客席では子供たち二人と見覚えの有る人達が一緒に座っていた。昨日の帰りに聡思さんに聞いて驚かされたけど何と二人は空見澤市の出身で以前、祭で知り合った秋津さん夫妻らの知り合いだった。
「相変わらずのバカップル振りだ」
「そうね、あんたもそう思わない霧華?」
二次審査の互いの事を答える時にもパーフェクトだったのは春日井夫妻だけで驚かされた。そして子供達を見ていた大人は三人いて秋津夫妻と意外な人物が今日は来ていた。それは以前お世話になった弁護士の竹之内先生だった。
「よく知ってます……そもそも、あれって幼稚園の頃からなんで」
「霧華叔母ちゃんも幼稚園の時あったの~?」
「有ったに決まってんでしょ霧也、それとおばちゃん言うな」
なんと竹之内先生は信歩ちゃんと霧也くん達の叔母、つまり今ステージに立って信矢さんにキスしてる狭霧さんの実の妹だった。言われてみれば二人とも金髪だし顔もソックリだ。
「おめでと~ございま~す」
「ありがと綺姫ちゃん、葦原くんも!!」
トロフィーを受け取りながら笑顔な狭霧さんを見て星明は口元にだけ笑みを浮かべ目は何かを観察しているようで警戒を解いてない。たしかに美人で危険だけど悪い人じゃないし何より旦那さん一筋だから私は安全判定を出していた。
「と、いうわけで優勝者は春日井夫婦でした~!!」
最後に小野っちの言葉で大好評のうちにコンテストは閉幕した。
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