第154話 文化祭狂騒曲の表と裏 その1
◆
――――綺姫視点
二日目の始まりは星明と二人での各視察や昨日まで設営中だった野外ライブステージの確認だった。ここで今日は二人で色々するから確認に来ていた。
「綺姫、大丈夫だと思うけど余計なこと言わないでね?」
「は~い、反省してま~す」
「言いたく無いけど、校内で俺達の関係はバレバレでも学外の人は知らないんだし、そもそも行為の中身は秘め事だし……言わないこと」
こんな感じで星明は昨日から少しお怒りだった。私だって先生とか男子には言って無いし考えてる。ただ女子の友達の前だと少しだけ大人ぶりたいお年頃なのです。何より星明のテクニックも自慢したい!!
(なんて言ったら、また怒りそうだし家だけにしよっと……)
「すいませ~ん、ちょっと良いですか?」
そんな時だった。どことなく間延びした女性の声で私と星明は振り返った。そして絶句いや、凄過ぎて茫然とした。振り返った先にとんでも無い美人がいた。
「きっ、金髪美人だああああああ!!」
「綺姫!! 静かに!! す、すいません……それで何か御用ですか?」
「君達ポスターの子よね?」
そう言って姫星祭のパンフを見せられると表紙には私たち二人が載っていた。この写真って、これにも使われてたんだ。
「はぁ、そうですが……」
「そっかそっか、ちょっと待ってね、シ~ン!! いたよ~!!」
今度は目の前の金髪美人さんが叫んだ。すると両脇に金髪と黒髪の子供を抱え背中には赤ちゃんを背負ったメガネの男性が全力疾走して来た。
「はぁ、はぁ……さ、ぎり……大声を出さないで……あと置いて行かないでね」
「ごめんごめん、早く会いたかったから~」
ぜぇぜぇ息を吐いてる男の人は黒髪で日本人……いや、普通に金髪さんも日本語を話してるし日本人かな?
「ママ、また勝手にどっか行った~」
「母さんの迷子……はぁ」
両脇の金髪の男の子と茶に近い髪の長い女の子は下ろされながら文句を言ってる。待って、ママと母さんってこの人子持ちなの!? 何歳なんだろう。
「ごめんごめん、
「でも一番、大人しいのは
メガネの男性が負ぶっている赤ちゃんを見て笑顔で褒めている。今の騒ぎでも泣き出さないのは凄いかも……なんて思っていたら女の子、たぶん信歩ちゃんが口を開いていた。
「父さん、それ寝てるだけじゃ?」
「そうだな信歩の言う通り……でも良く寝れてエライ」
「パパ何でも褒めるから……」
男の子の方の霧也くんも少し呆れたトーンで話していた。どうやら目の前の五人は家族らしい。たぶん在校生の関係者だろうけど仲良さそうで羨ましい。
「あ、あの……俺と綺姫にご用件……ですか?」
「ああ、君が葦原くんだね、こんな状態で失礼するよ、僕はこういう者だ」
自分の娘を背負いながら名刺を渡して来た男性の名刺には株式会社秋山コンサルタント係長、春日井信矢と書いてあった。
◆
――――星明視点
「その、俺達の噂などをお聞きなら……」
「実は僕の会社の関連企業の視察でね、その会社はこの高校に出資してるんだ」
「は、はぁ……」
なんか怪しいな。何で俺達に話を聞きに来たのかも上手くはぐらかされたし先生を呼ぶべきだろう。
「あ、あの……」
「実は視察もだけど僕はこの学院の姉妹校の出身なんだ、そして理事の人から君らの様子を見て来て欲しいと頼まれたんだ葦原星明くん、それに天原綺姫さん」
「涼月総合学院って言うんだけど聞いたことな~い?」
奥さんの……名前は聞いてないから春日井夫人も二人揃って、そこの卒業生らしい。そういえば推薦枠の大学で涼月総合大学っていうのが有った気がする。
「あっ、そういえば……涼学でしたか」
「そう、そこの理事の、とある女性から頼まれてね?」
「それってモニカさんですか!?」
綺姫が反応してしまった。こちらから言うべきでは無いのだがポロっと口から漏らしていた。やはり昨日から綺姫の口が軽すぎるのは危険だと思うが、そんな俺に構わず春日井さんは話を進めて行く。
「僕も彼女らとは縁が有ってね、君らの様子見も頼まれたんだ」
「そうだったんですか!! じゃあアタシ達のクラス来ませんか?」
「それは助かるよ僕も狭霧も長旅で疲れててね……」
綺姫が案内するまま五人を連れて教室に戻る俺達だが明らかにマズい。なんか目の前の春日井さんは瑞景さんに雰囲気が似ていた。つまり控え目に言って何か裏が有るし怪しい。
「そうなんですか~!! 何県からですか?」
「実は国外でね」
「わぁ~!! 外国!! じゃあ奥さんのご実家ですか?」
「えっと私って故郷は日本なんだ、アメリカと日本のハーフなの」
なるほど金髪碧眼を地で行く美女は、やはりハーフか。日本人としては有り得ない容姿だが日本語は流暢で子供三人の特徴を見れば納得はできる。しかし怪しさは変わらない。何より俺には最大の違和感が存在していた。
「どうかしたのかい葦原くん?」
「い、いえ……その別に」
「もしかして、体の調子が良すぎるのかな?」
春日井さんの声に俺は頷きそうになる。そうだ、だって目の前の春日井夫人に俺の体は欠片も反応してなかったからだ。
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